All the Birds in the Sky
2017年 02月 16日
表紙がとても気になって読むことにした本。ちょっとシュールで変わった話で、万人受けはしなさそうだけど、私は好き。
『All the Birds in the Sky』Charlie Jane Anders著、Tor Books
パトリシアは、6才のとき、傷ついた小鳥を助けようとして動物と話せることに気づき、自分にはどうやら魔女の素質があるらしいと知る。
ローレンスは、サイエンス・ギークの天才少年で、家に閉じこもってコンピュータの前で過ごしてばかりいるので、両親から心配されている。
友だちのいないふたりは、あることをきっかけに仲良くなるが、ローレンスがパトリシアの能力を目のあたりにした日から、ふたりの関係はぎくしゃくしはじめる。ローレンスは彼女を避けるようになり、友情にはヒビが入ったまま、ふたりは別々の道を進むことになった。ローレンスはサイエンススクールに進学し、パトリシアは知られざる魔法学校へ。
そして月日は流れ、大人になったふたりはサンフランシスコで偶然再会する。
その頃、あちこちで気候変動による大規模な災害が増加していた。ローレンスは、地球を救うための科学的な解決策を探るべくシンクタンクで働いており、パトリシアは魔女のコミュニティの一員としてひっそりと人助けをしていた。
しかしやがて世界は滅亡へと進みはじめる……
とまあ、こんな調子の話で、こうやってざっと書くと、さして変でもない、よくある話のような気がするけど、このストーリーの枠組みのあちらこちらにヘンテコ要素が挟まれているので、全体的になんとも奇妙な雰囲気を醸し出しているのだった。
たとえば。
小鳥を救うためにパトリシアが向かった、「鳥の議会」が開かれる森の奥の「The Tree」。そこで提示される「Endless Question」。ローレンスが作った「2秒間タイムマシン」。ふたりの命を狙う「名も無き暗殺団」の男。意志を持ち始めるAI。寂れたモールにある秘密の古本屋、魔法の代償……
物語の前半と後半ではトーンもがらりと変わる。ファンタジーっぽい児童書のような、どちらかというとほのぼのしたところの多かった前半とはうって変わって、後半はロマンスもあるけれど、SF、ディストピア、バイオレンスの色合いがより濃くなる。この展開にとまどう人もいそうだし、盛りだくさんなヘンテコ要素にどんな必然性が?と首かしげてしまう人もいそう。この本に向いてる人は、この点を楽しめる人。
パトリシアは自然(ネイチャー)、ローレンスは科学(サイエンス)を象徴していて、自然と科学は対立することも多いけど、互いに協調しないと地球/人類は救えない、というのが全体のテーマ。後半はかなり酷いことがたくさん起こるけれども、希望を感じさせる終わりかた。このあと、世界はどうなったのかなー。
by rivarisaia
| 2017-02-16 21:16
| 本
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