At the Existentialist Café:実存主義の哲学者たちの思想と人生がつまった1冊

ここ数ヶ月で読んだ本の中で、到底自分に理解できたとは思えないんだけれども、非常に興味深く、これだけ多岐にわたる内容を1冊にまとめあげた著者に感服するし、折に触れて何度か読み返したいのがこちらです。哲学の思想と哲学者の伝記と近代史が合体したような本。

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At the Existentialist Café: Freedom, Being, and Apricot Cocktails with: Jean-Paul Sartre, Simone de Beauvoir, Albert Camus, Martin Heidegger, Edmund Husserl, Karl Jaspers, Maurice Merleau-Ponty and others』Sarah Bakewell著、Chatto & Windus

タイトル、おそろしく長いですね。『実存主義者のカフェにて:自由と存在とアプリコットカクテルを、ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、アルベール・カミュ、マルティン・ハイデッガー、エトムント・フッサール、カール・ヤスパース、モーリス・メルロー=ポンティらとともに』というのが直訳。

1933年、パリ。モンパルナスのカフェで、3人の若者がアプリコットカクテルを前に集っていた。その3人とは、ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、レイモン・アロンである。この時に生まれた新しい思想は、やがてパリから世界中に広がり、第二次世界大戦のレジスタンスを経て、戦後の解放運動、学生運動や公民権運動へとつながっていく。

こうした歴史的背景をふまえつつ、本書はサルトルとボーヴォワールを中心に、ふたりをとりまくおびただしい知識人たちの思想と人生を描き出していきます。

どのような人物から、なぜそういう思想が生まれたのか、時代によってその人の考え方がどう変わっていったのかをざっくりと把握でき、ヨーロッパの実存主義の系譜を俯瞰するのにとてもよい入門書です。

なにより、思想部分は難解だとしても、人物のエピソードがどれも面白い。かなりたくさんの人々が出てくるので覚えきれないんですが、とりわけ印象に残っているのがベルギー人の哲学者ファン・ブレダの話。フランシスコ会の司祭でもあったファン・ブレダは、45000ページものフッサールの原稿をナチスの検閲をかいくぐって安全な場所に持ちだすのですが、それが今もルーヴァン大学に残るフッサール文庫なのだった。短いエピソードながら、手に汗にぎる! 映画化してもいいくらい。

同じくフッサールにまつわる人物で、エーディト・シュタインと姉のローサも哀しくて心に残る。ユダヤ人だけれどカトリックに改宗し、カルメル会の修道女で哲学者だったエーディト・シュタインは、同じくカトリックに改宗していたローサとともにアウシュビッツで亡くなっています(エーディト・シュタインはのちに列聖されている)。いっぽうでハイデッガーときたら!

カール・ヤスパースのかっこよさも記しておこう。妻がユダヤ人なので大学を追われたヤスパースは、妻の引き渡しを自宅に立てこもって断固拒否。いよいよふたりとも収容所送りに……というタイミングで連合軍に救われるのだった(なのにハイデッガーときたらさー)

本書のおかげで、エーディト・シュタインやヤスパースの著作も読んでみようかなという気になっていて、あ、その前にボーヴォワール著作集も読まなくちゃ!



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by rivarisaia | 2016-08-31 23:20 | | Trackback | Comments(0)

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