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山椒大夫

私には映画・ドラマ・マンガすべてに共通する苦手なジャンルがあります。
それは...「生き別れ」モノ。

とにかく性に合わないので、子どもの頃からできる限り避けてきましたが、溝口健二の映画はやはり劇場で観なくては意味がない。となると必然的にコレも劇場で、ということに。

山椒大夫』(1954年)
出演:田中絹代、花柳喜章、香川京子、進藤英太郎 ほか  
撮影:宮川一夫
1954年ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を受賞

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意地でも泣くものか、と思ってましたが、田中絹代と香川京子を前にそんな決意はもろくも崩れ去った。50年を経てもなお、現代社会に通用するテーマ。それだけ世の中変わってないということか...。そんなことも含め、あらゆる点で衝撃的な映画でございました。

もっとも衝撃的なのが映像の美しさであるのは言うまでもありませんが、改めて「もうこういう映画は出てこないだろうなあ」という気がする。

溝口健二に限らないのですが、どうしてこうリアルなのか。最近の時代物はどれも「現代人がいかにも昔っぽくやってます」としか見えない。それに対し、「その時代に行って撮影してきました!」と言わんばかりの雰囲気。

白黒だから余計にそう感じるのかもしれませんが、美術や風景、台詞、カメラワークに加えて、役者の顔つきや体型がどれも今とは違うんですよね。そうしたリアリティに加えて、余計なモノが削ぎ落とされた画面から生まれる余韻の迫力は一体...。

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たとえば『山椒大夫』で安寿が入水する場面。ここで泣かせる台詞のひとつでも言われたなら、出る涙も速攻で乾くと思うが、木々の間をゆっくり進む安寿、静かに広がる波紋、これだけで訴えてくるものがあります。やっぱり溝口健二、恐るべし。

ところで、少年時代の厨子王は津川雅彦だったんですね。ハツラツとしてた少年は、あんな青年になっちゃったのね...と変なところで別の衝撃も受けました。鴎外の原作通り、姉と弟という設定のほうがしっくりきたかもしれません。でも、香川京子の妹が健気なのと、最後の田中絹代の姿に圧倒されて、もう兄でも弟でもどうでもよくなりました。
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Commented by ゆずきり at 2007-02-25 11:35 x
昔の映画は、屋外の場面が迫力ありますね。風が吹いているところなんかほんとに、「吹きすさぶ」感じが伝わります。私はわりとすぐ涙する方なんですが、これは逆に、そんなめそめそが通じない深さがあって、泣けませんでした。若い津川さんかわいかったですね。
Commented by rivarisaia at 2007-02-26 16:44
過酷な情景が本当に「過酷」に見えるんですよね。
「吹きすさぶ」感じもそうですね、昔の映画だと迫力が違う。
親子が引き裂かれるシーンが、本気で引き裂かれてた感じがして絶句しました。

若き日の津川さんは利発そうでしたが、それが成長してあの花柳喜章か...。いやその、お役目をそんなにすぐに放り投げちゃっていいのかー?と思ったので...。
Commented by らら at 2007-03-05 01:13 x
この時代のすぐれた作品って、芸術性と娯楽性がわかちがたく結びついているのがすごいですよね。役者も演じているというよりは役柄そのものとして存在しているというか…。そうそう、厨子王は子供の時はあんなに可愛かったのに、大人になったら品がなくなっちゃって…と思いました。香川京子の透明感のある美しさが印象的だっただけに、余計。
Commented by rivarisaia at 2007-03-05 03:59
ららさん、そうなんですよ、「役者が役柄そのものとして存在している」に同感です。田中絹代が田中絹代に見えないというか、安寿と厨子王のお母さん以外の何者でもありませんでした。

厨子王は大人になったら別人のようで、それはあの荒んだ生活のせいと思えなくもないですが、同じ環境なのに安寿は清らかに育ったからなあ...。姉と弟だったらもうちょっとスッキリしたかも、と思いました。
by rivarisaia | 2007-02-24 23:36 | 映画/日本 | Comments(4)