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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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Lullaby(邦訳:ヌヌ 完璧なベビーシッター)

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Lullaby』Leïla Slimani著、Sam Taylor訳、Faber & Faber

“The baby is dead.” という文章で物語は始まる。

パリのアパルトマンでふたりの幼い子どもが殺される。発見したのは母親。犯人はナニーのルイーズだった。いったいなぜ彼女は犯行におよんだのか。

ルイーズ自身も自殺を図っていて、命は助かるものの意識不明の重体で、動機は謎に包まれたまま。そして、そこから話はぐんと過去にさかのぼり、ミリアムとポールという若い夫婦がナニーを探そうとするところから、ルイーズが雇われることになり、やがて惨劇にいたるまでの日々が描かれていく。

子どもを産んだあと専業主婦だったけれど、社会から取り残されたような焦燥感があり、仕事に戻ることを決めたミリアム。そんな彼女にとって、そして夫のポールにとっても、文句も言わずに子供の世話や家事をしてくれるルイーズは完璧な存在で、次第にルイーズなしでは生活が立ち行かなくなっていく。

しかしルイーズは家族の一員のようでいて、やっぱり家族ではないのだった。夫婦にとってルイーズは便利な存在で、でもときどき鬱陶しい存在でもある。それが態度に表れる。

いっぽうのルイーズも、他人の世話はできても、肝心の自分の人生を送れていない。徐々に明かされていく彼女の過去を見ると、ナニーとしての人生と、私生活のギャップがあまりに大きくて、このズレが彼女の精神を引き裂いていったのではないかという気もする。金銭面での問題も発生し、居場所のない彼女はどんどん追い詰められていく。

殺害の動機は最後まではっきりしない。ただ、いくつもの要因が積み重なった結果として起きてしまったことで、どこでどうすれば防げたのか、と考え込んでしまった。

何年か前にアメリカで起きた事件を思い出してしまったんだけど、著者はその事件にインスパイアされてこの小説を書いたとインタビューで語っていました。


Tracked from じゅうのblog at 2020-05-07 21:19
タイトル : 『ヌヌ ― 完璧なベビーシッター』 レイラ・スリマニ(著..
フランス人とアルジェリア人の間に生まれた母とモロッコ人の父をもち、モロッコ生まれで、フランスに移住して活躍する作家・ジャーナリスト「レイラ・スリマニ」の長篇ミステリ作品『ヌヌ ― 完璧なベビーシッター(原題:Chanson douce)』を読みました。 [ヌヌ ― 完璧なベビーシッター(原題:Chanson douce)] 「モーリス・ルブラン」、「オーギュスト・ル・ブルトン」、「ジュール・グラッセ」、「ジョルジュ・シムノン」に続き、フランス作家の作品です。 -----story--------...... more
by rivarisaia | 2018-05-30 01:10 | | Trackback(1) | Comments(0)