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風立ちぬ

上映終了かけこみ鑑賞ばかりのわたしがめずらしく早々に観にいったので、さっさと感想書く。

風立ちぬ』監督:宮崎駿

零戦の設計者である堀越二郎の半生に、堀辰雄の小説である『風立ちぬ』と『菜穂子』をミックスした変な話です。

よい評価と悪い評価のどっちを読んでも、そうだよねーって同意できちゃうアンビバレントな作品だったんですが、好きか、嫌いかで言うと、両方まじってるというこれまたアンビバレント。

好きなところは航空機に関する場面。嫌いというか、個人的にはなくてもよかったのは、堀辰雄部分(ヒロインが出てくる恋愛のパート)。アニメーションの表現として凄かったのは、関東大震災の場面です。

主人公の二郎は、眼鏡を外すと流れ星も見えないくらいの近眼なんだけど、社会生活の面でも近眼的で、設計以外のことはほとんどみえてない。昼食食べてても、サバの骨のアールの美しさに見とれたりする。で、アールを計算したりする。

それのどこがいけないのか、そういう人がいても別にいいじゃんか、と思うのですが、どうもこの設計以外見えてない点をマイナス要素にするために菜穂子を登場させたようにも感じられ、「美しいものを追求する天才的な人は自分勝手で、まわりのことをまるで考えない」という毎度の紋切り型か…とややウンザリもしました。

が、菜穂子は菜穂子で、限られた人生は全力で好きな人に捧げます的な、恋に生きる女性だったため、ふたりは幸せだったんじゃないでしょうか。

何故に菜穂子パートをここまで邪険にするかというと、もともとわたしが、クリエイターがモノつくってる過程には興味があるけど、私生活とかどうでもいい、むしろあんまり知りたくない…という性格だからというのもある。

いっぽうで、航空機関連の話はすばらしいです。

ドイツに航空機の見学に行く話とか、試作機の勉強会の場面とか、現場も初めてだったのでちょっとガタガタの沈頭鋲とか、心わしづかみだよ!!

航空機が壊れるときに、中の骨組みがバキバキってなるところが見えるんだけど、これもすごくわかるわ…。

技術的にはドイツに20年遅れてるし、予算もないという二郎に、夢の中のカプローニさんが「センスが先で技術は後からついてくる」と助言するところなんてグっときました。このセンスという言葉には見た目だけじゃなくて、マイナス要素を乗り越えるための工夫も含まれるんですけど、ここで機体の軽量化の話が出てきて、わくわくする。こういう話をもっと観たかったです。

ところで。

二郎がつくっていたものが「戦闘機」であるがゆえ、設計者としてのモラルを問う人もいるかもしれません。映画の二郎は葛藤してなさげですが、同僚は「武器をつくってるんじゃない、飛行機をつくっているんだ」等々いいわけしてます。

線引きが微妙なのですが、以前『戦争と広告』の話を書いた際は、道徳的にどうなのか悩みました(いまも悩んでる)。しかし広告には思想が入るけど、プロダクトには用途はあれど思想はない。非難されるべきは設計者や技術者、職人などのつくり手じゃないと思うんですよね。

とくに航空機に関しては、当時、飛行機をやりたかったら戦闘機をつくるしかなかった、という状況もあった。もちろんみんなどこかで葛藤はあっただろうけど、だからつくらないという選択肢はまずないよな。で、いまの旅客機だって、そうした数々の戦闘機の歴史の上に成り立っていると思う。

わたし、最初、堀越二郎が零戦をつくる話だと思ってたんですよ。ところが正確には零戦じゃなくて、その前の「九試単座戦闘機」だった(名称はあとで知った)。この試作機こそが、クライアント=軍の無理な要求などがなくて、比較的自由に設計できた夢の飛行機だったからにちがいない。

だから映画が、九試が飛んだところ以降の二郎を語らずに終わるのは、逆にその後のあれこれが容易に想像できていたたまれない。

一機も返ってきませんでした、と二郎が最後にポロっと言ったときに、せっかく技術とお金かけてつくったプロダクトが破壊されちゃうって残酷だよな…と悲しくなりましたよ。これが弦楽器の設計だったら、自分のつくったものが何世紀も大事にされたかもしれないのに。モノづくりも、ほんとモノによってさまざまですよね。嗚呼。

いずれにせよ、航空機の歴史はいちどどこかできちんと知っておきたいと思うにいたったあたりで、きょうはおしまい。
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Commented at 2013-08-05 20:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rivarisaia at 2013-08-05 20:51
これね、パッキリ好き嫌いがわかれると思います。あと、つくってるのが戦闘機という雰囲気は台詞くらいであんまり出てないのも、言い訳っぽい映画に見えるかも。

ただ、堀越二郎の話に見せかけたちょうフィクションになっていて、むしろ零戦の話だと意気込むと肩すかしくらう気がします。同様に、予告みて、サナトリウムの悲恋物と思った人も、えーってなるんじゃないかしら。。。
by rivarisaia | 2013-08-02 23:49 | 映画/日本 | Comments(2)