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Pioneer Women:女たちの西部開拓史

以前たまたま読んでいた本に「西部劇では描かれないがカウボーイには黒人がたくさんいたし、インディアンのカウボーイも存在した」という記述をみかけて以来、カウボーイに関する本をちょこちょこ読んでいて、その流れでアメリカ開拓史の本もちょこちょこと読んでいるところ。

西部開拓史における女性の話がなかなかおもしろい。大草原の小さな家シリーズを愛読してた人にとくにおすすめ。

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Pioneer Women』Joanna L. Stratton著、 Arthur M. Schlesinger Jr.序文、Touchstone刊

著者ジョアンナ・ストラットンの曾祖母ライラ・デイ・モンローは、夫の法律事務所で働くかたわら、知識をみにつけ、カンザス初の女性法律家として資格を得て、女性参政権運動などに関わった人物で、1920年にカンザスの開拓女性の記録を収集しました。曾祖母の仕事を著者が1冊にまとめたのが本書です。

本書の内容を説明します。大きく5つの章にわかれています(自分用のメモを兼ねているので長いです)。

【第1部】旅立ち/住居/大草原でのくらし

幌馬車での東部からの旅立ち、丸太小屋、土でつくった家、横穴式住居でのくらしがはじまる。横穴式住居はローラの本にも登場しましたが、本書では写真もみられます。

地下水脈を探して井戸をつくったり、燃料確保をするのがひと苦労。石炭や薪がないので、大草原にいっぱい落ちている牛のフンを乾燥して使っていたのだ。

石鹸づくりも大変な作業だったし、マラリアをはじめとする病気も脅威だった。

【第2部】大自然/気候/インディアンとの戦い

開拓生活は、狼やコヨーテ、草原の火事、集中豪雨や吹雪、大吹雪、干ばつ、いなご…と危機だらけである。しかし何故かどんな災害にあっても、収穫がぜんぶダメになって何もかも失っても笑い飛ばすのが開拓民、というようなことを当時の女性のみなさんは言ってる。

すごいのは出産の話。隣の家なんてないような場所に住んでるから、まわりに相談できる人もいないし、栄養も偏った食事だし、妊娠しても重労働をこなしてるので、出産自体が命がけ。産気づいても医者が呼べない(呼んでも間に合わないケースが多い)。

4才と1才のこどもを抱えたある女性は、夫が外出中に産気づき、隣人も医者も呼べないのでひとりで準備をしてバケツに水をくみ、食事を用意し、飼い犬に子どもを見るように命令し、気を失いかけつつ(!)ひとりで出産したのだった。

いっぽう、インディアンについては、大草原のインディアンは比較的平和主義だったので問題なかった。しかし、西部のコマンチ族やシャイアン族はバッファローを狩りつくす白人を憎んでおり、開拓民が襲撃により殺されたりもしている。

サラ・ホワイトとアンナ・モーガンの略奪誘拐事件というのが起こり、のちにふたりは解放されるが、サラは積極的にインタビューに応じたりしたものの、インディアンの酋長と結婚していたアンナのほうは白人社会になじめず、精神を病んでしまった。

【第3部】人づきあい/子供時代/教育/教会

開拓民には突然やってきた知らない人も手厚くもてなすという、助けあいの習慣があった。地域には学校や教会があり、日々やることだらけの人々にとって、日曜はほんとうに休息できる日だった。いっぽう、開拓者はみんな苦労ばかりしてると思われているけど、楽しいこともたくさんあった、と記す女性も多く、じっさいにダンスパーティや綴りのコンテスト、人々による朗読会やお芝居などもひんぱんに行われていた。

【第4部】町/カウタウン/コミュニティ、ヴィクトリア

開拓者の町づくり(郵便局、新聞社、裁判所の設立、自警団の結成、選挙の運営などを含む)についての章。テキサスから牛をつれてくるカウボーイの話も登場。

また、英国移民が築いたヴィクトリアという町の話。英国のくらしをそのまま持ってきたはいいけれど、大草原の厳しい生活についていけない人が多く、町民の多くが英国に戻ったり、残った人も隣のヘイズに移動したりして、ヴィクトリアは1878年になくなってしまった(なんだそりゃ)。

【第5部】戦争/女性運動家

カンザス準州では奴隷制反対の組織が結成され、逃亡奴隷を受け入れていた。カンザスとミズーリの州境では、奴隷制反対派と支持派の対立がたびたび起き、1856年には、奴隷制に反対していたジョン・ブラウンの一派に報復すべく、ミズーリから支持派がオサワトミーを襲撃した。1861年にカンザスは自由州として合衆国に加入する。

その後、南北戦争時代には、南軍のゲリラ、クアントリルがローレンスの住民を虐殺する事件も起きている。

カンザスは合衆国ではじめて禁酒法をとりいれた州でもあり、カンザスの酒場になぐりこみをかけて、手にしたまさかりでバーをぶっ壊すという活動をしていたキャリー・ネイションが有名。

以上、こんな感じで、実際の開拓時代の女性たちの記録を通して、彼女たちの苦労や困難、それに立ち向かう強い精神力がびしびし伝わってきて、うわあ大変だなーと同情するとともに、人間そうそうへこたれないものだなと、なんだか元気がでます。

アメリカ中西部の「だいじょうぶ、なんとかなるさ、アッハッハー!」という精神はこういった開拓者たちのDNAを受け継いでるような気がしてきた。間違いないね…。

インディアンや奴隷制度反対派の話も興味深いので、もっと調べてみよう。

ちなみに本書は和訳も出ているようなので、興味のあるひとはぜひどうぞ。

パイオニア・ウーマン―女たちの西部開拓史』 ジョアナ・ストラットン著、井尾祥子、当麻英子訳、 講談社学術文庫
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Commented by めいぷる at 2013-11-30 05:04 x
こんにちは!
これは面白そうです。しかも文庫化までされているとは。
早速購入します。ほんと、いつも情報ありがとうございます。

私は(テレビでは)大草原の小さな家より前の、ララミー牧場とかジェミーの冒険旅行とかワイオミングの兄弟の世代なんですが(古っ)、西部劇見て育ったので西部開拓史興味あります。
よろしければぜひ面白い類書も紹介してください。よろしくお願いします。
Commented by rivarisaia at 2013-12-02 23:12
邦訳出てたのにあとから気づいてびっくりしました!

西部開拓史、なかなか興味深いですよねえ。この本は特に当時の女性を取り上げているところが、読んでいておもしろかったです。

英国移民が築いた町ヴィクトリアは、何だったのいったい…という感じでした(もうちょっとググってみようかしら)。

私は大草原の小さな家はTVも本も好きでしたが、そのあとTVでやってた西部方面のドラマはドクタークインかなー(あんまりちゃんとみてなかったけど)。ララミー牧場は知ってるけどジェミーの冒険旅行を知らなかった!

そういえば、先日図書館でチラッと見た本に、開拓時代の日本人移民のコミュニティの話が出ていて、それも気になるのでこんど調べてみますー。
by rivarisaia | 2013-11-29 22:35 | | Comments(2)