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怪奇ヘビ男

私の東京国際映画祭は、これだけは絶対に外せない!と思っていたカンボジア映画で多幸感に包まれ終了。

カンボジアでは誰もが知っている作品らしいのだが、想像以上に大傑作。ホラーあり、コメディあり、お色気あり、ロマンスあり、冒険あり、歌もあり、さらには本物のインコ大活躍!という大変にエンターテインメントな作品で、すばらしかった。

60年代はカンボジア映画の黄金期で、東南アジアで大人気だったらしいのだが、クメール・ルージュがフィルムのほとんどを没収し、焼却してしまい、また映画人は粛正された(こちらの記事をどうぞ)。本作は、監督自身が亡命先であるカナダに持ち出すことができた6本の作品のうちのひとつ。

怪奇ヘビ男(The Snake Man/Puos Keng Kang)』監督:ティ・リム・クゥン

夫の暴力に耐えて幼い娘とくらしている女性が、大蛇(ケンコン蛇、という名称である)と一晩過ごす約束をするハメに。ところが、暴力夫よりも大蛇のほうが好きになってしまい、その後何度も大蛇と密会。やがて妊娠してしまう。

怒った暴力夫は大蛇を殺害。スープにして妻に食べさせた挙げ句、妻の腹を切り裂き、あふれ出る大量のヘビも叩き殺すが、1匹だけ難を逃れたヘビがいた…


ここまでは、有名な伝説がもとになっているそうです。
(参照:カンボジア民話「大蛇ケーンコーン」

そうそう、しゃべるカラス、映画にも登場したよね!

以降の展開は監督の創作とのこと。

話かわって、あるところにソリーヤー(ディ・サヴェット)という気だてのよい娘がいた。ソリーヤーの父は意地悪な女を後妻に迎える。そしてこの継母は、ソリーヤーを家から追い出してしまう。

そんなソリーヤーのもとに、前述の「難を逃れたヘビ」が、イケメンの青年(チア・ユットゥン)に成長して登場。ふたりは恋に落ちるが、継母はソリーヤーと青年の仲を裂こうとするのだった…


お色気ムンムンな継母が、アハーンウフーンと男性陣を翻弄する場面はなかなか可笑しい。いっぽうでソリーヤーとヘビ青年の恋のゆくえも、お付きの人々を巻き込んでてんやわんやの喜劇で愉快。

しかしこのあと、継母の協力者としてちょう怪しいホラーな魔女が登場。ヘビ青年の命である「赤い宝石の指輪」が奪われ、ヘビ青年はヘビの姿に戻り、さらに石になってしまうのだが、ソリーヤーのお腹には子どもが宿っていた…。

そして8年後。

えっっ!? 8年!?

ええと、ソリーヤーは娘と洞窟でひっそりとくらしてました。ところで、この娘は髪の毛がヘビなのである。子役の少女が生きたヘビを頭にのっけて演じているのである。うねうねと髪の毛であるヘビが動いているのである。

子役スゴイ!

そんなヘビ髪少女は、くだんの「赤い宝石の指輪」のありかを発見。母であるソリーヤーは指輪を取り戻しに行くが、逆に魔女につかまって気がふれてしまう。綺麗なヒロインなのに、もんのすごい狂いっぷりの熱演である。

そこでインコの助言を得たヘビ髪少女が、母の代わりにがんばるのである。

え、インコ?

ええ、ブルーのセキセイインコ(本物)の一家が登場し、少女が親切を施したら、代わりにいろいろアドバイスしてくれるのだ。インコがアップでベラベラしゃべるシーンかわいい。

ここから最後の大盛り上がり、手に汗にぎるヘビ髪少女の大活躍が!

頭だけでズルズル這い戻ってくる魔女! ガンガンとたらいを叩く気がふれたお母さん! ヘビ髪少女は無事に指輪をゲットできるのか! マッドなお母さんと石になったお父さんの運命は? あと意地悪な継母はどうなるの!?


怒濤の展開でございました。
やはり、人間、善行を積まないとダメですよねーというハッピーエンドで本当によかったです。

本作品、上映前に監督のご挨拶がありました。温和そうな笑顔のすてきなおじいちゃんでした。先日崩御されたカンボジアのシハヌーク国王は映画産業を後援していたそうで、監督から感謝の意が捧げられました。

ポル・ポト派の粛正を逃れて国外にフィルムを持ち出し、何十年の時を経てこうやって東京の映画祭でも上映され、監督のご家族も一緒に多くの人と作品を観賞することができたことが、感無量でございます。本当にありがとうございました。

以下もあわせてご覧ください。

本物のヘビも多数出演 “クメール映画の父”ティ・リム・クゥン監督が語る黄金期のカンボジアホラー

「今回上映される作品にかかわった人で、今も生きているのは私と女優のディ・サベットだけです」の言葉が悲しいです。
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Commented by きたきつね at 2012-10-29 21:03 x
これ、ものすごーく!見たいです。
あらゆる意味で心の琴線に触れます。
動物とか音楽とか歴史とか。
実は、自分が出かけている間に家族全員が粛正されてしまったというカンボジアの人がいて、他人事ではないのでした。戦争はいかん。
それにしても、監督の「何度も撮影していると蛇も弱ったり死んでしまったりする」というのがすごいと思いました。
ああ、見たい。一般公開してくれないものでしょうか。
Commented by きたきつね at 2012-10-29 21:06 x
あ、上のコメント、「カンボジアの人がいて」の前に「という人が知り合いに」が抜けて意味不明になってしまいました。
カンボジアには縁がなくもなく、今後、社会・経済とともに映画も復興していくことを心から祈ります。
Commented by rivarisaia at 2012-10-31 19:33
これはきたきつねさんはかなり好きだと思う!
だからぜひともみせてあげたい!!

カンボジアといえば私は『キリング・フィールド』とアンコールワットくらいしか知らなくて、カンボジアの映画も初めて観たんですが、こんなに成熟していたなんて、驚くと同時に、失われてしまった映画について考えると悲しくなってきますよ。

自分がいない間に家族全員が粛正されてしまったって辛い…。この映画のキャストやスタッフもどうなってしまったのかなあとふと考えたりしました。

カンボジア、これから文化面でもどんどん復興していきますように。
by rivarisaia | 2012-10-29 00:48 | 映画/香港・アジア | Comments(3)