ケルトミステリー:フィデルマシリーズはおもしろい!
2010年 05月 11日
短編集『修道女フィデルマの叡智』がおもしろかったので、長編はどうだろうかと手を出してみたところ、一度読み出したら止まらない。滅法おもしろいので、邦訳でてる分をまとめてドーンと紹介。
邦訳はシリーズ順に刊行されていないので、ここではシリーズ順にならべてみます。
原書の1作目と2作目はまだ邦訳が出ていません。
第3作目『幼き子らよ、我がもとへ』
次期国王である兄に呼ばれ、モアン王国内の修道院で起きた殺人事件の調査を依頼されるフィデルマ。殺されたのは隣国の高名な人物であるため、事件は二国間の戦争に発展しかねない状況にあった…
第4作目『蛇、もっとも禍し』
女子修道院の井戸で頭部のない女性の死体が見つかった。事件の調査に派遣されるフィデルマ。船で修道院に向かう一行は、途中、無人の帆船に遭遇するという奇怪な事態にも遭遇する…
第5作目『蜘蛛の巣』
アラグリンの谷で、その地を支配する族長と彼の姉が殺された。族長の妻の要請でフィデルマが現地に赴く。容疑者はすでにとらえられていたが、フィデルマは疑問を抱き…
以上、すべてピーター・トレメイン著、
甲斐萬里江訳、創元推理文庫
ミステリーの謎解き要素もとてもおもしろいのですが、キリスト教が広まっても、まだまだ古代ケルト文化が色濃く残っている7世紀アイルランドが舞台というのが、本当に読んでいて楽しいシリーズ。
作者のピーター・トレメイン氏がケルト学者なので、きちんとした知識に裏打ちされた設定がここまでおもしろく読ませるのだと思う。あとは翻訳者の甲斐萬里江さんのていねいでわかりやすくためになる訳注。特殊な用語もたくさん出てきますが、慣れます。なので、いちいち訳注にいかないで、全部読み終わってから訳注をまとめ読みしても楽しいという、二度おいしい本。
尼僧であると同時に、アンルー(上位弁護士・裁判官)の資格をもった法廷弁護士で、さらに次期王の妹君、ついでに美人で護身術も達者、という向かうところ敵なしのフィデルマは、相変わらず偉そうな面もありますが、それにもすっかり慣れました。フィデルマでも寝過ごしちゃったり、二度寝したいと思ったり、後悔したりするんだな、と妙に親近感さえ湧いた。
また、フィデルマよりも高圧的で傲慢で、おまけにフィデルマと違い思慮が浅い人物も多く登場するので、「フィデルマ、そこでガツンと言ってやれ!」という気分にもなろうというものです。
そして毎回思うのですが、当時のアイルランド教会(ケルト教会)とローマ教会の違いが非常に興味深い。フィデルマが活躍しているように、実際に当時のケルト教会は男女の地位に差がないし、障害者などへの差別に対しても罰則があるし、考え方がローマ教会よりも柔軟で先進的なんだよなー。ローマ教会ったらほんとに…(以下自粛)。
修道院が舞台になることも多いのですが、修道院と切っても切れない関係にある「図書館」も出てくるし、当然、重要な小道具として写本や木簡に書かれた昔の本が登場する。なんて楽しいんだ! ちなみに、当時のアイルランドでは、
そうです。一瞬中世のガードルブックの大きいバージョンみたいなものを想像したけど、ガードルブックは、専用鞄じゃなくて表紙が伸びてるのでちょっと違いますね(Wikipediaにも説明があります)。本がたくさん吊り下がってる図書館、見てみたい。
英語版だとすでに20冊近く出ているので、邦訳も続きが早く出ないかなーと待ち遠しい!
●フィデルマシリーズ
短編集『修道女フィデルマの叡智』
邦訳はシリーズ順に刊行されていないので、ここではシリーズ順にならべてみます。
原書の1作目と2作目はまだ邦訳が出ていません。
第3作目『幼き子らよ、我がもとへ』
次期国王である兄に呼ばれ、モアン王国内の修道院で起きた殺人事件の調査を依頼されるフィデルマ。殺されたのは隣国の高名な人物であるため、事件は二国間の戦争に発展しかねない状況にあった…
第4作目『蛇、もっとも禍し』
女子修道院の井戸で頭部のない女性の死体が見つかった。事件の調査に派遣されるフィデルマ。船で修道院に向かう一行は、途中、無人の帆船に遭遇するという奇怪な事態にも遭遇する…
第5作目『蜘蛛の巣』
アラグリンの谷で、その地を支配する族長と彼の姉が殺された。族長の妻の要請でフィデルマが現地に赴く。容疑者はすでにとらえられていたが、フィデルマは疑問を抱き…
以上、すべてピーター・トレメイン著、
甲斐萬里江訳、創元推理文庫
ミステリーの謎解き要素もとてもおもしろいのですが、キリスト教が広まっても、まだまだ古代ケルト文化が色濃く残っている7世紀アイルランドが舞台というのが、本当に読んでいて楽しいシリーズ。
作者のピーター・トレメイン氏がケルト学者なので、きちんとした知識に裏打ちされた設定がここまでおもしろく読ませるのだと思う。あとは翻訳者の甲斐萬里江さんのていねいでわかりやすくためになる訳注。特殊な用語もたくさん出てきますが、慣れます。なので、いちいち訳注にいかないで、全部読み終わってから訳注をまとめ読みしても楽しいという、二度おいしい本。
尼僧であると同時に、アンルー(上位弁護士・裁判官)の資格をもった法廷弁護士で、さらに次期王の妹君、ついでに美人で護身術も達者、という向かうところ敵なしのフィデルマは、相変わらず偉そうな面もありますが、それにもすっかり慣れました。フィデルマでも寝過ごしちゃったり、二度寝したいと思ったり、後悔したりするんだな、と妙に親近感さえ湧いた。
また、フィデルマよりも高圧的で傲慢で、おまけにフィデルマと違い思慮が浅い人物も多く登場するので、「フィデルマ、そこでガツンと言ってやれ!」という気分にもなろうというものです。
そして毎回思うのですが、当時のアイルランド教会(ケルト教会)とローマ教会の違いが非常に興味深い。フィデルマが活躍しているように、実際に当時のケルト教会は男女の地位に差がないし、障害者などへの差別に対しても罰則があるし、考え方がローマ教会よりも柔軟で先進的なんだよなー。ローマ教会ったらほんとに…(以下自粛)。
修道院が舞台になることも多いのですが、修道院と切っても切れない関係にある「図書館」も出てくるし、当然、重要な小道具として写本や木簡に書かれた昔の本が登場する。なんて楽しいんだ! ちなみに、当時のアイルランドでは、
ヴェラムの書籍は、本棚に並べるのではなく、一冊あるいは数冊ずつ革製の専用鞄におさめて壁の木釘に吊り下げる、という収蔵法を、よくとっていた。(訳注より)
そうです。一瞬中世のガードルブックの大きいバージョンみたいなものを想像したけど、ガードルブックは、専用鞄じゃなくて表紙が伸びてるのでちょっと違いますね(Wikipediaにも説明があります)。本がたくさん吊り下がってる図書館、見てみたい。
英語版だとすでに20冊近く出ているので、邦訳も続きが早く出ないかなーと待ち遠しい!
●フィデルマシリーズ
短編集『修道女フィデルマの叡智』
by rivarisaia
| 2010-05-11 18:56
| 本
|
Trackback
|
Comments(0)