The Nix

評判が良くて気になってた本ですが、すごく面白かった! これは必ず邦訳出るはず。

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The Nix』Nathan Hill著、Picador

作家…といっても全然本書けてない Samuel(サム)は田舎の大学で教師をしている冴えない男で、オンラインゲームにはまっている。

ある日、サムが子供の頃に家族を捨てて失踪していた母親の Faye が事件を起こし、インターネットやニュースメディアの注目の的となる。高校時代の初恋の人と結婚したごく普通の田舎の女性だったはずの母親は、メディアによれば、60年代には過激なヒッピーで売春婦だったというのだ。

職場では厄介な教え子とのトラブルを抱え、おまけに出版エージェントから多額の前払い金の返却を求められて後がないサムは、”時の人”となった母親の本の執筆をエージェントに確約して挽回しようとするが……。

若かりし日の母親の秘密を探る物語は、サムの父親のHenry、オンラインゲーム仲間のPwnage、サムの子ども時代の友人Bishop、Bishopの双子の妹でヴァイオリンを弾くBethanyなど、さまざまな人々の物語と絡みあいながら、サム自身の過去と現在、そしてノルウェーからアメリカに渡った祖父の過去へとつながっていきます。

章ごとに中心人物と時代が変わり、ウォール街デモが行われている現代のアメリカ、50~60年代の中西部、80年代のサバービア、1968年のシカゴ民主党大会、そして第二次世界大戦前後のノルウェー、と読者はあっちに飛んだり、こっちに飛んだりしながら、笑ったり、やるせない気持ちになったりしつつ物語を追いかけていくうちに、最初は断片的だったエピソードが最後にはぴっちりとはまって壮大な絵巻物が完成しているし、クセのある登場人物全員がとても愛すべき人々になっている(イラつくキャラもなぜか許せる)。

タイトルの「Nix」は、最初は60年代あたりのスポーツか何かのグループの名称?と勝手に思ってたんですけど(だって、野球チームとかにありそう)、ノルウェーはじめスカンジナビアの民話に登場する水の精霊で、人を魅了して水中に引き込んでしまう。ヴァイオリンを弾いて人を惹きつけるとも言われているようですが(だからベサニーが弾くのはバイオリンなのかな)、本書では「最も愛しているものに、最も深く傷つけられる」というメタファーにもなってます。

『The Nix』はメリル・ストリープ主演でドラマ化の話も出ていて、本の内容からして映画向きではないので、ミニシリーズだったらいいかも。配役をあれこれ想像して、しばらく楽しめそうです。ふふふ。


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by rivarisaia | 2016-12-26 19:27 | | Trackback | Comments(0)

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