こころに剣士を

新年の初映画館は、エストニアの話。2015年にエストニア旅行を思い出しつつ。

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こころに剣士を(The Fencer)』監督:クラウス・ハロ

1950年初頭、エストニア。

田舎町ハープサルの小学校に、体育教師として元フェンシング選手のエンデル・ネリスがやってくる。

校長から運動クラブを開くよう指示され、フェンシングを教えることにしたエンデルだが、もともと子どもが苦手だったこともあり、はじめはなかなか上手くいかない。しかし、フェンシングに夢中に取り組む子どもたちを教えているうちに、エンデル自身も変わっていく。

レニングラードで開催される全国大会に出場したいという子どもたちの願いを叶えたいエンデルだったが、しかし彼はソ連の秘密警察に追われている身であった……

エンデル・ネリスは実在の人物で、彼が作ったフェンシング部は今も存続しているとのこと。物語的には予想外のことは起こらないのですが、そこがよいです。フェンシング、身体の動きがとても美しいスポーツで、私も一度やってみたい!

第二次世界大戦中、はじめはソビエト、次にナチス・ドイツに占領されたエストニアは、その後ふたたびソ連に占領されます。戦争中ドイツに徴兵され、生き残った人たちは、ソ連政府によって強制収容所送りとなったのでした。この時代は息の詰まるような暗黒の時代。

ようやく戦争が終わったあとのソ連時代が灰色の恐怖の時代だったというのは、そういえば街中の観光パンフレットでも切々と訴えられていたし、KGB監獄博物館では強制収容所に関する特設展示があったことも、映画を観ながら思い出しました。

秘密警察にある日突然家族が連れ去られたりする、暗い時代に生きる子どもたちにとって、エンデルが教えるフェンシングは希望の光であり、最後の最後に行われる試合は、大きなソ連に立ち向かう小国エストニアを象徴しているようで、私はちょっと泣いてしまった。そんなエストニアは1991年に独立して、長く苦しい時代に終わりを告げています。

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Commented by fontanka at 2017-01-11 22:34 x
あ、すごく良い映画っぽい。
でも先生が心配で、ずっとドキドキしてそう
Commented by rivarisaia at 2017-01-12 14:53
これは最初から最後までなかなか良い映画で、ドキドキするけど不安よりも「がんばる!」という気持ちになるほうが強いのでおすすめですよー。
Commented by 古島 at 2017-04-14 21:01 x
久しぶりの書きこみです。この作品、わが市の映画館でも上映されるようです。今日、買い物していて偶然ポスターを見かけまして。うれしいです。

刀剣が持ち主の生死をかけてぶつかり合う場面は、ほぼなくなりました。しかし、剣術はスポーツとして健在。すばらしいことです。数百年前の剣士たちも、いまのフェンシングを見たら満足・・・・・・と言いますか安堵するでしょう(まずは技術の進歩に驚くでしょうけれど)。
Commented by rivarisaia at 2017-04-16 23:48
お久しぶりです。常々映画を観るたびに東京だけの上映で終わってしまうともったいないなーと思うのですが、お近くでも上映されるんですね、よかったです!

スポーツとしての剣術(フェンシング)は、美しい動作を見ているとバレエやダンスにも通じるものがあって、そこが剣で戦う時の動作とはおそらく全然違うものなんだろうなと思います。数百年前の剣士の人たちも、実戦とは別に、剣舞のような練習をしたかもしれないですね。
Commented by 古島 at 2017-05-11 18:47 x
みてきました。やや短いですが、良い作品です。
古代ギリシャの武人は、しばしば踊ったそうです。レウクトラの英雄エパミノンダスは舞踏の名手としても知られていたそうで。でもこれは軍事訓練の一部でもあったらしく。
踊りが純粋に人を楽しませるものになるのはもう少し後でしょうね。現在の優雅な踊り手を見ると、遅く生まれた幸運を感じずにいられません。
Commented by rivarisaia at 2017-05-13 00:18
話の展開がなんとなく読めてしまうのですが、それでもまったく構わないというか、かえってしみじみと鑑賞することができた作品でした。

軍事訓練と舞踏といわれて思い出しましたが、ハンガリーのヴェルブンク(Verbunk)という舞踊があるのですが、楽しく踊ることで募兵するというもので、このステップや動きがすごく楽しいんですよー。YouTubeで検索するといくつか見られると思いますので、ぜひ見てくださいー。

武術と踊りはまったく違うもののようでいて、身体のしなやかな動きで成り立っているので共通点も多いですね。
Commented by 古島 at 2017-05-24 22:47 x
情報ありがとうございます。Verbunkみてきました。なんと軽やかな。
古代ギリシアの兵士たちは、どんな踊りで鍛錬していたのでしょう。もう、想像しかできません。・・・・・・・案外、筋骨隆々の兵士は少なかったかもしれませんね。花車だけど素早いタイプの青年が高く評価されたのでは。
Commented by rivarisaia at 2017-05-30 17:59
見ていて楽しいステップですよね。あんな風に軽やかに動けたらきっと楽しいでしょうねえ。古代ギリシアの兵士も、ある程度筋肉があってたくましくても、身軽に動けたのでは?と想像してしまいます。
Commented by 古島 at 2017-05-31 22:41 x
古代のギリシア人がスポーツに凝ったのは、そのへんが理由かもしれませんね。強くて速い人間の育成。当然困難です。

思い出したのですが、滝沢聖峰というひとが
「ウクライナ混成旅団」
という漫画作品を描いていまして。これにバルト三国出身のドイツ兵が出てくるのです。東欧の複雑な歴史が垣間見えました。
Commented by rivarisaia at 2017-06-02 00:44
『ウクライナ混成旅団』ってタイトルだけ見たことあるような気がします。バルト三国のドイツ系の人は、もともとドイツ騎士団を祖先に持つ人たちなのかしら。当たり前といえば当たり前なんですけど、バルト三国もそれぞれの国で歴史が全然違うので、一度どこかで歴史のおさらいをして頭を整理したいです(ついでにプロイセンとかダンツィヒとかもごっちゃになってきています)
by rivarisaia | 2017-01-10 18:49 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(10)

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