Days without End

2016年コスタ賞大賞受賞作で、今年のブッカー賞ロングリスト入り。今年はけっこうブッカー賞リストの本を読んでいる……ような気がする。この本、なかなかよかったです。

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Days without End』Sebastian Barry著、Viking

19世紀半ば大飢饉に襲われたアイルランドから、カナダ経由でアメリカへ渡った17歳の Thomas McNultyが主人公。ゴールドラッシュからインディアン戦争、そして南北戦争のアメリカを生きたトーマスの半生を描いた話。語り手はトーマス。

ちなみに McNulty という姓の人々が、著者の他の本にも登場するんだけど(私は何冊かあるうちの『Secret Scripture』しか読んでない)、本書のトーマスはそんな McNulty家のご先祖のひとりだそうです。

家族も失い、命からがらアメリカへやってきたトーマス。時代はゴールドラッシュで、彼は女装して酒場で坑夫の男たちのダンスの相手をする仕事につく。その時に一緒に職にありついたのが、マサチューセッツから飢饉を逃れてやってきた John Cole だった。ジョンはトーマスにとって、唯一無二の親友、生涯愛する人、強い絆で結ばれた戦友となる。

成長して見た目が女として通用しなくなると、トーマスとジョンは軍隊に入り、インディアンとの戦いに赴く。血みどろの虐殺が行われ、インディアン側も騎兵隊側も容赦なく殺戮され、大自然は猛威をふるい、過酷な日々の連続。これはほんとうにつらい。

そんななか、彼らはわけあってスー族の少女ウィノナと暮らすことになる。軍隊を退き、新しい生活をスタートさせ、ウィノナはやがて娘のような存在になっていく。

しかし楽しき日々は南北戦争が勃発して終わりをつげた。トーマスとジョンは北軍に入隊、再び血なまぐさい戦いに巻き込まれていくのだった。

その後も彼らの人生は山あり谷ありで、そんなにページ数の多い本ではないのに、振り返れば最後まであまりに波乱万丈で、でも最後は希望の光が射している。

『Secret Scripture』では、アイルランドの歴史に翻弄された女性の人生を描いていたけれども、本書も主人公とともに、アイルランド移民、インディアン戦争、南北戦争という激動のアメリカ史をたどっていく。ただ、トーマスには歴史に翻弄されたという感じがあまりしない。

女性の格好でいるほうがしっくりくると感じているトーマスは、暴力にみちたマチズモ的な世の中に身を置きながらも、愛するジョンとともに平穏に暮らそうとする。ごく自然の成り行きなので読んでる最中はまるで気に留めてなかったけど、よく考えてみれば、今よりも自由が制限されていたとされる時代に同性カップルが家庭を築く話でもあった。

著者はこの本をゲイであることをカミングアウトした息子に捧げている。そのあたりはガーディアンの記事に詳しいので、参照までにどうぞ。そして今更気づいたけど、だから虹がかかってる表紙デザインだったりしたのかな。




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by rivarisaia | 2017-09-05 18:53 | | Trackback | Comments(0)

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