Orphan Train(孤児列車)

映画祭の感想の前に、忘れそうなので先日読んだ本の感想を先に。

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Orphan Train』Christina Baker Kline著、William Morrow Paperbacks

里親のもとを転々としてきた17才のモリーは、どの家庭にもなじめず、学校でも疎外されており、唯一の友人はボーイフレンドのジャックだけ。

ある日、モリーは図書館から本を盗もうとした罰で、50時間の社会奉仕活動を言い渡され、とあるお屋敷にひとりでくらす老婦人ヴィヴィアンの手伝いをすることになる。

モリーの仕事は屋根裏に積まれたヴィヴィアンの荷物を片付ける、というものだったが、同時にそれはヴィヴィアンの過去をひもとく作業だった…


1854年から1929年にかけて、アメリカでは「Orphan Train(孤児列車)」という慈善事業が行われていました。これは東海岸の都市にいた孤児を、列車に乗せて中西部に里子に出すというもので、20万人以上の孤児が列車で移送されました。

中西部のどこかの町の駅に列車が止まると、人々が集まってきて子どもたちを検査し、選ばれた子はどこかにもらわれていき、残った子どもたちは次の駅に運ばれ、そうやって終点まで行っても引き取り手がなかった子どもは、そのまま列車に乗せられて東海岸に戻され、孤児院に入れられるという仕組みです。

前に紹介したイギリスの『からのゆりかご』みたいだよね。あれとは違って孤児の行き先は外国じゃないけど、当時の東海岸と中西部は、くらしも文化もだいぶ違ったはずなので、子どもたちにとっては異国も同然だったであろうと思われます。

ここまでの孤児列車の話は史実です。

さて、この物語の老婦人ヴィヴィアンは、幼い頃に家族をなくしたアイルランド移民で、孤児列車に乗せられたひとりでした。引き取られた先では、家族の一員ではなくて、タダで使える働き手という扱いを受ける。

そもそもヴィヴィアンの本当の名前は Niamh(ネーヴ、と発音するアイルランドの名前)だったのに、発音しにくいからというのでドロシーに変えられたのだ(それが最後はヴィヴィアンになる)。

家族も名前も奪われ、見知らぬ土地で孤独にくらさなくてはならなくなった子どもは、自分のアイデンティティを喪失し、感情を自然に表現できず、うわべだけをとりつくろうような性格になってしまう、とヴィヴィアンは語る。それはモリーにも共通することだった。

アイデンティティの問題が本書の根底にあるテーマのひとつで、17才のモリーはペノブスコット・インディアンの血を引いているという設定になっています。モリーとヴィヴィアンには孤児として通じる部分があり、お互いに理解しあいながら、ふたりとも前に進む方向へと変わっていきます。

このふたりがすごくいいキャラクターなのですが、ふたりのことをもっと知りたいのに!という気分で本が終わっちゃうのが物足りないところ。ただ、孤児列車については、わたしは存在を耳にしたことがある程度なので、この本をきっかけにもっと詳しく知りたくなりました。いろいろなことを考えるきっかけになる本です。

ということで仕事でもないのに、また調べたいことが増えちゃったよ…。
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Commented at 2013-10-19 06:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rivarisaia at 2013-10-21 23:14
「孤児列車」すごい話ですよね。TVドラマでちらっと観たことがあって、その時はあまりピンとこなかったんですけど、酷い話ですよ。

西洋人は養子をとる際に、血筋を重視するというケースはわりと少ないのではないでしょうか。血筋にこだわる人はそもそも養子は取らずに、代理母等でなんとかしそう。

あと、お金と余力があるなら家庭のない子供を家に迎え入れて幸せをわけたいというキリスト教的な発想もあるかもしれませんね。
by rivarisaia | 2013-10-18 21:37 | | Trackback | Comments(2)

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