There Once Lived a Woman Who Tried to Kill Her Neighbor's Baby

ちょっと前に読んだロシアの作家の短編集。表紙とタイトルが気になって読んでみたところ、なかなかおもしろくて、つい最近も再読したらじわじわきた。英訳で読みましたが、難しい英語ではないし、短編なのでおすすめ。

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There Once Lived a Woman Who Tried to Kill Her Neighbor's Baby: Scary Fairy Tales』Ludmilla Petrushevskaya著 Penguin刊

作者は劇作家としても有名なリュドミラ・ペトルシェフスカヤ。大辞林によれば「表現力豊かな強靭な文体によって、陰惨な現実を徹底的に描き出す才能で知られる」とあるのですが、その通りだな。邦訳で出版されている小説に『時は夜』がありますが、『時は夜』の紹介もすごいです。

「作品を読んだあとは首を吊って死にたくなる。でも何日かたつと、私は彼女の本をふたたび開いている」と評された女性作家の衝撃作。


どんな本なんだ…。『時は夜』は未読ですが、元気のある時にでも読んでみます。しかし本書のタイトルも陰惨ですよね。「あるところに近所の赤ん坊を殺そうとした女が住んでいた」ですからねえ。

とはいえ、本書は暗いといえば暗いし、陰惨な現実を描いてる話も多いけど、そこまで暗くないというか、どの話も、少なくとも闇夜ではなくて、一筋の月の光は射しているという印象。ええ、光が射して救いがありますので、安心して読んでください。

「Songs of the Eastern Slavs(東スラヴの歌)」「Allegories(寓話)」「Requiems(レクイエム)」「Fairy Tales(おとぎ話)」という4つのセクションに分かれていて、全部で19話が収録されてます。

タイトルに近い内容は、本書の中の『Revenge(復讐)』という話。あるアパートに仲のよい2人の女性が住んでいた。ところがある日、ひとりが妊娠してしまう。もうひとりはその状況に耐えられなくなり、彼女を憎むようになり、やがて赤ん坊がはいはいするようになると、廊下に漂白剤やら針のつまった箱やら、熱湯の入った容器を置きっぱなしにしたりするのだった。ついにある日、"ドア越しに赤ん坊を殺す" ことを実行に移すが…という話なんだけど、この後の展開がまさにあっと驚くリベンジ。でもここでも魂の救済がある終わり方。

突然、疫病が流行ってアパートから出られなくなる家族の話『Hygiene』、休暇で海辺に出かけた私が旧友の住む豪邸に招かれる話『The God Poseidon』、事故で亡くなった娘を家に連れて帰るべく、父親が病院のモルグに忍び込む話(ちなみに娘は生き返る)『The Fountain House』など、どれも情景が鮮やかに脳裏に浮かぶし、お芝居をみているかのような描写。作者が劇作家だからかなあ。

最後の『The Black Coat』もよいですよ。これは、マッチの光を灯して悪夢のような世界から帰ってくる話。すべてが寓話なので、短い話を読み終わった後、それぞれが象徴していることをあれこれと考えるという楽しみもありますよ。
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by rivarisaia | 2011-04-17 18:32 | | Trackback | Comments(0)

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