White Trash

先月はこんな本も読んだのだった。タイトルがズバリ「ホワイト・トラッシュ」(直訳すると白人のクズという意味)という歴史書。

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White Trash: The 400-Year Untold History of Class in America』Nancy Isenberg著、Viking

英国がジェームズタウンに最初の植民地を作った時代から現代にいたるまで、社会的階級の観点からみたアメリカの詳細な歴史。著者はルイジアナ州立大学のアメリカ史の教授。

ネイティブアメリカンや黒人の歴史に関する本はいろいろ出てるし、マイノリティが抱える社会的な問題についても語られることは多かったけど、アメリカの白人貧困層に関しては、白人はマジョリティだし人種問題のほうを優先していて、じっくり考えてみたことはなかった。

英国と違って階級制度はないと思われがちなアメリカにも、それはしっかり存在しており、雑な言い方をすれば、新大陸という「不毛な土地」にイギリスが最下層に位置する不要な人間をどんどん送り込んだ植民地時代に端を発する。そこに、奴隷制度などから生じた人種問題、優生学、キリスト教的思想が絡まり白人優越主義が生まれるけど、しかし南部の貧乏白人はある面においては長らくアフリカ系の奴隷以下の状況だったりもした。

歴史を振り返ると社会の下層に位置する人々はどこの国も似たような状況で、アメリカの白人貧困層が特別ではないんだけども、改めて19世紀から20世紀初頭の、sandhiller や clay-eater と呼ばれていた彼らの状況もやはりひどくて、1913年に撮影された、一般的な白人青年と貧困層の青年の写真を比べると身長や体格や顔つきからして衝撃的に違う。女性や子供の立場も悲惨きわまりない。ちゃんとした家庭の人間は子供をたくさん産むべきだけど、「価値のない階層」に属する南部の白人は優生学的視点から避妊手術をするべきともされた。そんな時代があった。

近年になっても、「田舎の学のない貧しい白人階級」としてある種のステレオタイプに押し込められ、メディアなどでも揶揄されることが多く、経済的な点においても自分たちが陥っている現状から抜け出すことはなかなか難しい。

こうした流れをふまえると、白人貧困層の怒りや無力感もわからないでもない。だけれども、マジョリティである白人だって貧困層はマイノリティよりひどい立場にあるのだとか、マイノリティのほうが優遇されているではないか、など、どちらが悲惨かという不幸自慢のような方向にいくのは間違ってる。

著者は結びで、これまで米国社会は「私たちとは違う」として白人の貧困層を見て見ぬふりをしてきたけれど、「彼らは私たちなのである」と書く。教科書に名前が残るのはエリート層だけど、いつの世も名もなき農民や労働者層が国を支えてきた主体であって、ときどき政治は社会の大半を占めるそうした層のことを置いてけぼりにしてしまう。これもアメリカに限ったことではないですね。


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by rivarisaia | 2016-12-08 21:53 | | Trackback | Comments(0)

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