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映画でクラシック2:北京ヴァイオリン

「テクニックより、まず音楽は表現である」と、プロの方々からよく言われます。そしてそれは「どんなに巧くてもダメな演奏もあるし、すごくヘタなのにいい演奏もある」と哲学問答のような話へとつづいていく......。

そうか、あれか。外国語がネイティブ並にうまいんだけど、何が言いたいのかサッパリわからない人と、めちゃくちゃブロークンなのに言いたいことが直球で伝わってくる人がいるのと同じか。芸術は爆発だ!ってことですね (ちょっと、違う?)

そこで本日は、コンクールで優勝するとか、一流の音楽家になるとか、そんなこと以前に大事なことがあるという映画。感情の爆発だ!という演奏つき。
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北京ヴァイオリン(和[イ尓]在一起/Together)』監督 チェン・カイコー(陳凱歌)
13歳のチュンは父リウと2人暮らし。チュンは、幼いころに亡くした母の形見のヴァイオリンを上手に弾き、周囲で評判になっていた。父はそんな息子を一流の演奏家にしようと、北京に移り住むことにするのだが…。


ドラマ版じゃなくて映画版。ラストがいいですね。立身出世物話のような展開を期待すると、あら?となるかもしれないけど、それは必ずしも最高のゴールではない。

夢を追いかけすぎて見失っていたものを、たぶんこの親子は、取り返せたんだろうな、と思いますし、それができなければ、この少年もおそらく演奏家としても大成しないです。

そして、お父さんはなぜあんなに一生懸命なのか、とやや疑問でしたが、ただの親バカではありませんでした。これも最後のほうで判明しますが、そういう事情があったのね。いいお父さんじゃないか〜。

そんなラストでは、感情が爆発するかのごとく、弓の毛を切り、松脂の粉をまき散らしながら、少年がヴァイオリンを弾くのですが、おそらくこれは彼の生涯でベスト10に入る演奏となったことでしょう。大人になって有名な演奏家になっても、このときのことを忘れちゃだめよ〜。偶然この場に居合わせた人たちは、少年の名演奏が聞けて幸せだ。

彼のほとばしる感情を表現する曲は、もちろんチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」。クライマックスでうわあ!と盛り上がるドラマチックな曲で、少年も本当に弾いてますけど、李伝韻(リー・チュアンユン)が吹き替えてます(ハイフェッツの演奏より、私はこっちのほうが好きかも)。

ちなみに、この曲には、チャイコフスキーがロシア最大のヴァイオリニストであるアウアーに送ったの際、アウアーから「演奏不可能」と拒絶されたというエピソードつき。※

さらに、このチャイコを弾ききった後に、間髪入れずに清々しく流れる曲はブルッフの「スコットランド幻想曲第3楽章」。私はこの曲が大好きなので、「なに! 北京なのに、そこでスコットランドをもってくる!? くー泣ける....」と、もはや映画が泣けるのか、選曲が泣けるのか、よくわからない状態になってしまったのでした。

※アウアーの名誉のために記しておくと、のちに自分が間違ってたことを認めて、みずからも演奏するようになった。

参考までに追記メモ(11/7)
リンク切れになったらごめんなさい!

・YouTubeで見つけたチャイコのバイオリン協奏曲はコチラ。バイオリンはダヴィッド・オイストラフ。8分過ぎあたりから、私は気分が高揚します。

・ブルッフのスコットランド幻想曲はコチラ
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Commented by peque-es at 2007-11-05 17:08
映画は見ていないのですが、「哲学問答」の意味は、自分自身がノッて、そしてアツくなって弾く事ができるかどうか?という事かなと思いました。チャイコのヴァイオリン協奏曲は何となくイメージ湧きますが(違ってるかも知れないけど…ほんと、タイトルに弱い…)、スコットランド幻想曲というタイトルは知らず(…弱いだけじゃなくて無知だ…)、でもそそられるタイトルですね。プラス、春巻さんの文で、どういう曲だか聴きたくなりました。こちらに来る度に、見てみたいもの、聴いてみたいもの、読んでみたいもののリストが増えて困るんですが…って、ずっとペンディング・リストのままだから困るのであって、順にちゃんと消化して行けばいいのよね?(…やる事が遅いんだよ…) 独白ばかりで、失礼致しました。
でも春巻さん、いつもエネルギッシュに、色んなものを見たり読んだり聴いたり、でお仕事もしておられて、そしてブログも書いて、見たり読んだり聴いたりしたものがちゃんと整理されている! 私から見ると超人です。
又リスト増やしに来ますね(笑)
Commented by makrele at 2007-11-06 02:50 x
こんばんは~。
私もpeque-esさんと同じように、日々映画や音楽、仕事に精進されているお姿に頭が下がります。
この映画実は気になっていたのです。未だに日本のウェブサイトで映画をチェックしていますから。やはり公開される種類は違いますね。
機会があったら是非見てみたいです。
ちなみにパンズラビリンスはゲットしました。映像の色合いがとても気になる映画です。
Commented by rivarisaia at 2007-11-07 00:38
>ぺけさん
技術よりも「表現」してるかどうかですよね。今いちばん、私が注意されている面でもあります(苦笑)。もっとノッて弾ければいいのよね.....。

そ〜んな私は、エラそうに書いてる割には、クラシックに本当に詳しくありません! クラシック系の楽器を習っている人間とは思えないほど、そもそも知っている曲がとても限られていて、映画を通じて知ったり、
たまたま友人から聞いて知ったり....という状態です、あはは。
そんなわけで、私も長〜いリストを溜め込んでいます。

そんな私のブログネタは、過去の引き出しからひっぱり出してきているものなので、超人的に一度にいろいろやっているわけでもないですよ〜(笑)
Commented by rivarisaia at 2007-11-07 00:42
>makreleさん
映画はですね、最初はちょっとタルいかな〜と思っていましたが、
ラストの選曲がマッチしていたせいか、それとも「楽器を弾いて表現すること」について根本的なことを描こうとしているせいなのか、観終わってみれば、いい映画でした。
中国風のオリジナル曲も雰囲気がよいので、サントラおすすめです。

パンズラビリンスは色合いが確かに変わっているかもしれませんね!
Commented by peque-es at 2007-11-09 00:33
追記のリンク、ありがとうございました。ヴァイオリンの音色を楽しみました。
Commented by rivarisaia at 2007-11-10 22:46
>ぺけさん
オイストラフって、演奏しているところ初めてみましたが、
どっしり構えて弾いてるのがすごいですー。
by rivarisaia | 2007-11-04 17:29 | 映画/香港・アジア | Comments(6)