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見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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アラビアの夜の種族

最近「メタフィクション」に取り憑かれている気がしてなりません。

数ヶ月前、たまたま知人と「メタフィクションがどーのこーの」という話をしていて、それ自体はいいかげんな会話だったのですが、その数日後、書評の本を読んでいると、やたらと「メタフィクション」という言葉が目に付く。ブログやサイトを覗けば、誰かが「メタフィクション」について何か書いている。挙げ句の果てには、仕事の文書でも「メタフィクション」が言及され、薄気味悪さを感じつつ、つい昨日、何気なく読了した本が超メタフィクションでトドメを刺されました。

アラビアの夜の種族』 古川日出男 著 (角川書店)今年の7月には文庫も刊行(全3巻)。

聖遷暦1213年、ナポレオン率いるフランス艦隊は、エジプトに攻め入ろうとしていた。知事のイスマーイールは、このままではマムルーク朝が滅亡してしまうと不安に駆られる。そんなイスマーイールに側近のアイユーブが耳打ちしたひとつの策略。それは読む者を破滅に導く書物、『災厄の書』をナポレオンに献上しようというものだった。ところが...。

2001年に出版され、第55回日本推理作家協会賞、第23回日本SF大賞を受賞してます。今さら読んだのかよ!と前に勧めてくれた知人には言われそうですが、はい、今まですっかり忘れてて、昨日読みました。えらい満足感のある本でございました!早く読めばよかった。

『災厄の書』を献上すると決めたまではいいが、ところがそんな書物は存在しなかった、というのが話の発端。語り部に物語を語らせ、それを『災厄の書』としてしたためる。語り部によるストーリーと、ナポレオンが迫るエジプトのストーリーが交互に出てくるのですが、「ナポレオンはいいから、早く語り部に続きを!」などと思ってしまい、仕事があるのに読書に没頭していた私自身があやうく破滅するところでした。

ときどき妙にセリフがくだけているのに違和感を覚える人がいそうですが、そこは馴れさえすれば大丈夫です。また、「ウィザードリィ」の世界観と重なるので、ウィザードリィ・ファンなら気に入ると思うよ、と言う人もいます。ウィザードリィをやってない私でも、阿房宮やら迷宮にはクラクラしましたから、ウィザードリィ・ファン以外でも大丈夫です。

とにかく読み終えた瞬間の私のひとことは、「なに、この多層構造!(驚嘆)」でした。
by rivarisaia | 2006-10-23 23:57 | 書籍 | Trackback | Comments(0)