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馬々と人間たち

東京国際映画祭の3本目。ある意味、わたしにとって今回のメイン作品といってもいい。TIFFの動物枠はなかなかあなどれない良作が登場するのですが、今回もすばらしかった。4年前の牛映画『牛は語らない/ボーダー』のように、いつまでもわたしの記憶に残ることでしょう。

馬々と人間たち(Of Horses and Men/Hross í oss)
監督:ベネディクト・エルリングソン

アイスランドの荒涼とした広大な大自然に生きる馬々と人々の、生と死、欲望を描く、本当に不思議な、野生のエネルギーに満ちた「人馬ドラマ」。

どんな映画なんだよ、おい、って感じですよね。連作短編集のように、ざっくり6つのエピソードがひとつの作品を形づくっています。毎回、馬の瞳のドアップでエピソードがスタートするのもおもしろい(ときに人間の瞳)。さらに間奏のようにエピソードの合間には、馬の埋葬や人間の葬式、馬の去勢、といったシーンが挿入されます。

エピソード1:
白い牝馬に乗る紳士。彼の乗馬姿を遠くから望遠鏡で観察する人々。しかし、こげ茶色のワイルドな雄馬が牝馬に襲いかかり交尾をはじめてしまう…

エピソード2:
海に向かってトラックを走らせる男。男は途中で馬に乗りかえ、馬ごと海に飛び込み、船を目指す。ウォッカを手にいれるために…

エピソード3:
柵をめぐる男と男の戦い。柵を壊してまわる馬に乗った男を、トラクターで追いかける男。そこに悲劇が。

エピソード4:
スウェーデン人の馬追いの女性。逃げた野生の牝馬を追いかけた彼女が遭遇したのは…

エピソード5:
初めて馬に乗った旅行者の男性は、置いてけぼりをくらったあげく、雪山で遭難してしまい…

エピソード6:
人々総出で放牧馬を集める馬追いの日、恋する女性は男性にアプローチ…


こうしてまとめて振り返ってみると、馬の交尾にはじまり、人間の交尾で終わったような映画だわね…気がつかなかった!

もう少し内容に踏み込むと、びっくりする展開がいくつかありました。たとえばエピソード1で、紳士は白馬を殺してしまう。何故殺してしまうかというと、それは名誉を傷つけられたから。恥ずかしい行為をした白馬に、彼はもう乗ることができない。それは犯されたのが白馬ではなく、彼自身だからだ。(監督のQ&Aより)

エピソード3では、柵を壊してまわる男は、有刺鉄線が目に刺さって血みどろになるわ、馬に乗った血まみれ男に驚いた男が、崖からトラクターごと転落するわ、わたし、度肝抜かれました。ちなみに、血まみれ男はエピソード4でスウェーデン女性に助けられ、その後アイパッチ姿で元気に登場します。

雪山で遭難した男性は、スター・ウォーズのルークみたいな状態になります(あの、トーン・トーンの場面ね)。実際に、そうやって監督の友人のおじいさんは凍死をまぬがれたそうですよ。

映画後のQ&Aで興味深かったのは、アイスランドの馬というのは有名で、北欧やドイツなどからホース・ウィスパラーな人たちが、馬とくらすためにアイスランドにやってくるという話。そうした人々に敬意を示して、エピソード4のスウェーデン人女性を登場させたとのこと。

予算もなくてCGはほとんど使ってなくて、馬のシーンなどは1発撮りだったらしいのですが、監督もカメラマンも馬好きということもあってか、本当に馬がよく撮れており、馬映画としてすばらしいです。そうそう、本作の撮影では馬は1頭も死んでません(馬の安全も第一)。

オマケ:トレイラーを貼っておきます。


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by rivarisaia | 2013-10-26 00:46 | 映画/洋画 | Comments(0)