短編集3冊:Birds of a Lesser Paradise、Tunneling to the Center of the Earth、Binocular Vision

本日も引き続き、洋書短編集をさくっと紹介。3冊ともまったく違うタイプです。

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Birds of a Lesser Paradise』Megan Mayhew Bergman著、Scribner

読んだきっかけは表紙のデザインとタイトル。全部で12話入ってます。どちらかというとある程度の年齢を重ねた女性が読むと、いちばん心にぐっとくるのではないかと推測。もちろんそれ以外の人でも問題ないけど。

シングルマザー、妊娠して不安になってる女性、年老いた父親と田舎でふたりぐらしの女性、ある事故に遭って顔にひどいケガを負ってしまった女性、アル中の母親などが主人公。どの話にも自然と動物が登場するのですが、物語のタテ糸が主人公の物語だとすれば、ヨコ糸になっているのが自然や動物です(いや、たまに動物がタテ糸だったりするかも)。

物語における動物の役割がなかなかよくて、一番最初の話に登場するのはオウムなんだけど、死んだお母さんの声マネをするオウム。母親が亡くなる前の出来事を思い出しながら、シングルマザーの主人公が子どもを連れてオウムに会いに行く(お母さんの声を聞きに行く)という話です。

これは反則だよ〜と思ったのは、最後の話で、お金がなくて飼い犬に手術を受けさせられない夫婦と犬の話(クマも出ます)…ううう(泣)。

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Tunneling to the Center of the Earth』Kevin Wilson著、HarperCollins Publisher →(地球の中心までトンネルを掘る)

こちらは昨年読んだけど感想書いてなかった本で再読したついでに書いておこう。全部で11話。どれも設定がややシュール。

秀逸なのは、最初の『Grand stand-in』。核家族が増えたため「代理おばあちゃん」サービスなるものがあり、5つくらいの家庭をかけもちして代理おばあちゃんを演じている女性が主人公。彼女はある日、新しい代理おばあちゃんの仕事を請け負うのだが…。アイロニーがぴりりと効いた一品。

そのほかは、スクラブルの工場で延々と「Q」の文字をひろいあげてる青年の話、祖母の遺言で折り鶴を折るハメになる家族の話、ひたすらトンネルを掘ることにした3人の若者の話、生まれてきた赤ん坊にズラッと歯が生えてた話、風変わりな博物館に勤務する女性の話、最悪の事態を想定する企業に勤める男性の話がよかった。

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Binocular Vision』Edith Pearlman著、Lookout Books
→(双眼鏡からの眺め)

NBAにノミネートされ、たいそう評判がいい短編集で、もっとも翻訳されそうな予感がする1冊なんですが、正直にいうと、全体としては私はあまり好みではないです。しかし、非常にうまいとは思う。

昔の作品から最近のものまで全部で34話入っていて読み応えがあるのですが、私には少々英語が難解だった話もあれば、物語自体が難解というものもあり、「だから何だ」という話もあった(でもそれを言うと、カーヴァーも「だから何だ」というのは存在するしな)。しかも大変に読みにくい。

そうはいっても、私は『Inbound』『Tess』『Mates』『Rules』『Binocular Vision』『Capers』『self-reliance』はとても好きです。なかでも、『Tess』は見事。病院にいる、みんなから愛されている可愛いテスの話。『Self-reliance』もたった7ページなのに、めくるめく人生がきらきらと走馬灯のようにパアッと光って消えていくという印象がすごかった。やっぱり、短編の名手なんだな…。

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by rivarisaia | 2012-05-12 18:34 | | Trackback | Comments(0)

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