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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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ルードヴィヒ/神々の黄昏

毎日新聞のニュースで「歴史の授業にゲームを導入することで、生徒の歴史に対する理解度を深める研究を東京大学などの研究チームが行っている」という記事を見ました。

私は高校から文系コースに進んだため、恐怖の暗記科目「世界史」&「日本史」が嫌でも必修でした。しかも両科目とも、先生の嫌がらせとしか思えないような試験問題が出るわけです。ただ年号覚えりゃいいというのではなく、時代背景を知らないとお答えできません!みたいな問題が...。

そうなると、生徒の私たちとしましては「いかに効率よく歴史の流れを覚えるか」が試験対策における重要度ナンバーワンとなってきます。教科書ではダメで、頼りになるのはマンガ、小説、映画、ドラマ、ゲームでした。

歴史マンガ定番中の定番、池田理代子の『ベルサイユのバラ』がなければ、ロベスピエールもサン=ジュストも「あんたたち誰?」ってことになっていたに違いありません。またNHK大河ドラマがなければ、戦国時代のいくさの数々もはたして誰が勝利したのやら、混乱の極みとなっていたでしょう。


ルードヴィヒ/神々の黄昏_b0087556_19144222.jpg
 ベルバラでは地味な登場人物ながら、意外にも女子生徒に人気があったサン=ジュストは実際はこんな顔


ただし要注意なのは、時にフィクションと事実の判別がつかなくなることです。さすがに試験で「バスティーユ襲撃でオスカルが...」などという解答を書いた人はいませんでしたが、「演じた役者は分かるが誰だっけ?」「マンガの顔は思い出せるが、名前を忘れた!」ということは往々にして起こりました。(実際に「独眼竜政宗で誰それが演じた人物」と解答して、大きなバツ印とともに「惜しいですね、ちゃんと名前を覚えましょう」というコメントをもらった同級生がいました)

さて、フィクションと事実混同で私が思い出すのは、ヴィスコンティ監督の『ルードヴィヒ/神々の黄昏 (Ludwig)』です。


学校の試験ではなく、「世界ふしぎ発見」のルードヴィヒ特集を見ていた時にそれは起こりました。

たまたま映画館で友人と一緒に『ルードヴィヒ』を観たばかりだったので、私と友人は「今の私たちが出てれば、全問正解よね〜」などといいながら、テレビの前でクイズに答えていたのですが、驚きは最後のクイズでやってきた。

クイズ「ルードヴィヒ国王は時おり城を抜け出して、あることをしていました。そのあることとは何でしょう?」

そうでした、そうでした。映画では、ヘルムート・バーガー演じるルードヴィヒ国王は確かにお城を抜け出してました!さあ、何をしてたかというと、

森の小屋に赴き、酒を飲んだり、チロリアン・ダンスを踊ったりしている若者たちの乱痴気さわぎに加わって、若者と戯れていた。

そんなことをテレビのクイズにしていいのかしらね、などと盛り上がった私たちですが、正解は「1人で城を抜け出し、オペラを鑑賞していた」でした。あれれー?

「映画では若者と戯れてたもん!崩壊の道をたどる王の狂気と頽廃の美ここに極まれりって感じだったのに〜!」と2人で歯ぎしりしましたが、まあ冷静に考えてみれば、森の小屋で若者と云々っていう解答はあり得ないですね。ルードヴィヒときたらワーグナーですものねえ。そういやオペラのシーンもありましたね。ああ、学校の試験じゃなくてよかった!

ちなみにヴィスコンティの『ルードヴィヒ』は傑作です。主演はおなじみのヘルムート・バーガーですが、本人に瓜二つ。あまりに似ているので並べてみましょう。左がバーガー、右がルードヴィヒ国王ご本人です。
ルードヴィヒ/神々の黄昏_b0087556_1915795.jpg


....。やだー、並べてみると、本当にソックリ! もしかして生まれ変わり?

芸術をこよなく愛したルードヴィヒは中世に傾倒し、ロココに憧れ、情熱の結晶ともいえる城(ノイシュヴァンシュタイン、リンダーホフ、ヘレンキームゼーなど)を建設し、作曲家ワーグナーのパトロンとして生涯援助を続けたわけですが、時代の波に翻弄され、芸術に心酔するあまり孤独に陥り、次第に狂気に蝕まれていきます。まさにそんな頽廃の人生をデカダンの巨匠ヴィスコンティが描く超大作。完全版は4時間ありますので、未見の人は心して観てくださいね!(8/12のエントリにも書きましたが、2006年10月7日から新宿テアトルタイムズスクエアのヴィスコンティ特集で上映されますから、ぜひ!)

・ネズミーランドの城のモデルともなったノイシュヴァンシュタイン城の公式サイト
・ロココといえばトリアノン宮殿を模したリンダーホフ城の公式サイト
・同じく、ロココのヴェルサイユ宮殿をそっくり真似し、鏡の間は本家よりもデカイというヘレン・キームゼー城の公式サイト

これらの城を見ると、狂気度も実感できますね。ああ〜、本物を見てみたいわー。
Commented by 熊猫 at 2006-09-01 23:34 x
意外なことに熊猫もこれ観ました。
ルードヴィヒファンの友人にドイツ旅行に連れて行ってもらった際、
本やらDVDやら借りたのです。やたら長いですよね。
ネズミーランドの城のモデルとリンダーホフ城に行った
直後に見たので楽しめました。
Commented by 朝夕 at 2006-09-02 00:15 x
その時一緒に見ていた友人です。(笑)
ありゃないよねえ。絶対「男ばっかりチロリアン・ダンス」だと思っちゃいましたよ。オペラなんてそんな綺麗にまとめられても「ふ~ん」でしたわ。
まあ、確かにご家族で見る「世界ふしぎ発見」では説明に困るだろうけど。
映画自体は本当に退廃きわまれりって感じで良かったよねえ。ヘルムート・バーガーのまるで憑依されたかのような演技がすばらしかったです。
Commented by rivarisaia at 2006-09-02 00:38
>熊猫さん
何ですって!ノイシュヴァンシュタインとリンダーホフに行かれた!
それはうらやましい...。私もいつか行きたいわー。お友だちがルードヴィヒファンなのですね。ということは詳しい解説つきで城めぐりをされたことでしょう。すてき!
Commented by rivarisaia at 2006-09-02 00:43
>朝夕さん、
なぜか朝夕さんと一緒に観た映画は濃ゆいモノばかりでしたね。
そのうち「セリーヌとジュリーは船でゆく」の感想も書くことにします(笑)

スーパーひとし君を賭けてもいい、チロリアンダンスだ!と思いましたよねえ。オペラも観たかもしれませんが、最後はいくら「世界ふしぎ発見」とはいえ、デカダンでまとめていただきたかったです。
ヘルムート・バーガーはまさかルードヴィヒの霊に憑かれたせいで
抜け殻になってしまったのでは....。
by rivarisaia | 2006-09-01 19:49 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(4)