Jamrach's Menagerie

昨年のブッカー賞候補作で表紙が気になってた作品を読みました。いやはや…これは…。表紙と前半の物語から連想した話とはまったく異なる展開が後半に待ち受けてたのが衝撃。

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Jamrach's Menagerie』Carol Birch著、Canongate Books

1857年。Jaffy Brownという少年がロンドンのイースト・エンドの路上で逃げ出してきたトラに出会う。ガブリとトラに噛まれる Jaffy だが、かすり傷程度で助かる。そのトラは、異国の動物を取り扱う商売をしている Jamarach さんのトラだった。


子どものようなお母さんとふたり暮らしの Jaffy は、この事件をきっかけに、Jamarach氏の「menagerie=メナジェリー」で働くことになります。「menagerie」って言葉が私は大好きですが、これは小さい動物園のような場所といえばいいのでしょうか。その昔、世界中から珍奇な動物を収集して展示していた場所のことで、動物園の起源みたいなものですね。

さて、主人公の Jaffy は、同じメナジェリーで働く少年 Tim と仲良くなり、Tim の双子の妹 Ishbel に淡い恋心を抱いたりします。

本書の英語は別に難しくないんですけど、Jaffy の一人称で書かれている文章が私には独特なリズムのように感じられて、馴れるまで読みにくかったんですよ(しかし、この文体が後で効果を発揮する)。この調子で、メナジェリーでの摩訶不思議な話な展開すんのかなーと思ったら違いました。

そんなある日、Jamarach氏のもとに「ドラゴン」を仕入れてほしいという依頼がやってくる。捕鯨船に乗り込み、ドラゴン捕獲の旅に出る Jaffy と Tim だったが…


このあたりから一転して、海の荒くれ男たちとともに大海原で繰り広げられる帆船冒険小説の様相になってきます。船上のくらしの描写はリアルに迫ってくるものがあり、ドラゴン探しもどうなることやらと気を揉むのですが…。

ここから先、読みながらなんとなく予感した通りに事が進むも、それが Jaffy の口調で語られると逆に過酷さが増し、本当に言葉もないほどつらい。前半のメナジェリーでの日々が懐かしくなるほどですよ。

道徳的ジレンマと赦しといったテーマを含みつつ、少年が大人へと成長する物語です。

著者のあとがきに、Jamarach氏だけは実在の人物とあってびっくり。また2つのエピソードは実話を元にしているそうです。ひとつは、Jamarach氏のトラが逃げて少年を噛んだ(けど少年は無事だった)という事件。もうひとつは、後半で Jaffy の身に起きるカギとなる事件なのでした。
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by rivarisaia | 2012-03-06 18:36 | | Trackback | Comments(0)

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