阿片茶

上海租界時代には蘋如といい、川島芳子といい、いろいろな女スパイが暗躍していましたが、今回はイタリア人女スパイです。トピックスはおもしろいのに、惜しいなあ残念というノンフィクションの見本となる1冊です。

阿片茶 (Opium Tea)』ビアンカ・タム著 内野 儀 訳集英社

貴族の令嬢ビアンカは、周囲の反対を押し切ってイタリアに留学していた中国人タム(後に国民党将校)と結婚、中国に渡る。しかし、タムに愛人ができたことを知ったビアンカは一人で子どもを育てることを決意し、生活のために日本軍のスパイとなり、終戦後スパイ容疑で逮捕され、国外退去を条件に釈放される。ビアンカ本人の回想録。

あらすじをみる限りではなかなかエキサイティングであり、興味がかき立てられるのですが、なんだかハーレクインロマンスのような仕上がりになっている。ううむ。

問題点は、ロマンスシーンは詳しく書くくせに、それ以外の詳細求ム!という部分の説明が浅いのです。つまり「私の美しさに男はみなメロメロ」に始まり、「男はやっぱり私にメロメロ」で終わるという話なので、だんだんビアンカにウンザリしてきて、しまいには「いい加減にしな!」と説教したくなります。女スパイの活動がいくら桃色系だとしても、あんまりです。

夫の愛人発覚後、一人で子どもを育てるわ!と決意しておきながら、旦那に紹介された困った時の相談相手・銀行の頭取とよろしくやって養育費をもらっている時点まではガマンしましたが、のちに逮捕されて死刑かもしれないと切羽詰まった時ですら「男はメロメロ」をやってるので、どうも緊迫感がナイ。

しかし、もっともめまいがするのは戦後です。

プロポーズをするA氏に「あなたは打算的」と言っておきながら結婚。しかしやっぱり別れてB氏と結婚。B氏の死後「Aさんは私が困ったらいつでも助けてくれると言ってた!」と再びA氏を探すにいたっては

「何やってんのこの女は」

という気分になり、驚愕の結末をネタバレしますと、


A氏は死んでいたが、実はビアンカのアパートが窓から見えるホテルの部屋に住んでいたことがわかり、見守ってくれていたなんて幸せ!この本は彼に捧げます。ー完ー


えーーー!?

まあね、怒濤の上海での生活は大変だったのは分かりますし、ロマンス部分を書くなとも言いません。ただですね、もうちょっと書き方にメリハリをつけるか、おイロケの間にスパイスの効いた話を挟んでくれるかしないとですね、中途半端です。

本人に話を聞いて、ライターかジャーナリストが回想録をまとめた方が良い本になった気がします。惜しい。そういう意味では、学ぶところがあるかもしれませんね。
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by rivarisaia | 2006-09-23 23:51 | | Trackback | Comments(0)

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