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イノセント・ボイス 12歳の戦場

中南米の歴史は背後に米国の影がちらつく内戦の歴史。日本からは物理的にも心理的にも遠い場所なので、世間の関心が向かない傾向にありますが、だからこそぜひ観てほしいのが、
イノセント・ボイス 12歳の戦場(Voces Inocentes/Innocent Voices)』。

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監督はルイス・マンドーキ。14歳でエルサルバドルからアメリカに亡命したオスカー・トレスの自伝的な脚本がベースになっています(ルイス・マンドーキも脚本に参加)。

政府軍と農民が中心となったゲリラ軍FMLNとの内戦が続く、1980年代のエルサルバドル。少年たちは12歳になると、政府軍によって強制的に徴兵されてしまう。11歳のチャバ(カルロス・パディジャ)が住む小さな町クスカタンシンゴでは、政府軍とゲリラとの戦いが拮抗し、日に日に銃撃戦が激しくなっていた。


いつどこで銃撃戦が起きるかわからない生活。家の中も安全ではなく、銃撃戦が始まってしまえば、銃弾がトタンの壁を貫通して室内に飛んでくる。流れ弾を防いでくれるのはマットレスだけ。

たとえ死と隣り合わせの状況にあっても、そこで暮らす人には毎日の生活があり、平和なひとときもある。子どもたちも隠れるように生きていたのではなく、友だちとプロレスごっこをしたり、好きな女の子とデートをしたりもする。もちろん、そんな楽しい時間は、ほんのつかの間なんだけど。

何の前触れもなく、学校に政府軍の兵士があらわれ、名前を呼ばれた生徒はトラックに乗せられて強制的に連れて行かれる。ゲリラ軍の兵士の叔父をもつチャバの心はゆれる。政府軍に入るのか、ゲリラ軍に入るのか。どちらも兵士になるのは変わりないが、子どもたちの選択肢は2つしかない。政府軍の抜き打ちの徴兵を逃れるために、屋根に隠れる子どもたち。
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重苦しく退屈な映画でもなければ、単なるお涙頂戴映画でもなく、泥沼のような現実の中で必死に生きる11歳の子どもの葛藤や感情を描ききった演出と脚本は、すばらしいとしか言いようがありません。そして、その脚本を書いたオスカー・トレスが過酷な子ども時代を生きのびて、アメリカに渡ることができなければ存在しなかったであろう、本当に細い、細い、クモの糸を綱渡りして生まれたような映画です。

National Geographic Newsでトレス氏は次のように語っています。「僕自身の話にすぎないのではなく、今もこうした悪夢の中に生きている子どもたちの話でもあるのです」。

未見の方は必見。



1998年のリサーチでは、世界で30万人の少年兵(少女も含む)がいると言われており、2006年の国連の推測ではその数は25万人まで減少しているとされているものの、実際には数を調査するのは不可能(ソース: The Coalition to Stop the Use of Child Soldiers)。
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Commented by 江戸川豊 at 2006-10-23 05:57 x
米国が中南米に何をしてきたかってことだと、アレックス・コックスが監督した「Walker」を思い出す。コミカルだけど、皮肉の効かしかたが自分的にはNo.1映画。
Commented by rivarisaia at 2006-10-24 01:18
エド・ハリスですねー。とか言いつつ、未見です。ゼヒ、この機会に観ることにいたします! ジャック・レモンの『ミッシング』(チリのクーデターの話)もシリアスですが、なかなか感慨深いものがありました。

ヨーロッパのアフリカ支配といい、米国の中南米支配といい、世界の
構図は大航海時代の昔から結局は変わってないのでした...。
私はそんなに詳しくないんですけど、「コンドル作戦」とかサワリだけ聞いても酷いよね。
by rivarisaia | 2006-10-21 18:52 | 映画/洋画 | Comments(2)