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失魂

東京国際映画祭で最後にみたのはこの映画。今年のTIFFはこれでぜんぶ。

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失魂(Soul/失魂)』監督:チョン・モンホン/鍾孟宏

日本料理店で働いているチュアンは、ある日仕事中に突然倒れ、山奥に住む父親のもとに戻ってくる。

以前とはまるで別人のようになってしまったチュアン。自分自身のことも父や姉のことも覚えていないチュアンをみて、父親は息子の身体は何か別の魂に乗っ取られたのではないかと疑いを抱く…


実家をはなれて長いこと音信普通だった息子が、凶暴な性格になって帰ってきて困惑するお父さん。そのお父さんを演じているのがジミー・ウォング/王羽です。上映後のQ&Aで、監督は、ジミーさんが出演を承諾してくれなかったらたぶん撮ってなかった、とおっしゃってましたが、息子と対峙する口数の少ない、心の奥底に秘密を封印したような表情の父親役にはジミー・ウォングが適役でした。

少々内容にふれてしまうと、帰宅したチュアンは、自分を殺そうとしたと言って姉を殺してしまう。血まみれで倒れている娘の死体を目にした父親は、咄嗟に息子の犯行を隠そうとする。

ここでわたしは、娘に対する態度がちょっと酷いよ、ジミー父さん…そんなに息子のほうが可愛いですか…とも思ったわけです。寝台の下に押し込められた娘の死体の目から一筋涙が流れたのが、もうね…。しかし、のちに明かされるけど、お父さんは息子に対して負い目があった。だからせっかく帰宅した息子をどうしても突き放すことができなかったのかもしれません。

ひとつの惨劇がひきがねとなって、また新たな惨劇を呼ぶのですが、そうしたなか、チュアンの中の別人格にも少しずつ変化が現れてきます。

人が殺されたり、大ケガしたりしているのに、霧のむこうにぼんやりとした希望の光がゆらめいているような、そんな後味の映画。終わってみれば何故かチュアンを許せてしまうというか、チュアンはこのまま静かに山奥で幼なじみの青年と一緒に蘭やリンゴを育てて平穏に生活していけたらいいんじゃないかなあと思えたのが不思議。監督が言っていたように、すべての悪人にも善の部分があるということをうっすら感じました。

トレイラーみると雰囲気がつかめるかと思うのですが、深い山の自然や昆虫、空や雨をとらえた映像がものすごく美しく、人間の手の及ばない存在がもつ力が、ラストの不思議な清々しさにつながっているような気もします。撮影監督は「中島長雄」さんという方なのですが、これは監督のペンネームであることが上映後のQ&Aで判明! 撮影もカメラマン出身の監督ご自身でした。

では、トレイラーをどうぞ。

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by rivarisaia | 2013-10-29 23:11 | 映画/香港・アジア | Comments(0)