The Silver Linings Playbook(世界にひとつのプレイブック)

原作が大好きだったので、映画はかなりガッカリしたのですが、自分の中でほとぼりがさめてきたので小説の感想を。

映画もキャストはよかったのにな……。ラブストーリーとしてはべつに悪くなかったのかも。たぶん。でも小説のよかったところがほとんど無くなっていて、それはしょうがないのかもしれないけど、そこ変えちゃうのかーというションボリ感が果てしなかったです(小声で映画に文句も垂れちゃうけど、ほんとごめんなさい)。

『世界にひとつのプレイブック』(佐宗鈴夫訳)が集英社文庫から出ていますが、英語も難しくないから、英語版で読むのもいいかも。

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The Silver Linings Playbook』Matthew Quick著、Sarah Crichton Books

精神病院から出てきたばかりのパットと、同じように精神面で問題を抱えているティファニーのふたりが、友情を通じて人生を取り戻していく話です。

パットは4年間、精神病院に入っており、しかもそのあたりの記憶がない。奥さんとの間に何があって、どうして病院に行くことになったのか、パットが記憶を封じ込めているので、最後の最後になるまで、わたしたちにも、パット自身にもわからない。彼に記憶がないことはまわりの人も承知していて、だから家族はみんなすごく気をつかう。こうした時間のギャップからとんちんかんなやりとりが生じて、小説はパットが語り手となっているがゆえに、読んでるほうもパットの混乱を共有する感じで話がすすみます(ここ重要)

終盤近くで、ティファニー自身に何があったのか、パットに何があったのかを本人がそれぞれ認めることで、ふたりが心に負った傷が癒えてくる兆しを感じさせるんですよねー(映画だと、最初からペラペラしゃべっちゃう)

パットの父親は、家に帰ってきたパットとはまったく口を聞かない。そんな父と唯一交流がもてるきっかけとなるのがフットボールなのだった。

というわけで。

この小説のフットボール度はすごく高くて、フットボールがパットの人生に果たす役割もかなり大きい。新聞のスポーツ欄をだまって置いていくお父さんのエピソードとか、この不器用さがじんわりくる……わけですが、このフットボールの度合いの高さは米国ならではです。フットボールまるで興味ないとドン引くかもしれませんが、米国のフットボールバカはこんな感じなのか…と想像したらいいのではないかと思いますよ。

パットとティファニーもほとんど口をきかない。ふたりはそんなにしゃべってないし、すごく変な関係なのに、お互いに通じる部分があるというのがおもしろい。ダンス大会に出ることになって、そのあとあることのせいでふたりの友情は壊れてしまう。

こうした家族や周囲の人たちとパットのぎこちない距離をおいた関係が、ゆっくり時間をかけてだんだん近づいていくところが原作のよさです。パットと弟の関係もとてもよかったんだよなー。兄想いのいい弟じゃないか。

あと、もうひとつ好きだったのが、クリスマスにむかしの病院仲間ダニーと偶然再会する奇蹟のような場面。パットは自分の人生を映画に例えて生きてるんだけど、この再会シーンなんてとても映画的な展開だった(が、映画にはないの、残念ながら)。

ラストが本と映画だと大きく違っていて、パットは「ある人」と最後まで会わない。それを受け入れることができるようになって、彼は一歩前に進む。そして一度壊れてしまった友情も築き直そうとするのが清々しくてよかったのだ。雲のチャートがすごくよかった。

最後に、本をこれから読む人への注意として、『緋文字』『ベル・ジャー』『偉大なるギャツビー』『武器よさらば』『ライ麦畑でつかまえて』『ハックルベリー・フィンの冒険』などのネタバレが含まれてます。これらの本に対するパットの感想がとても愉快です。
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Commented by ずらっぺ at 2014-03-20 19:39 x
初コメ失礼します。
同感です!私も本の方が好きでした。
映画のデニーロの配役には驚きました。
全くイメージではなかったんですよ〜
デニーロは嫌いじゃないんですけどね。
Commented by rivarisaia at 2014-03-22 00:50
こんにちは!
本と映画は別物とはいえ、よかったところがごっそり無くなってたのがションボリ。

そういやデニーロのお父さん、なんと言うか、激しいキャラでしたね。お父さんこそ、セラピーに通ったほうがいいのでは…みたいな(笑)
Commented by minaco. at 2014-03-22 01:42 x
なるほどそうだったのか~と原作知らなかったので納得してしまいました。
映画は好評だけど、私的にはちょっと腑に落ちなくて…それがフットボールとダンス大会の件なんですけど、映画だとすごく取ってつけた感がして。

>パットの父親は、家に帰ってきたパットとはまったく口を聞かない。そんな父と唯一交流がもてるきっかけとなるのがフットボールなのだった

そういうことだったんですね。でもあのダンス大会はなんだったんだろう…
色々乱暴な勢いで突っ走っちゃった感じの映画だったんで、まあ違う意味で「混乱を共有」した気がしましたよ。
Commented by rivarisaia at 2014-03-22 19:03
映画は好評だったけど、個人的には『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』と同じくらい納得いかなかったです。まあ別物になっちゃうのはしょうがないとはいえ。

ダンス大会も本と映画では全然違うんですよ。ティファニーがダンスに情熱を賭けてて、手紙をエサにパットを引きずり込むんですけど、実際には映画のような形のコンテストとはまるで違うものだったことが発覚するの。なんであんな普通のダンス大会にしちゃったんだろう…。

ぜひぜひ機会がありましたら本もどうぞー。
Commented by minaco. at 2014-03-24 01:28 x
>ダンス大会も本と映画では全然違うんですよ

えええ、やっぱりそうだったのか~。映画でのあの大会、不自然ですごく引っかかってたんですよね。
確かに、納得いかない気持ちに納得ですw別物なのはわかるけど、中途半端にあちこち変更されると結果的に無理がありそう…
映画の記憶を一旦消してから原作を読んでみたいです。(脳内にデ・ニーロが出てきちゃう!)
Commented by rivarisaia at 2014-03-25 23:44
マジなダンス大会だったのにびっくりしたけど、もうその頃には何もかもがどうでもいい気分になってました…。

別物なのはいいんだけど、もっと良くできたはずなのになーというのが残念。映画の記憶をどこかにしまってぜひぜひ原作どうぞー!
by rivarisaia | 2014-03-19 21:21 | | Trackback | Comments(6)

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