Pioneer Girl: The Annotated Autobiography:大草原の小さな家の誕生秘話

ローラ・インガルス・ワイルダーの「大草原の小さな家」シリーズとリンドグレーンの「やかまし村」シリーズは、子どもの頃の私のバイブルでした。何度読んでも飽きないし、嫌になった時や退屈した時の逃避先であり、ごっこ遊びの際のネタ元でもありました。

その「大草原の小さな家」が、どうやって世に生まれて、どこまでが実話なのか、それを詳しく詳しく研究したすっごい本がこちらです。

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Pioneer Girl: The Annotated Autobiography
Laura Ingalls Wilder著、Pamela Smith Hill編集、
South Dakota Historical Society Press

シリーズの元になったのは、ローラが書いた「パイオニア・ガール」という原稿でした。

本書はその「パイオニア・ガール」を丸ごと掲載し、ひとつひとつの出来事が実際にあったことなのか、脚色されたフィクションなのかを検証し、はたまた登場人物が実在の人物なのか、架空の人物なのかも調査し、さらには歴史的事実なども細かく教えてくれるし、写真も豊富という、まさに「大草原の小さな家」研究の集大成、といった1冊です。

よくぞここまで調べた、すごい!の一言。なにせ、本もデカいし厚いし、重い! こんなに大きな本だとは思わなかったよね……。

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寝っ転がって読んだりできない大きさ。そして注釈の情報量たるや、なかなか全部読み込めない。

とりあえずですね、「大草原の小さな家」の誕生秘話を語るイントロダクションだけでもぜひ読んでください。これまでもローズの伝記等でざっくり触れられてはいますが、本書のイントロダクションはかなり詳細に踏み込んでいます。

はじめはノートに手書きだったローラの原稿を、ローラの娘で作家だったローズが、文章を校正してタイプ原稿を作成し、エージェントに持ち込んだわけです。1930年の春のことでした。

ところが、これが全然売れなかった。

もともと「パイオニア・ガール」は大人向けに書かれたもので、雑誌の連載として売り込もうともしたんだけれども、それもうまくいかず、そこでローズは少年少女向けバージョンを作成し、それを Knopf社の担当者に見せます。すると、Knopf から、8~10才の子ども向けに書き直せば出版できるとの返事が!

ところが出版契約を結ぶ直前、折しもの不況で Knopf の児童書部門の廃止されることになってしまいます。しかし Knopf の担当者が、Harper社の児童書の担当者に原稿を渡してくれたことで、無事 Harper & Brothersから出版が決まったのでした。初版は1932年4月6日に出版されました。

整理すると「パイオニア・ガール」の原稿には5つのバージョンがあります。

(1) 手書きの生原稿
(2) Brandt & Brandt ver.(ローズがタイプしてエージェントに渡したもの)
(3) Brandt & Brandt 校正バージョン
(4) Juvenile バージョン(ローズが作成した青少年版。これを元に現「大草原」シリーズが書かれた)
(5) George T. Byeバージョン(Brandt & Brandt の修正版)

驚いたのはローズの仕事っぷりです。ローズは小説も書いていたけれど、マーケットに合わせて事実を大胆に脚色した「ノンフィクション」も書いてた。ただそのノンフィクションでは、実在の人物の名前や職業だけでなく、性格まで変えちゃったり、ということを平気でやってた。

いいのか、それは……よくないだろ、という感じですが、当然ながらヘンリー・フォードやチャップリンは事実と違うことを書かれて激怒。本が出版できなくなったりもしたみたい。

でも逆に「大草原〜」は、そんなローズの大胆な編集手腕があったから日の目を見たのかもしれません。ローズの腕前はノンフィクションには向いてなかったけど、事実をもとにした読ませるフィクションには向いていた。

出版が決まってから、ローラ自身も、自分の家族の話を元にしたあくまでも「子ども向けのフィクション」という姿勢で書いているので、適切じゃない事柄はさっくり消したりしてますし、複数の人物を合体して一人のキャラクターを生み出したりもしてます(例:ネリー)。

オリジナルの「パイオニア・ガール」自体は、確かに出版がなかなか決まらなかったのもう頷ける内容で、はっきりいうと面白くないのです。でも、このオリジナル原稿が、内容も文章も推敲されて今も世の中に存在する「大草原〜」シリーズになったことが感慨深いし、何より本書が大変に興味深いのは、繰り返しになりますが、オリジナル原稿に対するおびただしい注釈です。

ローラの一家だけでなく、彼らを取り巻くさまざまな人々の人生も追っかけており、庶民の視点でアメリカ西部開拓史を知るのに最適な1冊にもなっている。というか、アメリカの西部開拓史がこんなに身近に感じられる本もなかなかないので、興味のある人はぜひどうぞ。

<おまけ>
日曜日に読むことが許されていた、父さんの本「動物の世界の神秘」は、今ではデジタルで中ページが見られます! デジタルの世界すごいね!

『THE POLAR AND TROPICAL WORLDS』という本で、コチラどうぞ。

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Commented by fontanka at 2015-12-31 16:15 x
よいお年を
Commented by rivarisaia at 2016-01-02 01:42
fontanaさんにとっても
よい1年になりますように!
by rivarisaia | 2015-12-26 18:28 | | Trackback | Comments(2)

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