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フツーの仕事がしたい

そういえば、去年ポレポレで観て、かなり衝撃だったのに感想書かなかった映画を思い出しました。うわーごめんなさい!そしてRaindance Film Festivalでベスト・ドキュメンタリー賞受賞おめでとうございます。いまさらですが、機会があればみなさまぜひご覧ください。

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フツーの仕事がしたい』監督:土屋トカチ

セメントを運ぶトラックの運転手をしている皆倉信和さん。最長で月に552時間も働いていた。でもそれがフツーなのかなと黙々と働きつづけてきた皆倉さんだったが、会社の赤字を理由に一方的に賃金を下げられてしまう。心身ともに限界を感じて労働組合に助けを求めるが、その日から会社ぐるみの組合脱退工作が始まった…


もうね、言葉もないです。じつを言うと私が長年属している某業界も、外から見れば華やかに感じそうな雰囲気を漂わせてるんですが、大手は別として、小さい会社では労基など守られているはずもなく、休みは少ないし残業は多いし、時給換算したらファストフードでバイトするほうがよっぽどよかったりして、正直サイテーだと思っていました(現に前の会社ではかなり会社に意見した)。が、一般的にはそれが「フツー」だと言われておりました。

でもね、そういう「フツー」は知らず知らずのうちにエスカレートするんですよね。そして当人の感覚も麻痺してくる。それが恐ろしいところです。

皆倉さんが言う「この業界では、フツーだと思っていた」「好きなことだから仕方がない」というのは、けっこういろいろな人が思い当たる感覚なんじゃないかと思う。

それにしても、月に552時間はありえない数字。1ヵ月31日として×24時間で744時間ですよ。744引く552は192時間。土日もふくめて1日6時間しかないんですよ、仕事してない時間が。ごはんも睡眠もそのほかの自分の時間もぜんぶその6時間におさめるのは不可能だ。

やつれ果てた皆倉さんは、ひとりでも加盟できる労働組合ユニオンを訪れて、結果として監督の土屋トカチさんがこのドキュメンタリーを撮ることになるのですが、同時に現代の日本でこんなことが?と思うような組合脱退工作との戦いがスタートすることに。

会社が雇ったとおぼしきヤクザまがいの人間に連日脅迫される、亡くなった皆倉さんのお母さんの葬儀にまで押しかける、挙げ句、皆倉さんは過労で病に倒れ入院…。明らかにフツーの仕事をしているという状況じゃないのでした。皆倉さん、この状況でよくがんばったなと思うし、彼を支えた組合の人もすごい。

フツーの仕事をしたいっていうのはそんなにまでして戦わないといけないほど理不尽な要求でしょうか? それ以上のワガママなんて言ってないんだよね。

皆倉さんの働いている会社は末端の下請けで、大元の企業の一般社員は自分たちの会社の下請けの過酷な状況についてはまったく知らないという感じだったのが、社会の縮図を見ているような気にさせられました。

知り合いの外国人(欧米系)にもかなり勧めて、何人か観に行ってくれたのですが、皆「驚愕した…信じられない」と絶句してました。そうだよね、私も驚愕した。欧米では人の権利について真剣に考える傾向があるから余計に衝撃だったんじゃないかと思う。東洋の国々ではどのように受け止められるのか興味があります。

真面目に長時間黙々と働くというのは別に美徳じゃないんだよね。働く人の最低の権利というのは守られてしかるべきだと痛切に感じさせられる映画です。こうした映画が制作されて本当によかった。

国内でもまだあちこちで上映されるようなので、公式ブログをご確認ください。予告編も観られます。
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Commented by ゆきたか at 2009-10-14 20:33 x
こんばんは。
便利な生活の裏で、文字通り身を粉にして働く人達がいるって事を再確認しました。見てみたいけど近くでやってないんですよねぇ…DVD化は無いみたいやし(;´Д`)
Commented by rivarisaia at 2009-10-15 00:19
>ゆきたかさん、
こんばんは。もともとは映画を撮るつもりではなくて、暴力沙汰になりそうだから、その証拠映像を残すために依頼されて撮り始めたらしいんですよね。葬式まで乗り込んでくるのってどういう神経してるんだろう。

いい映画だと思うので、受賞をきっかけに観られる機会が増えるといいですね。
Commented by 土屋トカチ at 2009-10-15 18:58 x
ポレポレ東中野でご覧いただいたのですね。
ありがとうございます。
そして、トラックバックもありがとうございます。
受賞を契機に、新たにお客さんとの出会いが広がることを
願っております。
DVD化は、いづれかのタイミングで考えておりますが
おそらく年内は上映会のみとなります。
ご了承ください。
Commented by rivarisaia at 2009-10-16 01:44
>土屋トカチ監督
コメントいただきまして、恐縮です。
こちらこそ、よい映画を観ることができました。ありがとうございます。もっとたくさんの方々に観てもらえるといいなと思っています。
日本だけでなく世界のあちこちで上映されますように。

受賞のニュースはとてもうれしいニュースでした!
by rivarisaia | 2009-10-14 18:59 | 映画/日本 | Comments(4)