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ウィンターズ・ボーン

『葉問』1&2というガチな映画の後に観た、これまた壮絶なガチ映画。サンダンス映画祭グランプリ受賞作品。

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ウィンターズ・ボーン(Winter's Bone)』監督:デブラ・グラニック

17歳のリーは、精神を病んでいる母と幼い妹弟とくらしている。父親は家を担保にして失踪。期日までに父親を探し出さないと家を没収されると聞かされたリーは、家族のために父を探そうとするが…


舞台がアメリカのミズーリ州オザーク山地というのがこの映画のキモ。私は最近、アパラチアを舞台にした小説にハマっている最中ですが、アパラチアとオザークには共通点が多いです。だから、この映画は楽しみにしてたし、本当にいい映画だった。

ええと、一般公開しないんですかね…。とにかく観て!としか言えない。過酷な状況で頼る人もなく、孤軍奮闘する少女。後半の太字でガチと書かざるをえない展開は、ひええと腰が引けました。凄まじいな。

さて。

土地柄が反映された描写がかなり出てくるので、あらすじにはあまり触れない程度にそのあたりの話を書いてみましょう。

・アパラチアもオザークもアイルランド系の移民が多く、開拓時代から孤立したような土地で、貧困や麻薬問題も抱えている。

・貧しいので入隊しか将来の選択肢がなく、軍に入る人も多い。学校で演習中のROTC(予備将校訓練団)をうらやましそうに眺める主人公のリーは、お金のために入隊を考える。父親の行方を探すときに訪れた家では、棚の上に身内であろう兵士の写真が飾られている。

・リーの父親は麻薬の製造に関わっていたことが早々にわかるが、つくってたヤクはメタンフェタミン(meth)。市販薬から製造する際、引火しやすく爆発しやすいので危険(焼けた家が映画に出てくるよね)。

・狩猟はふつうに行われている地域。銃の所持率も高いはず。


こうしてみると、アメリカの暗部をえぐり出してるような話ですが、同時にこの地方独特の文化や人々の絆も描いていて、監督のまなざしはあたたかい。人々の助け合い精神、それもベタベタしたウェットな関係ではなくて、スーパードライなところがいいですよ。裏切り者は容赦しないという冷酷な面をもつ人々ですら、救いの手を差しのべてくれるのだった。

音楽もすばらしい。南部アパラチアはブルーグラスの発祥の地です。バンジョーを弾き、歌をうたう人々の姿、エンドロールの音楽と映像が心に沁みました。
ゴスペルの『Farther Along』の歌詞が物語とかぶって、泣ける…。

これは、もうサントラ買います。そして一般公開希望。
オスカーにも絡むんじゃないかという気もするけど、どうだろう。

●参照:
アパラチア関係のエントリ
『Burning Bright』Ron Rash
『A Walk in the Woods(ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験)』Bill Bryson
『Serena』Ron Rash
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Commented by minaco. at 2010-11-08 01:07 x
ああ観たい!としか言えないのが切ないです。ガチスト必見ですね。
ほんとオスカーに絡みそうな気配だし、近年映画界もガチブームなので、その線で期待して待ちます。
アパラチアもオザークも詳しくないけれど、多分アイルランド系の血がそもそもガチじゃないかと思いますよ。あと、厳しい自然環境も。関係ないけど、常々アイルランドと青森は通じるものがあるような気がする…バンジョーと津軽三味線とか。
Commented by rivarisaia at 2010-11-09 16:56
これはガチスト必見映画に間違いありません。気に入ると思うので、ぜひ観てほしい! そのためには公開してほしい!!

アパラチア小説もガチなんですけど、全然邦訳出ないからな...。最近では、アメリカの大学でアパラチア・カルチャー・スタディなる分野もあるらしいんですよ。興味津々です。

アイルランドと青森は確かに通じるものがあるかも。訛りとか、音楽とか、厳しい自然環境とか。アパラチアにも青森にも行ってみたい。
by rivarisaia | 2010-11-06 22:57 | 映画/洋画 | Comments(2)