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カリギュラ

歴史上の人物は見方によって極悪人になったり、悲劇の人になったりしますね。塩野七生さんの『ローマ人の物語VII 悪名高き皇帝たち』を読んでいて、封印した記憶が蘇ってしまった。それが映画『カリギュラ(Caligula)』。残虐非道なカリギュラ像は、後年の創作物から生まれたねじ曲がったイメージとも言えますが、その原因のひとつがお前じゃー!と言いたくもなるのが本作品です。

戦犯の名前を挙げてみようと思う。監督はティント・ブラス、ジャンカルロ・ルイ、製作総指揮はボブ・グッチョーネ(特にコイツが悪いと思う)。ペントハウスが制作したことからも容易に想像できる内容ですが、しかし、出演はマルコム・マクダウェル、ピーター・オトゥール、ヘレン・ミレンと豪華キャストなのであった。

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こんな映画になるとはつゆ知らず、意欲的に役づくりをしたマルコム・マクダウェル。役柄としては『時計じかけのオレンジ』に通じる部分もあるんですが...。


で、わたくし、大昔に異国にてノーカット版を観ました。発端は友人Aが歴史大作だと思って借りてきた「通常版」。「噂に聞くほどでもなかった」とその場にいた全員がホッとしたのですが、映画が終わると1人の男性が画面に現れた。おそらくボブだと思うのだが、そいつが次のように言うのである。

「私は今、怒っています。こんなにカットされてしまって、オリジナルが観たかったと怒りを感じる人も多いはず。そんな方は以下の住所にビデオを送ってくだされば、ノーカット版をお送りします!」

何だそりゃ? 後日くだんの友人Aがノーカット版を知人から借りたので私の家で上映会をやると言う。なぜうちで?という疑問を抱きつつ、監督があんなに怒るほどのノーカット版とはいかなるものかと興味津々の総勢7〜8名が集まることに。結論から言うと全員ドン引きであった。


     「あのね、見せりゃいいってもんじゃないんだよ!」
     「エロシーンが無駄に長いよ!」
     「ストーリーとまったく関係ないじゃん!」
     「っていうか、ノーカットの方が怒りを感じるよ!!」


濃厚シーンを演じているのは、豪華役者陣ではなく、無名俳優によるものです。今では日本でもノーカット版が出ていますが、「ゲンナリ」したい人はどうぞ、という感じ。昔は「こんな映画になぜ出たの、オトゥール...」と思ったものですが、私が間違っていました。俳優陣は全員が歴史大作になると信じていて、完成作品を見て激怒したと....。そりゃそうだよね。

ドラマ部分にはまあまあおもしろい面もある。衣装も豪華だし、恐怖の首切りマシーンのセットも見応えがあるといえばある。しかし、ボブ、君は蛇足という言葉を知っているか。

さて、前述の塩野さんの本からモンスター的カリギュラ像についての記述を抜粋。

「百年も後に巷間の噂を集めて書かれた、スヴェトニウスの『皇帝伝』の中のカリグラから材をとったにちがいない。しかし、カリグラは、幸か不幸かモンスターではなかった。頭も悪くなかった。彼にとっての不幸は、いや帝国全体にとっての不幸は、政治とは何かがまったくわかっていない若者が、政治をせざるをえない立場に就いてしまったことにある」

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美青年だったというウワサのカリグラさんはこんな顔。波瀾万丈流転の人生でした。

最初は民衆から喜んで迎え入れられたのに、わずか3年10ヶ月で失墜した、ある意味不幸な若者カリギュラ。そこでリメイク嵐の吹き荒れるハリウッドに提案。どうせなら新たなるカリギュラを撮影し、カリギュラの汚名挽回を図ってはどうでしょうか。
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by rivarisaia | 2007-02-16 22:47 | 映画/洋画 | Comments(0)