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アンチクライスト

私の苦手監督ベスト5には入るトリアー。どうも鬱々としちゃうんですよねえ。ハネケも鬱々とするけど、ハネケの場合は観客に対する嫌がらせとしてワザとやってる感があるので、まだいい。トリアーは素で鬱々なのが苦手。

それなのに何故か去年DVDで観てしまったのが本作。日本では公開すると思わなかったので、祝公開ということで去年下書きしてたのをアップします。ややネタバレ。
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アンチクライスト(Antichrist)』監督:ラース・フォン・トリアー

構成が章立てになっているのですが、プロローグは美しく残酷で、あれは劇場でみるべきです。しかし後半が痛すぎて劇場でみる自信が私にはナイという…(すいません)。

ところで、トリアーはカトリックなのでしょうか。鬱々としていたトリアーがリハビリで制作した際に、カトリック的シンボリズムのトリアー風味を山ほど盛り込んでみたよ!という印象を受けたんですが、本人は深く考えてないのかもしれないけど、いかようにも解釈できそうな意味ありげなものがてんこ盛りで、これは皆を考えさせてドツボにはまらせるという罠なんじゃないですかね。そんな私は無駄に1時間近く異国の知人の議論につきあうハメに…。さっそく罠にハマってるし。

本筋は「Grief/悲嘆(鹿が象徴)、Pain/苦痛(キツネ)、Despair/絶望(カラス)」というキーワードで構成されてます。それらの動物が示すのは三人の乞食(Three Beggars)ですが、プロローグでは、部屋に置かれた3つのフィギュアにもこれらの言葉が刻まれてたし、このキーワードが手を変え品を変え表現されます。

タイトルのアンチクライストが意味するのは、劇中で語られるとおり「Nature」で、これは「自然」のほかに人間などの「本質」も含まれるのかもしれませんね。

もともとのキリスト教における自然崇拝への嫌悪があると考えれば、ドングリが落ちてくるオークの木はケルト的だし、自然の厳しく醜悪な面をこれでもかと見せるし(個人的にはマダニのシーンがダメ)、人間の嫌な面も丸出し。で、アダムとイヴにさかのぼる原罪に加え、そもそも女性は男性を誘惑するので悪という、昔のとある神学者が言ってたような思想に対する反逆も感じました。だからアンチクライストなの?

あ、キリストが罪をあがなうために十字架にかかったことと対比するかのように、魔女のように殺されて火あぶりにされることで、過去に魔女として殺された多くの女性が復活を遂げるという話なのかも!(→こじつけた)

あるいは、過去に抑圧されてた自然に近い存在の女性が解放されたという、反キリスト的な「Nature」の勝利を描いてるのかも(→もっと無理矢理こじつけた)。いやまあ、そもそも快楽を優先して子ども=イエス見殺しという時点で「Nature」が勝利してんだけどさ。

映画みてない人には何のことやらサッパリですね。みた人も何のことやらサッパリかもしれませんが。

思わせぶりな箇所は他にも山ほどあって、幼児が木片をいじってるのは、イエスが大工だからだろ、とか、疑いだすとキリないんですけど、これ以上考えると再びトリアーの罠にはまるのでひとまずここで終了。深く考えず、激しい夫婦喧嘩映画として鑑賞するのもいいかもしれませんね。いくらなんでも激しすぎますけどね…。

ちなみに、この映画は帳面派です。魔女狩り研究の帳面が登場します。だからといって帳面派におすすめというわけではないですが。

余談ですが、前述した昔のとある神学者とはテルトゥリアヌスです。ええと知人がテルトゥリアヌス的思想が云々と力説し、私はテルトゥリアヌスって誰でしたっけ?とポカーンとしてしまいました…。欧州の方々は深読みに深読みを重ねて本作を鑑賞してるのかもしれません。私もさらに深読みするべく出直してきたいのですが、劇場で再見できるのか、やっぱりちょっと自信がありません。
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by rivarisaia | 2011-03-10 03:18 | 映画/洋画 | Comments(0)