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ベニスに死す

夏も後半に突入ですね。夏といえば海。海といえばひと夏の恋。恋のお相手は美少年、ですよねー!

私にはお盆休みも何もナイのでテンション上げてみました。

夏、海、恋、美少年、この4テーマを満たす映画と来たら、これしか考えられません。ルキノ・ヴィスコンティ(Luchino Visconti)監督の『ベニスに死す(Morte a Venezia)』1971年制作。
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あらすじは言わずとしれた「夏にベネツィアの海岸で、美少年に恋心を抱く中年男性の悲哀」です。若さと老い、美と残酷、官能と堕落、といくらでも語れそうな名作映画ですが、その辺りは評論家にお任せすることにして、「美少年」の部分に注目してください。

「美少年」って言葉は存在するけど、これぞ美少年って存在しないよねー、などとヴィトゲンシュタインの哲学ですか?というようなことを言っていた若かりし時代(必修の哲学の授業でヴィトゲンシュタインを読まされてた)、映画館でこの作品を観ました。

初ヴィスコンティ。これをきっかけに耽美でデカダンなヴィスコンティ・ワールドにずぶずぶハマることになりますが、それはまた別の話です。

中年男がベネツィアで出会った、蜂蜜色の髪で「甘美な、神々しい真剣な表情」をした「もっとも高貴な時代のギリシア彫刻」を思わせる少年、それが14歳のビョルン・アンドレセン演じるタッジオ少年なわけですが、この「ヒヤシンス・カール」の少年がスクリーンにドドーンと大写しになった瞬間、

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        オ、オスカルの子ども時代のモデル?
        というか、まさに「美少年」現れたり!

と衝撃のあまり椅子からずり落ちそうになりました。それ以前にちらっと写真だけは目にしてたと思うんですけど、スクリーンで見ると発散されてる至高の美オーラがヴェロッキオのダビデ像が現実の世界に出現!という感じです。
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              ダビデ像。

      いたんだね、青い鳥 美少年はこんなところに。

とチルチルミチルのように口ずさみたくなった時点で、私の立ち位置は主人公の中年男性アッシェンバッハと同じラインに決定されたのであった。中年男を演じるダーク・ボガード(写真)は『地獄に堕ちた勇者ども』でも悲哀に満ちた役でしたが、本作では悲哀度が超越しています。
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さて、話を戻してビョルン君ですが、来日した時には普通の高校生のようになっていて、アンニュイな少年をイメージしていた方々はヴィスコンティ魔術をつくづく思い知らされたようですが、この件に関しては映画評論家の渡辺祥子さんのバッサリした書きっぷりがすばらしいので引用いたします。


あたかもギリシア彫刻とルネッサンス絵画の最も美しい部分のみを抽出して結合させたような美しさを放った少年が現実にたち戻ったとき、そこにあるのは、すこしばかりのういういしさと、平凡で健康な美しさでしかなかった。アンドレセン少年は、もはや老芸術家アシェンバッハを魅了する美しきタッジオではなく、熱し易くさめ易い女学生のアイドルにすぎなかったのだ。
しかし、そのことで彼を責めるのは酷というものだろう。美というのは移ろい易いものだし、とりわけ少年の美しさの命は、はかないものなのだから。
(『ブック・シネマテーク ヴィスコンティ集成』フィルムアート社 より)



そう、美少年ははかなさが宿命よね、と分かっちゃいるものの、今年の正月明け早々、ナギィさんのところで驚愕のビョルン近影を知る。あまりの変貌ぶりにうろたえました。ショッキング映像はコチラです。


ちなみに渡辺祥子さんは、おなじみヴィスコンティ映画の美青年、特に軍服着せたら世界一のヘルムート・バーガーについてもバッサリ言ってます。


「ヴィスコンティの3作品によって、彼は、持てる才能のすべてを開花させられ、今日では、もはや抜け殻でしかないと言われているのである」


ぬ、抜け殻...。そう言えば、彼は『ゴッドファーザーPARTIII』のバチカン銀行会計士フレデリック・カイシング役(橋の下で首つりに見せかけられて殺される人)。ゴッドファーザーなんて数えきれないほど観てるのに、私は言われるまで全然気づかなかったね...。並べてみると確かに面影がありますが。
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ヘルムート・バーガーもヴィスコンティ以降の出演作品を見てみると抜け殻と言われても仕方ないタイトルもちらほら。『スコルピオン・キッス』とか、『コードネームはエメラルド』、『官能のメヌエット/解き放たれた愛欲の宴』ってどうかと思いますよ。
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改めてヴィスコンティ魔術恐るべし。皆さまも「美しきものは儚い」とくれぐれも肝に命じて残りの夏休みをお過ごしください。また、「我こそは美少年なり」と自認される方はくれぐれも「抜け殻」になりませんよう。


そうそう、10月7日から新宿テアトルタイムズスクエアでヴィスコンティ映画上映やります。『山猫』完全版、『ルートヴィヒ』、『イノセント』の3本。すばらしいわー。
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Commented by KEI at 2006-08-13 00:12 x
最近、某所でビョルン君の近影を見て衝撃を受けたとこでしたよ。
ほんとに美って儚い…
↓イメージを壊したくない場合は見ないことをお勧めします。
http://photos1.blogger.com/img/149/3638/320/Bjorn%20Andresen.jpg
ヘルムート・バーガーは自伝でヴィスコンティのことを散々に言ってるみたいですね。読んでみたいわぁ(ドイツ語でしか出ていないの)
Commented by rivarisaia at 2006-08-13 14:09
一体どうしちゃったんでしょう、この老け込みようは...。
家人が若き日のビョルン君を「女の子」だと思っていたようで、
「お、おじさんになっちゃってる!?」と変な風に驚いてました。

確かに中性的な顔立ちでしたからね....若い頃はね....。

私もヘルムート・バーガーの自伝読んでみたいわー。
せめて英語版はないのかしら。どのように抜け殻にされたのか
書いてあるかしらね。
Commented by ナギィ at 2006-08-14 17:42 x
こんにちは。 初書き込みさせていただきます。
拙サイトをご紹介ありがとうございます!
私も、ヘルムート・バーガー氏が『ゴッドファーザーⅢ』に出ていたとは、
全くもって気がつきませんでした!!
あんなにデカダンな美男子だったのに。。。
『コードネームはエメラルド』、かなり素敵なタイトル!見てみたいですー。


Commented by rivarisaia at 2006-08-15 00:00
ナギィさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
耽美の極みのナギィさんのサイトは、ビョルン君を語る際には欠かせません!というわけで、紹介させていただきました。

『ゴッドファーザーⅢ』の件ですが、私も写真を並べてみるまで
同姓同名かと疑ってました...。本人ですね...。
『コードネームはエメラルド』はまたもやナチの将校役らしいですよ。


Commented by fontanka at 2012-12-20 20:27 x
どうも・・・!
ヘルムート・バーガーがゴッドファーザー3に出ていると(旅行でルートヴィヒを調べていたら分かり)先日、映画を見ました。
この記事をよんでいなかったら、信じられないような。
(たしか、金持ちじゃなかったのか? 一生ひきこもってほしかった)→どうやら衰えはこの映画の段階をとおりこしているらしく(怖くて検索できない)

ですが。しかし、頭の中では、記憶の錯誤→いってない「ヴィーナスの洞窟」に行った気になっている。しかもヘルムート・バーガーが白鳥の舟(→これは間違いなんですが)にのっていた気がする。
ミュンヘンに行って、棺までみたけど、あたまの中はヘルムートで置き換えてます。
Commented by rivarisaia at 2012-12-21 23:35
『ゴッドファーザー3』に出てたことをいつも忘れている私です。で、後から「そうだ!あのおっさんはヘルムート・バーガーだった!」と思い出すというね…。

ヘルムート・バーガーの自伝読みたいと心のかたすみにひっかかっていながらいまだに読んでないのですが、わたしも彼を思い出そうとするとどうしたことか白鳥の船に乗っかってる姿で出てきます…(笑)
by rivarisaia | 2006-08-12 18:37 | 映画/洋画 | Comments(6)