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ハーブ&ドロシー

アートに興味がある人だけじゃなく、その方面にまるで興味がない人にもおすすめ。なぜなら、アートの話だけど、ほかの分野や人生全般に通じる普遍的なテーマが描かれているから。
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ハーブ&ドロシー(Herb & Dorothy)』監督:佐々木芽生

郵便局員のハーブと図書館司書のドロシーのヴォーゲル夫妻。お金持ちでもなんでもない普通の庶民であるふたりが、長い年月をかけて買い集めた作品は、気づいたら一大現代アートコレクションとなっていた。


ハーブとドロシーは庶民だからね、家に入る大きさで、自分たちのお給料で買える金額の作品しか買ってない。支払いは分割払いのこともあったし、お金の代わりにキャットシッターを引き受けるなんてことも。映画やお芝居にも行っているみたいだから、お給料を全額つぎ込んでたというわけでもなさそう。

ふたりとも、特別に美術の教育を受けたわけでもなく、ハーブのほうがもともとアートが好きで、しかも美術史の知識はほとんど独学に近い。就職してから、ふたりで大学の美術の授業を取ったりしてる(それができる米国がうらやましい)。最初は自分たちも絵を描いていたけど、自らが表現するよりも、表現者を支える道を選んだのでした。

とにかく「好きだから」が大前提で、お金儲けようとか、将来作品や作家(あるいは自分)が有名になるかもしれないとか、そういう邪念がない。たぶん、そこが大切なんだと思う。欲が出ると、変な方向に進んじゃうこともあるから。

無名の若手作家でも作品が好きなら買う。買うときも、これまでの全部の作品を見せてもらって判断する(→さらっと書いてるけど、これすごいことですよ)。作家にとっても、すごくいい刺激になると思う。

ハーブは郵便局員時代、まわりにアートの話ができる同僚なんてひとりもいなかった、と言う。だけど、それでも別に構わないじゃない?という姿勢で、そこもグッときた。同僚もそんなハーブの私生活を尊重していたようすが伺える。会社員で話の合う同僚がいないと嘆く人は、この場面に注目。

多くの美術館の申し出を断ってきたふたりは、最終的にコレクションをナショナル・ギャラリーに寄贈することに決める。その理由は、ナショナル・ギャラリーなら作品を売らずに保存してくれて、さらに市民が無料で鑑賞できるから。それでもコレクションが膨大すぎて、ナショナル・ギャラリーにも収まらず、「ハーバート&ドロシー・ヴォーゲル・コレクション 50 × 50」として全米50州の美術館に50点ずつ寄贈されてるんですよね…って、どれだけの量なんだ! だってふたりの家は1LDKですよ。

ドキュメンタリーとしても構成がうまい映画で、二人の姿をよく表しているラストシーンが、ちょっと笑えます。
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by rivarisaia | 2011-02-09 21:33 | 映画/洋画 | Comments(0)