A Constellation of Vital Phenomena

昨年話題になってた本なのですが、すばらしかったのでオススメ! 文章がとても美しく、心を掴む。これは邦訳出るといいなあ。

チェチェンの激動の歴史が背景にありますが、まったく知識がなくても大丈夫です(読了後に、詳しく知りたくなると思うけど)。

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A Constellation of Vital Phenomena』Anthony Marra著、Hogarth刊

2004年、ある雪の日の真夜中。チェチェンの小さな村で、8才の少女Havaa(ハヴァ)の父親がロシアの兵士に連れ去られ、家に火が放たれる。

Havaaは青いスーツケースひとつを持って、家の裏の森に隠れていた。その彼女を、近所にすむ父親の友人Akhmed(アフメット)が発見。アフメットはハヴァを助けるために、戦争で荒廃した町の病院で働く女医Sonja(ソーニャ)のもとに彼女を連れていく……


てっきりアフメットとソーニャは知り合いなのかと思いきや、初対面なのだった。じゃあ何故、ソーニャのことを知っていたのか。ソーニャは見知らぬ子どもなど預かりたくなかったのだけど、代わりに人手が足りない病院で働くというアフメットの申し出を受け入れる(アフメットは一応医者なのである。でも出来はよろしくなくて、むしろ芸術家としての才能があることが後にわかる)。

かくして、事件のあった雪の日の真夜中から五日間の出来事が語られます。

また、1994年から2004年の10年間の物語でもあります。

五日間に起きたことの合間に、過去の物語が挿入されるという構成になっていて、それぞれの登場人物に何があったのか、それぞれの人生がどのように交差していたのか、次第に明らかになっていきます。謎が解けていく後半に起こることは、まさしく奇跡のようです。

タイトルは、医学辞書の「Life:生命」の説明からきているのですが、この「Life」は同時に「人生」の意味でもあると思う。著者によれば、「Vital Phenomena」は六つの現象を指しているので、本書も6人の登場人物(以下)の視点で描くことにしたのだそうです(参照:Amazonの著者Q&A)。

Havaa:8才の少女
Akhmed: Havaaの父親の友人
Sonja: 町の病院で働くただ一人の女医
Natasha: 行方不明のSonjaの妹
Ramzan: 密告者であり、Havaaの父親の友人
Khassan: Ramzanの父親


誰もが、自分の行いに罪の意識を抱いていたり、心に傷を負っていたりするんですよね。私は登場人物のなかでも密告者であるRamzanがもっとも嫌いだったのに、どうしたことか彼の過去が語られる箇所で一番泣いた…。人間の弱さがえぐり出されるような場面だったからかもしれない。詳しくはここに書かないけど、RamzanとKhassan親子の関係性は、負の連鎖を断ち切ることの象徴を描いているのではないかという気がします。

息を吞むような長い長いセンテンスがあったり(特に10章の肖像画のくだり)、ユーモラスで笑っちゃう場面も多いです。切羽詰まった時にアホなことが起きたりもする("stupidity was the single abiding law of the universe")。

そして、とても切なく悲しい話だけど、時折ハッとするほど美しくて優しい。
これを人は希望と呼ぶんだな、きっと。
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Commented by fontanka at 2014-09-16 20:26 x
私は、2度アエロフロートに乗った事があります。(旅行)
一度は、劇場占拠事件のあとで、モスクワ地下鉄爆破より前。
二度目は、学校占拠事件があって2ヶ月とたっていない頃。
2回目のシェレメチボ空港のお店がすごく現代的になって、びっくりしました。
あと、セキュリティがものすごーーーくきびしくなっているようでした。
なんとなく重苦しい雰囲気の中で飛行機にのりました。
Commented by rivarisaia at 2014-09-18 18:29
ちょうどこの本の背景にも、その辺りの事件のことが出てくるんですよ。
シリアなどもそうだけど、紛争で街が壊されて、人の心も荒んでしまうのには
想像を絶する辛さがあるんだろうなと
なんともいたたまれない気持ちになります。
by rivarisaia | 2014-09-16 19:57 | | Trackback | Comments(2)

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