ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語

先日につづき、きょうもしつこくネジのはなしです。オススメの本の紹介。写真は左がむかし出ていたハードカバーの表紙、右が文庫の表紙です。

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ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語
ヴィトルト・リプチンスキ著、春日井晶子訳、早川書房

「この千年で最高の道具(工具)」に関するエッセイを依頼された著者。自宅の工具箱をのぞいてみるものの、発明時期があまりに古すぎたり、何かが足りなかったりして、これというモノが見つからない。そんなとき妻が言うのだ。

「いつも家に置いている道具があるわ。ねじ回しよ」

そこで著者は、ねじ回しと、必然的にねじ、の起源を調べることに!
一筋縄ではいかない、めくるめくねじの世界へようこそ!


というモノの起源の話で、ページ数はそれほど多くないのに濃密な1冊となっています。

ねじ回しもボタンと同じく中世に発明されたのではないか、と仮定した著者は、当時の道具が描かれている銅版画や書物にあたり、マイナスねじが描かれている図版を見つけます。

さまざまな図版を調べて行くうちに、技術革新は武器から始まることが多いよね~と気づいた著者は、ルネサンス期に誕生した「銃(火縄銃)」を調べることに。このとき銃はもちろん、甲冑にもねじ(蝶ナット)が使われていたことも発見するのだった。

16世紀半ばには、さまざまな場面で使用されるようになったねじだけど、それが産業化するにはさらに200年もかかっているらしい。ねじの産業化の過程や、ねじの形状がどのように洗練されていったか、プラスネジことフィリップスねじはいつ誕生したか、など興味深い話題はつきない。

現在でいうところの「ねじ」がうまれたのはおそらく中世なんだけど、それ以前にも「ねじの原理」は存在しており、たとえばグーテンベルクの印刷機はねじ式の圧搾機を利用しているし、ねじの元祖といえるのは、古代ギリシアのアリキメデスが発明したといわれている揚水用水ねじなのだった。

いやあ、ねじって面白いですね!

本書に関してはもうちょっと挿絵や図がほしいところなのだが、いまはインターネットで検索しながら読めるのであまり贅沢は言わない。

中世の採鉱・冶金に関する有名な技術書に、アグリコラが著した『デ・レ・メタリカ(De Re Metallica)』という本があるんですけども、この『デ・レ・メタリカ』にもねじが登場するっていうんですよ。

木版がの左すみに見事に描かれているのはねじではないか。(中略)この木版画から、16世紀半ばにすでにねじが使われていたことが証明されるのである。

ナンダッテー!『デ・レ・メタリカ』英語版はプロジェクト・グーテンベルクにあるので見てみると、

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おおお! ほんとうだ~。

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左下部分にホラ。(ちょっと感動。366ページの図版です)

さてさて。ねじといえば、時計の部品なども連想するんですけど、1550年以前の時計にはねじはまったく使われていないらしく、時計にねじが使われるようになったのは、特に腕時計などの小さい時計の需要が増えたからだそうだ。大型の時計はぜんまいだけなのね。

そしてよだんですが、本書にさらっと書かれてあったことで個人的に興味津々なのは

紳士にとって旋盤を回すことは、婦人にとっての刺繍のようなもので、18世紀の終わりまで趣味として人気を保っていた。


のくだり。ここ、もっと詳しく知りたい。貴族男性は趣味で旋盤をくるくるまわしていったい何をつくっていたのか。そういやルイ16世の趣味も錠前づくりだったなあ。これって、工作の一環ですかねえ。ねじもつくってたのかな。ナゾだ。
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Commented by きたきつね at 2013-08-08 07:20 x
おお、ねじ!
今まで、あまり注目したことはなかったのですが、おかげで、俄然興味をそそられました。というか、最近、日本ではマイナスねじはほとんど見かけられないんですか。16世紀からあるのに。なんてこった。
「紳士にとって旋盤を回すことは婦人にとっての刺繍のようなもの」というのは何となくわかる気がします。
『ねじとねじ回し』読んでみます。おもしろそうな本、ありがとう!
Commented by fontanka at 2013-08-08 20:47 x
さっそく図書館で予約。

やっぱりルイ16世を連想しちゃいますよね。
昔の時計は「ねじ」だから、ずーーーっと修理できる。
手作りの良さが。
かつて夫が、祖父の形見のヴィンテージ時計をアンティークショップで修理してもらった時、純正部品じゃなくて、職人さんがねじつくったそうです。

コンピュータはこわれるけど、ねじはこわれませんです。
Commented by col at 2013-08-11 16:55 x
御久し振りです
日本の無ネジ文化、、、面白く読ませていただきました
ネジの有無に限らず、のこぎりの向きや、立ち座りの違いや、挙げればキリがないけど、根源的には関連してそうですね
またお邪魔します
Commented by rivarisaia at 2013-08-12 23:54
>きたきつねさん
わたしも、ねじ屋さんと話す機会がなかったら、こんなにねじに夢中になってませんでした…。というか、ねじの世界の奥が深すぎて入っていけないんですけど!

マイナスねじは、ねじ回しが外れやすく、電動ドリルで扱いにくいので、だんだん使われなくなってきちゃったんですよね。昔のモノには使われています。何故か我が家にあるインド製の扇風機もマイナスねじでした〜。
Commented by rivarisaia at 2013-08-12 23:56
>fontankaさん

時計のねじは、それこそ今の日本ではお目にかからないマイナスねじではないでしょうか! (最近はプラスなのかもしれないけど、基本的に時計はマイナス使うって聞いたことが)
ヴィンテージ時計のねじ、いいねじなんだろうな〜。いいな〜(何が…)
Commented by rivarisaia at 2013-08-12 23:59
>colさん
お久しぶりです! 木材同士であれば別にねじ使わなくても接合できちゃうので、逆に木組みの技だったら日本のほうが進んでいるのかも。のこぎりの向きも包丁の研ぎ面も西洋とは違っていて、そのあたりもねじ文化とつながりがありそうですよねー。
Commented by kojima at 2015-03-05 20:11 x
これがはじめてのコメントです。はじめまして。
ねじとねじ回し、わたしもいま読んでいるところです。おもしろいですね。私の場合、釘の話にも興味を引かれました。昔の釘は、いまの釘とはだいぶちがっていたのですね。
長谷川哲也というひとが、ナポレオン・ボナパルトを主人公にした漫画作品をかいておりまして(もしかしたら、まだ連載継続中かもしれません)これに、釘を撒き散らす場面があるのです。暴動鎮圧のため、大砲に釘を山ほど詰め込んで発砲するのですが・・・・・・作品の中では、現在使われている釘と同じ形の釘が乱舞しています。長谷川先生も後にこの点に気がついたようで、単行本のあとがきで
「当時の釘はいまのものとは違う形だったようです。わたしは、今の釘と同じように描いてしまいましたが」
と断っていました。何と律儀な・・・・・・・と感心した記憶があります。
Commented by rivarisaia at 2015-03-05 21:20
>kojimaさん、はじめまして。
この本、いいですよねえ。私はねじに夢中で釘について深く考えてなかったのですが、釘の世界も奥が深そうです。日本は無ネジでしたけど、和釘が存在してたので、釘の歴史を探るといろいろ興味深い話がたくさん見つかりそうです!

前にNHKのブラタモリで、鉄道のレールを固定する釘の話を紹介していて、「犬型(イギリス)」と「亀型(アメリカ)」があるということを知り、へええと思いました。

ナポレオンの漫画、機会があったら読んでみたいです。大砲に釘を詰め込んで発砲……怖い!
Commented at 2015-03-06 21:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kojima at 2015-03-06 21:58 x
すいません。うっかり非公開コメントにしてしまいました。

また寄らせてください。
Commented by rivarisaia at 2015-03-10 19:27
>kojimaさん
のこぎりの話も興味深いですねー。確かに日本から中国の東北部に伝わったのかもしれないですね。身近にあるような普通の道具ひとつとっても、その背景を調べていくといろいろな歴史が見えてくるものですよね。

ぜひぜひまたお越しください!!
by rivarisaia | 2013-08-07 23:29 | | Trackback | Comments(11)

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