Dead End in Norvelt

なんだか納得がいかなくて放置していた今年のニューベリー賞受賞作。うーん。なんでニューベリー賞なんだろう。おもしろい点もあるんだけど。

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Dead End in Norvelt』Jack Gantos著、Farrar Straus & Giroux

小さな寂れた町 Norvelt にくらしている12才の少年ジャック。母親はこの町をこよなく愛しているが、第二次世界大戦で日本と戦った元軍人の父親は町を出ていきたいと思っている。

さて、1962年の夏、母親に自宅謹慎を言い渡されてしまったジャック。唯一外出できるのは、隣に住む老婦人ヴォルカーさんの手伝いのときだけ。その手伝いとは、死亡記事の代筆だった…


ジャックが住む Norvelt はペンシルバニア州に実在していて、エレノア・ルーズベルトが炭坑労働者を救うために設立したコミュニティのような町らしい。私、本書で初めて存在を知ったんですけどね。

住人同士が助け合うという習慣があり、お金の代わりに労働で支払ったり、物々交換をしたりする(ジャックの父親は共産主義的だと嫌がっている)。ところが時代も移り変わり、やっぱり世の中お金だよね、という風潮がこの町にも流れはじめている。若い人は町を出てしまい、寂れつつある田舎町である。

そして主人公のジャックはやたらと鼻血を出す少年で、何かあるとすぐブーッと鼻血を垂らす。びっくりしてもブーッ。怖い目にあってもブーッ。しょっちゅう血まみれになっている。

隣人の老婦人は町の検死官であると同時に、新聞に「今日は何の日?」というコラムを寄稿したり、古くからの住人が亡くなると死亡記事を書いたりしている人なのだが、リウマチで手が動かせなくなってしまったので、ジャックに死亡記事の口述筆記をさせるのであった。

ところが、町の設立時から住んでいる老人たちが、次々と死んでしまう現象が起きる(その部分はややミステリーっぽい)。そして、町にはヘルズ・エンジェルスがやってきて、空き家に放火したりする事件も発生。

…と、盛りだくさんでおもしろそうなんですけど、まとまり感がないのが惜しいところ。老人連続不審死の顛末もですね、そんな結末でいいの…みたいなね…。

そうした部分が「なぜこれがニューベリー賞?」なんですけども、「ブッ」と笑っちゃう場面もあるし、老婦人がすてきな女性で、彼女が書く死亡記事は一見関係ないような歴史の逸話をうまく絡めて、アメリカの小さな田舎町の一個人と世界の歴史のつながりを感じさせる構成になっているところはよい点です。

たとえば、主人公のお父さんは日本と戦って帰ってきた軍人なので、ジャップがどうのこうの、みたいな言葉もしょっちゅう出てくるんですけどね、老婦人が死亡記事で広島の話をするあたりは、とてもいいんだよなー。そういう意味では、とても惜しい1冊なのだった。
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