「ほっ」と。キャンペーン

沈黙 —サイレンス—

遠藤周作の『沈黙』をスコセッシが映画化すると耳にしてから長らく楽しみにしてたけど、待った甲斐があったとはこのこと。『ディパーテッド』よりも断然こちらのほうが素晴らしいと思ったけど、カトリックの信仰というテーマ的にアカデミー賞は難しいかなという気もするので、ノミネート数少ないのはなんか納得。

2時間40分ですが、長さは感じませんでした。上映時間と拷問描写にひるまず、できれば観たほうがいいですよー。現代の日本でもじゅうぶんあるある、と思い当たるあれやこれやに愕然とするけど……。

b0087556_16100838.png
沈黙 —サイレンス—(Silence)』監督:マーティン・スコセッシ

キリシタン禁制の日本に潜入したポルトガル司祭が、残忍な拷問にかけられ殉教していく日本の信徒らの姿を目にして、「これほど酷いことが起きているのに、神はなぜ、沈黙しているのか?」と苦悩し、ついに……という物語で、「神は決して沈黙しているわけではない」というのが大きなテーマです。

常日頃「日本人は宗教に寛容」という言葉を見聞きするたびに、ちゃんちゃらおかしいと笑っちゃうのですが、経験からいっても寛容なんてことはあまりなくて、はっきりいえば往々にして節操ないし、配慮に欠けてることが多い。

それをそのまま体現したかのような存在が、本作の奉行(イッセー尾形)と通辞(浅野忠信)です。

「ひとこと転ぶといえばよいのだ」「ほんの形だけ踏めばよい。形などどうでもよいことではないか」と、時にへらへらと笑顔で迫ってくる奉行と通辞の姿は、寛大なようでいて実際には非常に酷なことをやっているわけですが、過酷な拷問を目にした私たち観客も、「形だけだから、頼むから踏んでください!」とつい思わされてしまう。

農民を拷問にかけたり、あの手この手で司祭に棄教を迫ったりする場面も心が痛いのですが、グサッと刺さったのは、「日本は沼だから、根は腐って、花も咲かない」というセリフ。これ信仰の話なんですけど、よく考えてみると信仰だけじゃなくない? デザインに対する考え方とか、基本的人権とか、教育の重要性とか、いろんなことに対していまだに沼すぎるのでは……? 大丈夫?(震え声)

オープニングとエンディングで虫の声がするのですけれども、オープニングでは静寂を感じて、エンディングではああ神はそこにいるんだなと感じました。これは人によって捉え方が違うんだろうな。

さて、主演のアンドリュー・ガーフィールドは、最初に配役を聞いたときには若すぎるのではないかと不安でしたが、揺れ動く若い司祭としてピッタリだったし、そのほかのキャストも全員がはまっていました(特に、塚本監督)。異国の監督が台湾で撮影しても、こんな圧倒的な時代劇が撮れるのね。

原作の力と映像の力があわさって、鮮明に迫ってくる作品ですが、あくまでフィクションなので、史実やカトリックの教義と混同しないほうがよいかも。これから原作を読む人は、最後のめっちゃ読みにくい「切支丹屋敷役人日記」もがんばって読んでね!(あの部分とても重要なのに読まれない……と遠藤周作が嘆いてるインタビューどっかでみた)

『潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆』(大橋幸泰著、講談社選書メチエ)を読むと、フィクションで描かれてるイメージとはまた違った実像が見えて、大変興味深いのでおすすめです。

しかし他人が大切にしていることに対して、自分のものさしで遠慮なく踏み込んでしまうことは、意図せずとも誰もがやりがちではあるし、私もやりかねないのでじゅうぶん気をつけないといけないなー。



[PR]
Commented at 2017-02-01 20:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by rivarisaia at 2017-02-03 23:14
映画、なかなかよくできているので、おすすめ。潜伏キリシタンに関しては、明治期の迫害も深刻で、ある意味江戸時代より酷いかも...と思いました。くだんの『潜伏キリシタン』を読むと、島原の乱も単純なキリシタン一揆だったのではなく、実際には混成集団による一揆だったために事態が複雑になった経緯がわかりますよー。
Commented by fontanka at 2017-02-05 18:37 x
「潜伏キリシタン」今、図書館に予約しています
Commented by fontanka at 2017-02-08 22:37 x
夫が見に行ってきました。良かったそうです。
Commented by rivarisaia at 2017-02-10 17:54
『潜伏キリシタン』そのうち感想お聞かせくださいー。そうそう、映画は最初は3時間以上ある噂も聞いたので、将来ディレクターズカット版が出たりするのかしらーとちょっと楽しみにもしています。
by rivarisaia | 2017-02-01 16:24 | 映画/日本 | Comments(5)