The Mysterious Flame of Queen Loana:記憶をたどる物語

もうね、日本の出版社はウンベルト・エーコの邦訳を出版する気ないでしょ。
おそらく当分出ない。そんなとき、私の頭の中のマリー・アントワネットがこう言い放ちました。

 邦訳が出ないなら、英訳で読んだらいいじゃない

そうですか。じゃあがんばってみる。ということで繁忙期突入前に読み終えた1冊です。
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The Mysterious Flame of Queen Loana』Umberto Eco著 Harcourt刊

ポップカルチャーが主題と聞いて、ながらく読むのを躊躇してました。イタリア語で読めたらいいけど、そんな日は当分来ないね!(キッパリ)

昏睡状態から目が覚めると、自分にまつわるいっさいの記憶を失っていた。家族の顔も、子ども時代の思い出も、すべてが霧の中だった。

自分にふりかかったこの災難に衝撃を受ける古書籍商ヤンボ。しかし彼は、これまで読んだ小説や詩などについてははっきりと覚えていた。失った過去の記憶をとり返すべく、少年時代を過ごした田舎の家に向かうヤンボだが…


記憶のない主人公が、「自分はどんな人物だったのか」ということを、子どもの頃に読んだ(と思われる)ものを手がかりに探っていくという話なので、コミックから雑誌、新聞、パッケージ、ポスター、ジャズ、映画…と膨大な量のポップカルチャー(モダンカルチャー?)が登場します。

知らないことだらけでしたが、『Baudolino』のときのように脱線せずに読み進みました(脱線している時間がなかったからですが)。いずれにしても豊富な図版が入ってるので、知らなくても楽しく読めます。

本書は大きく3つにわかれており、第1部は、病院で目覚めたヤンボが、家族に会い、仕事のアシスタントに会い、子どもの頃に過ごした田舎の家にむかうまで、第2部では田舎の家でさまざまな思い出の品を見つめながら自分自身を探ろうとするヤンボが描かれています。

ファシスト政権下のマンガや新聞、教科書を見ながら、こんなものを読んでた自分はどんな子どもだったんだよー!と不安になったり、どうしても顔が思い出せない初恋の女の子のために書いた小っ恥ずかしい"若気のいたりポエム"を見つけたり。

なんだかやけに物持ちのよい主人公ですが、そこはちゃんと理由あり。隠し部屋を探し出す場面ではかなりわくわくしました。そして第2部の終わりで衝撃的なことが起きるのだった。

さて、問題は第3部です。

第3部は強いて言うなら、よみがえる記憶とフラッシュ・ゴードンです。本当です。

謎が明かされるスッキリ感と一抹の不安感を同時に抱きながら読んでいて、ラストの怒濤の展開に仰天。おまけにた、宝塚歌劇?とも思いました。脳裏に宝塚の大階段フィナーレが浮かんで離れません。

この展開は予想してませんでした。しかもオチでかなり凹んだ私。やられたよ、またもエーコに。
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Commented by まるま at 2008-11-28 07:06 x
エーコでフラッシュ・ゴードンと宝塚歌劇ですか! 読みたい読みたい読みたいです~。
Commented by rivarisaia at 2008-11-30 18:10
第3部はちょっとおののきました。
現代の話だからか『Baudolino』よりも読みやすいです。挿絵も多いし!英語でどうぞー!(だって邦訳でないんだもの)
by rivarisaia | 2008-11-27 20:09 | | Trackback | Comments(2)

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