カテゴリ:本( 366 )

写真で覚える日本刀の基礎知識

プライスコレクションを見た日、東京国立博物館のミュージアム・ショップにて家人が購入した本が興味深かったのでご紹介しましょう。
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全日本刀匠会から出版されている『写真で覚える日本刀の基礎知識』です。ページ数や装丁(A4、48ページ、平綴じ)からするとちょいとお値段が張るような気がしますが、ところがどっこい。たいそう読み応えがあり、なかなか良い本なので、納得の定価1500円です。おまけに英文併記。

家に日本刀もなければ購入の予定もないのに、なぜこの本を買ったのか家人に聞いてみたら「カッコイイひもの結び方が出ているから」だそうです。たしかに「太刀緒結び」とか「浪人結び」とか、日本の伝統美ともいえる「結び」が写真入りで丁寧に説明されてます。これは何かの機会に応用できそう!

しかし本書がずば抜けているのは、日本刀を所持する方法から始まって、手入れの仕方、各種ひもの結び方、製作工程、各部の名称など、あらゆる情報を48ページ内で網羅していて無駄がないところ。しかもカラー写真が豊富でとてもわかりやすい。刀鍛冶が自ら企画、編集を手がけたというだけあります。個人的には、手入れ方法の説明写真にスーツ姿の女性が起用されているのがシュールだったのですが、若い女性でも簡単に手入れができるというアピールなのかもしれませんね(袴姿の初老の男性の方が私としてはグッときますが)。


そんなわけで、これから時代劇を見る時には刀に注目しそうです。

全日本刀匠会のサイトはコチラ。小品販売のコーナーに本書の詳しい説明が載ってます。連載のコーナーが面白い。
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by rivarisaia | 2006-08-22 23:47 | | Trackback | Comments(2)

淋しいおさかな

今日の東京は夕焼けがすばらしくキレイでした。夕焼けの前は、印象派!?と思うような空と空気の色だった。写真を撮ってみたけど、携帯カメラでは色が再現できません。
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まわりが美しい色合いに染まって、汚い雑踏がいい感じに見えました。自然の力はすごいね。そんな中、突然『猫貸し屋』という別役実の短編童話を思い出した。1人暮らしの淋しい老人に猫を貸す「猫貸し屋」が、「猫いりませんか〜、おとなしい猫」という呼び声で町を歩くという話。

これは、三一書房から1973年に出版された『淋しいおさかな』に収録されてます。NHKの「おはなしこんにちは」という番組のために書かれた短い童話集。私が幼稚園生だった頃の寝る前に読んでもらう本だったのですが、子ども向けと言いつつ大人が読んでもじゅうぶん堪能できるショートストーリー。どことなく哀しくシュールな本です。寝る前の本としてはちょっと淋しすぎる気もしないではない。でも美しい童話集です。再版希望。

ちなみに夕焼けの時点では、私はi-Podで「沖縄のエイサー」を大音響で聴いており、ちっとも淋しい気分ではなく、むしろ「ソ〜レ、ソ〜レ、アイヤ〜」とかけ声かけて練り歩きたい気分だったのに、この話を思い出すとは何とも不思議。
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by rivarisaia | 2006-08-08 23:59 | | Trackback | Comments(0)

阿片王 満州の夜と霧

積ん読状態だった『阿片王 満州の夜と霧』(佐野眞一 著 新潮社)を読み終わりました。
昔から時々、30年代〜40年代の魔都上海のマイブームがやってくるのですが、この本のおかげで久々に密かなブームの再来が〜。
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戦争時、阿片ビジネスから生まれる莫大な資金に支えられていた日本。そんな日本の阿片工作を仕切っていた阿片王・里見甫(はじめ)の生涯に迫るノンフィクション。上海の東和同文書院に通った里見氏は中国で新聞記者として活躍後、満州国通信社のトップに君臨、そして阿片取引に関わっていく。

満州"帝国"なんて巨額の資金がなきゃつくれませんよね、税金だって取れないのにじゃあそのお金はどこから来たかといえば、阿片取引です(また、利益は日本だけでなく中国側にも流れていた)。日本政府としては堂々と取引するわけに行かないので、里見さんがその役割を引き受けたのですが、これがもう尋常じゃないやり手。売上金で私腹を肥やすことがなく、金ばなれがいいというか、キップがいいというか、女性関係についてはどうかと思うが、人としては変な魅力がある。だからこそドンの座に君臨できたのね...。ちなみに彼が東京裁判で起訴されることはありませんでした。理由は大人事情です(裁かれることになったら、「戦勝国」側も困ることになるので...)。

彼を取り巻く女性の話も興味深い。彼の「片腕」としてビジネスにかかわっていた男装の麗人・梅村淳という人がいるのですが、男装の麗人と言えば川島芳子くらいしか知らなかったしなー。

そんなわけで、里見甫の謎めいた生涯に迫ってはいるのですが、いかんせん当時の上海や満州、そして里見さん自身も混沌とした闇の迷宮のような存在ので、当時のすべてを白黒ハッキリできるわけもなく、読み終わった後にも謎が残ってスッキリしない本ではあります。かえって謎が広がるのですが、出てくる人物が大物ばっかりだし、話のスケールも大きいので読み応えは十分。

また、事実は事実、謎は謎、憶測はあまり入らず、という姿勢はある意味いさぎよいのかも。たとえば、元首相の近衛文麿の息子、近衛文隆の生涯を書いた『夢顔さんによろしく』(西木正明 著、文藝春秋、上下巻で文庫もアリ)は小説の形式だったので、それはそれで面白いものの「どこまでがフィクションでどこまで事実なのか〜?」と読んでる最中にモヤモヤしたという記憶があります。

さて、『阿片王』の中では、ほんの2ページくらいしか出てきませんが、個人的に懐かしい名前に遭遇。それは上海の女スパイ鄭蘋如(テイ・ピンルー)。そのおかげで、近衛文隆を思い出したのでした。ピンルー嬢の話は長くなるので次回8月5日のエントリで書きます。
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by rivarisaia | 2006-08-04 16:07 | | Trackback | Comments(2)

奇術師:予告編が出ましたね

昔からライバル同士には、葛藤や確執が付き物だとは思いますが、そこに嫉妬や憎しみが深く入り込んでしまうと、事態がどんどん悪い方向に進んでしまうことがありますね。

そんなマイナスのベクトルに向かっていくライバル関係と言えば、去年読んだ本でおもしろかったのがこれ。

b0087556_22303641.jpg奇術師』 クリストファー・プリースト 著 古沢嘉通 訳 ハヤカワ文庫

ジャーナリストのアンドルーは、謎めいた女性ケイトから思いがけない話を聞かされる。2人の先祖は、20世紀初頭に活躍していた奇術師だったというのだ。常にライバル関係にあり、それぞれ「瞬間移動」の技を売りにしていた天才奇術師、アルフレッド・ボーデンとルパート・エンジャ。彼らが残した手記に記されていた事実とは...。

原題は『The Prestige』。世界幻想文学大賞受賞だそうです。

章ごとに語り手が違うのですが、主要なパートを占めるボーデンとエンジャによる手記で、事実関係に微妙なズレが生じてきます。この食い違いのせいで、読者は混乱。あっと驚く衝撃の結末が待っているわけではないけど(むしろ、そんなのアリ?と驚いた)、とにかく読ませる小説でした。あの何とも言えないやや不気味な結末に到達した後、しばし沈黙して、もう一回最初から読んでしまった。まあ、プリーストの小説は毎回2度読みしちゃうんだけど。

本作品は映画化が決まっています。Appleのサイトで予告編が公開になっていました。コチラ
監督はクリストファー・ノーラン、主演の2人はクリスチャン・ベイルとヒュー・ジャックマン、そして、デヴィッド・ボウイが実在の発明家ニコラ・テスラ役だ。

うわー、これはちょっと楽しみだけど、どうなんですかねー。あのラストがどうなっているのか、すごく観たい。
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by rivarisaia | 2006-07-18 23:57 | | Trackback(1) | Comments(0)

コーデックス

古書が好きなのですが、古本というよりも「古い写本」の方の古書。いわゆるコーデックスと呼ばれるやつです。羊皮紙に描かれた写本とかクラクラします。ファクシミリ(写本の複製本)ですら、めまいがします。と言いますか、ファクシミリでいいので1冊欲しいくらいです。

そんな写本好きの私が昨晩一気読みした本が、『コーデックス(CODEX)』 レヴ・グロスマン(Lev Grossman)著 三川基好 訳 ソニー・マガジンズ刊。

ニューヨークに住む主人公は、ロンドンに栄転することになった投資銀行のアナリスト。休暇中に、大手取引先である公爵家の蔵書を整理することになってしまった主人公は、14世紀に書かれた幻の写本(コーデックス)を探すはめになる。主人公は中世学を専攻している女子学生に協力を求めるが、彼女はその写本は実在しないと断言する。しかし....

なんかさ、『「ダ・ヴィンチ・コード」を凌ぐ傑作サスペンス』という宣伝文句が怪しいんだけど...。もはや、「古い」「歴史」「謎」ときたら、『ダ・ヴィンチ〜』を引き合いに出すっつーのは、そろそろ止めた方がいいのではないかと思う。だって、ストーリーのタイプが全然違います。『ダ・ヴィンチ〜』が殺人とか派手なアクションが盛り込まれたノンストップ小説だったのに対して、こちらは地味です。人殺しもないし、アクションらしいアクションもありません。したがって、手に汗にぎるサスペンス的な話を期待してはいけません。

しかし、「稀覯本」や「写本」が出てくれば、とりあえず面白いと思える人は楽しめる本です。この「14世紀の幻の写本」の部分だけで私はしばらく余韻にひたってました。難点は、主人公に共感できないのと、最後が消化不良な終わり方であるところ。でもまあ、主人公はマネーゲームで出世している銀行員なので、共感できなくて当たり前だと考えれば、この終わり方はいい気味なのかもね。
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by rivarisaia | 2006-07-05 23:58 | | Trackback(1) | Comments(1)

家守綺譚

家守綺譚』 梨木香歩著 新潮社

夏になると1度読み返す本はいろいろあるのですが、そのうちの1冊がこれ。なぜ夏なのかは分かりません。何となく涼しげな文章だからでしょうか。梨木香歩さんの小説は全部好きというわけではないのですが、この本のゆるりとした世界観は結構気に入っています。

あらすじは書きようがないので、Amazonから内容紹介を引っ張ってきてみましょう。

これは、つい百年前の物語。庭・池・電燈つき二階屋と、文明の進歩とやらに棹さしかねてる「私」と、狐狸竹の花仔竜小鬼桜鬼人魚等等、四季折々の天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録。

何だそりゃ、と思うでしょうが、まさにそんな話です。河童と犬が仲良くなったりする話ですよ。主人公の綿貫君が飄々としていて好感がもてる上に、彼の日常がちいと浮世離れしているので、世俗的なことから逃避したい時の読書にもってこいです。
1章ごとに話が終わるので、電車またはバスで読むのもいいかもしれません。
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by rivarisaia | 2006-07-03 23:51 | | Trackback | Comments(0)

印鑑の本:伏廬璽印

数年前に上海の美術館ショップで購入した本で、タイトルは『伏廬璽印』。本棚の奥の方でひっそりとホコリまみれになっていたのを購入しました。
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上海書晝出版社より、1996年12月第1版発行。
いくらで買ったか覚えてなかったのですが、35元(500円くらい?)と奥付に書いてありました。
古璽印(昔の印鑑)をひたすら集めた本で、大きさはヨコ10cm×タテ11.8cm、厚さ4cm。全部で634ページもあります。
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そのうち621ページ分がこんな感じで印鑑の図案のみ。推測ですが、印鑑の大きさのバラツキ加減からして、実物大なのではないかと思われます。この本を見ていると、なんだか篆刻をやりたくなってくる。
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by rivarisaia | 2006-06-22 23:21 | | Trackback | Comments(6)

怪奇鳥獣図巻: 古代中国と江戸期日本のコラボレーション

あれは今から5年前、書店でたまたま見つけた本が『怪奇鳥獣図巻』(伊藤 清司監修、工作舎)。税込価格3,360円でございます。普段なら3000円以上する本の場合、購入前に悩んだりするのですが、これはめずらしく価格も見ずに買いました。「大和絵になった『山海経』の世界」とか「全76種、極彩色の中国妖怪カタログ」などという文句にクラッとしたせいかもしれません。購入後、会社の同僚と「どの妖怪がいちばんグッときたか」などという話題でしばらく盛り上がりました。だって変な妖怪連中がいっぱい出てるんですよ!漢字の名前や短い説明もなかなかおもしろい。

江戸の無名の絵師が描いた古代中国の妖怪を1ページに1匹、カラーで紹介していて、ページのレイアウト・デザインがきれいで見やすいです。さらに、「『山海経存』全188図400余種の妖怪図(モノクロ)」のおまけページ付き!なんだかよく分からないけど、お得な感じがするじゃありませんか。

ボーッとしたい、小説は読みたくないが何かをパラパラ見たい気分...といった時に今でも重宝している本でもあります。怖くはないので寝る前に見ても、うなされることはなさそうです。

詳細は、工作舎のウェブサイトでも見ることができます。
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by rivarisaia | 2006-06-02 23:10 | | Trackback | Comments(0)

米原さんのロシア

ロシアまたは旧ソ連は、私にとってまったく親しみの湧かない遠い遠い国でした。そんなロシアも何だかおもしろい所だな、と思うようになったのは、米原万里さんのエッセイのおかげだったりします。

同時通訳は言葉の能力も大事だけど、何より機転が勝負だと思うのですが、ロシア語同時通訳者だった米原さんのエッセイは、まさに機転がきいていて、どれを読んでも面白い。敢えて選ぶならば、通訳や翻訳など言語に興味がある人だったら、『不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か』(新潮文庫)はぜひ読んでおくといい1冊。ロシアのおもしろさを知るなら『ロシアは今日も荒れ模様』(講談社文庫)あたりでしょうか。エッセイではないですが、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)や『オリガ・モリソヴナの反語法』(集英社文庫)もおもしろい。

今日はメールで、電話で、打ち合わせ先で、「ニュースを見ましたか?」という会話が飛び交う1日でした。闘病中なのは知っていましたが、米原さんならきっと大丈夫と楽観してました。もっともっと読みたかったのに、とても残念。
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by rivarisaia | 2006-05-29 23:58 | | Trackback | Comments(0)

フーコーの振り子:虚構と真実

テンプル騎士団とか薔薇十字団などと言われると、必ず脳裏に浮かぶ本がウンベルト・エーコの『フーコーの振り子』。読んだのはもう何年も前なのに。

『ダ・ヴィンチ・コード』のようなノリの良さを期待すると、あまりの濃さに胸やけした挙げ句、全然違う系統の話なので肩すかしを食らうと思われるのですが、私はこの本が嫌いじゃない。

翻訳に難アリ、いやあの訳でいいのだ、読みにくい、時系列が混乱する、とにかく難解だ、話が下巻の後半までまったく展開しないではないか...という意見も多々あり、まあその通りだし、実際私も「南米の部分は不要では?」「さっぱり状況がわからん」と思ったりした記憶があるのですが、めくるめくオカルトワールドの洪水に飲み込まれた後で「秘密文書の正体」があっけなく判明した時の驚き(ここで怒った人もいたかもしれない)。しかし、嘘が一人歩きを始めた以上、主人公たちはもう後戻りはできないのであった。

ある意味、虚構(こじつけ)が真実になってしまうというホラー小説なのかもしれない。
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by rivarisaia | 2006-05-24 23:49 | | Trackback | Comments(2)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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