人気ブログランキング | 話題のタグを見る

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

Killers of the Flower Moon:ネイティブアメリカン連続殺人事件のノンフィクション

1920年代に起きた、オーセージ族の連続殺人事件を扱ったノンフィクション。本として良いかどうかという以前に、事件を全然知らなかったこともあって、あまりにも衝撃的な事実に呆然とした。

Killers of the Flower Moon:ネイティブアメリカン連続殺人事件のノンフィクション_b0087556_21571023.png
Killers of the Flower Moon: The Osage Murders and the Birth of the FBI』David Grann著、Doubleday

先祖代々住んでいた土地を白人に奪われ、居留地に押し込められたというのが、ネイティブアメリカンの歴史なのだけれど、オーセージ族もオクラホマにある居留地に強制的に移住させられていた。不毛と思われたその土地には豊富な石油資源があることが判明する。その資源の所有権はオーセージ族にあり、それゆえに1920年には、オーセージ族はかなり裕福な部族となっていた。

そしてその頃、オーセージ族の人たちが次々と不審な死を遂げるようになる。

ある者は射殺され、またある者はナイフで刺され、それから毒を盛られたり、家ごと爆薬で吹き飛ばされたりと、オーセージの人たちがどんどん殺されていく。オーセージ族は私立探偵を雇い、真相を究明しようとするもうまくいかない。オーセージに手を貸そうとした白人男性も、あるとき忽然と姿を消して死体で発見されるという有様だった。

恐すぎるんですけど。一体どういうことなの。

何人もの謎の死。誰も信用できず、途方にくれたところで頼みの綱となるのはFBIの前身である捜査局。若き日のJ・エドガー・フーヴァーは元テキサスレンジャーのトム・ホワイトをはじめとする潜入捜査官を現地に送り込む。

知名度をあげて組織を拡大するためにも、とにかく手柄がほしかった捜査局にしてみれば、全米でも注目されていたこの一連の謎の殺人事件はうってつけだった。

潜入捜査の甲斐があって、捜査局は24人の連続殺人事件として犯人逮捕に成功する。最初から怪しまれていた人物なので書いてしまうけど、オーセージ族の女性と結婚した白人男性とその親戚、オーセージ族の後見人として財産を管理していた者が、財産を手に入れるために殺害に手を染めていた。では、彼らはどうしてそれまで捕まらなかったのか。簡単にいうと町の有力者だったから。

これで一見、事件は解決したようにみえるんだけど、実は24人以外にも、殺された人たちはまだまだたくさんいて、それらは未解決のまま放置された。とりあえず大きな事件を解決できた捜査局には、それ以上の捜査を続ける気はなかった。それがなんともやりきれない。

著者は残された資料にあたって未解決になっている殺人事件の犯人にあたりをつけたりもするんだけど、それも氷山の一角だし、今となっては全貌を解決するのはもう難しい。残りの真相は永遠に闇の中だ。

このノンフィクションは、マーティン・スコセッシとレオナルド・ディカプリオで映画化の予定があるそうだけど、どの視点からどんな風に映画化するんだろう。この本は、『花殺し月の殺人――インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』というタイトルで早川書房から今月には邦訳が出るそうなので、興味のある人はどうぞ。

by rivarisaia | 2018-05-09 23:23 | | Trackback | Comments(0)