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迷宮のヴェニス

先日『赤い影』を紹介したついでに、ヴェネツィア舞台つながりで、こちらの作品を。昨年スキー事故で亡くなったナターシャ・リチャードソン(リーアム・ニーソンの奥様)が出ています。
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迷宮のヴェニス(The Comfort of Strangers)』監督:ポール・シュレイダー

原作はイアン・マキューアンの『異邦人たちの慰め』。迷宮のようなヴェネツィアを舞台にした迷宮入りの物語だからって、邦題が『迷宮のヴェニス』ってそのまんまですね。ま、いいか。

ヴェネツィアを旅行中の若いカップル(ルパート・エヴェレットとナターシャ・リチャードソン)。ふたりの間は微妙にすれ違っていて、かすかにほころびが見えつつある。ある日ふたりは、謎めいた夫婦(クリストファー・ウォーケンとヘレン・ミレン)と知り合いになるのだが…という話。

教訓:旅先で怪しい人についていってはいけません

小説のほうは、なにせイアン・マキューアンなので、いつものようにどす黒いもやもやした染みがじわじわとイヤーな感じに広がってとり返しがつかなくなる感じ(ホメてます!)を美しい文章で綴っていて、そこがなんとも居心地が悪くてたまらなくよいのですが、映画版にはそうした居心地の悪さはありません。が、ヴェネツィアの運河がどろりと淀んでいるかのような、イヤーな感じがすることには変わりない。

白いスーツのクリストファー・ウォーケンが見た目にも怪しすぎて、私だったらついて行かないけどね。まあでもルパート・エヴェレットだから仕方ないよね…と何故か納得できるキャスティング。

惜しむらくはラストでしょうか。「迷宮」という点では原作のほうが断然迷宮なんだよなあ。ウォーケンとミレンをそこで何故映す!と思ってしまった。あのふたりは煙のように消えてしまわないとだめです。そして「何だったんだ、アイツらは一体…」とみなで呆然とする、というのがヴェネツィアにはぴったりだったのに残念。
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by rivarisaia | 2010-05-30 16:45 | 映画/洋画 | Comments(2)

赤い影

閑散としたヴェネツィア、赤いコート、盲目の霊媒師、死んだ少女、連続殺人事件、袋小路、古い教会、割れるガラス…と謎が謎を呼ぶキーワード満載の映画。迷宮っていう言葉はヴェネツィアにぴったりだ。
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赤い影(Don't Look Now)』監督:ニコラス・ローグ

ダフネ・デュ・モーリアの短編小説『Don't Look Now(今は見るな)』が原作。はるか昔に読んだので内容をほとんど覚えてませんが、タイトルの「Don't Look Now」で始まる小説で、「今は見るなよ、向こうのテーブルに老婦人がいるんだけど…」と夫が妻に言う場面から物語がスタートします。映画版は、考古学者のジョン(ドナルド・サザーランド)が妻とふたりの子どもと休日を過ごしている場面からスタート。

ジョンはヴェネツィアの教会の修復を手がけているのだが、その教会の内部を映したスライドをチェックしていた際、うっかりお酒をこぼしてしまう。こぼれたお酒を拭いたところ、教会の椅子に座っている赤いコートの人物から血のような赤い液体がにじみ出る。


ここで不吉な予感がして家の外へ飛び出したジョンが見たものは、池で溺れている娘の姿でした。なんとか助けようとするも、時すでに遅し。身体を引き上げたときには、娘はすでに死んでいた。そのときジョンの娘が着ていたのは赤いコート。そうか、スライドに映った赤いコートとにじみ出た赤い液体は、娘の死の暗示だったのか…と誰もが思うわけですが、それもあるかもしれないけど、本当に暗示してたものはそうではなかった。

息子を寄宿舎に預け、傷心のままヴェネツィアへ行くジョンと妻。彼らはレストランでふたりの老姉妹と出会う。老姉妹の妹のほうは盲目の霊媒師で、ジョンの妻に「あなたたちのそばに赤いレインコートを着た少女がみえる」と告げる。


このあたりから、不吉な赤い死の影がちらちらとまとわりつきだして、なんともいえない不穏な空気が充満。老姉妹はもちろんのこと、閑散としたシーズンオフのヴェネツィアのホテルも怪しげだし、教会の神父も怪しげ、後で出てくる刑事も怪しげ。折しもヴェネツィアでは連続殺事件まで起きている。老姉妹に感化されて、だんだんおかしくなってくる妻。それともおかしいのがジョンのほうなのか。この先、一体何が起こるのか…。

結末を見ると、スライドが暗示してたことや水路で目撃した"ロンドンにいるはずの妻"が示していたことはこれだったのか…と腑に落ちます。虫の知らせはさんざんあったのに、解釈が間違っていたのか、嗚呼。間違ってしまったのは、何もかもが怪しすぎたせいですね、きっと。ドナルド・サザーランドが考古学者に見えないというのも怪しさ倍増でしたが、それは本筋とは関係ありません。
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by rivarisaia | 2010-05-27 16:06 | 映画/洋画 | Comments(4)

凝りもせず、スーパーの野菜を育てる第3弾。前回はキャベツの花が咲いたことを報告しましたが、今回は豆苗です。

豆苗って、炒め物にする際にざくっと切るじゃないですか。そのときに切り落とした種&根っこの部分を水につけて窓辺に放置しておくと、またいくらか芽が伸びてくるので、もったいないから家では2回食べてたんですよ。1回買えば、2回食べられてお得だね!みたいな感じ。

そして先日、ふと思った。これをこのまま食べずにいたらどこまで育つのか?と。

さすがに窓辺の水栽培では限界があり、イキのいい芽を4、5本選んで空いてる鉢に植えてみたところ…
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スクスクと成長して、花が咲きました。

こんな色なんですねえ。赤紫で綺麗ねー。ま、ふたつしか咲いてないけどね!このまま放置して実がなったりするのかはナゾ。

しかしさすがにマメ科だけあって、虫の被害もすごい。とくに何も対策してないせいもあるけど、さっそくエカキムシがたくさんとりついていた。エカキムシとはハモグリバエのことで、幼虫は葉の中にもぐって食い荒らし、その痕跡がまるで葉に絵を描いたようだから、エカキムシ。

こんな感じ。
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白いのが絵を描かれた、つまり葉を食べられた跡。幼虫はこの白い線の先端にいるので、その部分をぶちっと葉の上から指で押しつぶして退治します。それにしても、どこから嗅ぎ付けてくるのか、小さいくせに虫はすごいなあ。

そして本日のおまけ。根っこの部分を水につけておくと、とりあえずいろいろなものが成長することがわかりました。
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左はしは小ネギと小松菜、右は小松菜。切り落とした根の部分をつけておいたらなんだか伸びてきた。お部屋のグリーンとしてもいいよ! 食べられるし! 小松菜の葉はちょっと固いうえに、大きくならないけど。

スーパーの野菜を育てる1
スーパーの野菜を育てる2:キャベツの花が咲きました
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by rivarisaia | 2010-05-25 22:17 | 生きもの | Comments(0)

忘れないうちに感想を書いておこう。しかし、いつまでたってもタイトルが覚えられず、「つ、冷たい雨の銃弾の約束を撃つ…あれれ?」みたいな感じ。『復仇』でいいじゃん。

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冷たい雨に撃て、約束の銃弾を(復仇)』監督:ジョニー・トー

マカオに暮らす娘の家族が何者かに惨殺され、復讐を誓ったフランス人コステロ(ジョニー・アリディ)。しかし、言葉も通じない異国の地で右も左もわからないコステロは、偶然出会った3人の殺し屋(アンソニー・ウォン/黄秋生、ラム・カートン/林家棟、ラム・シュー/林雪)に仕事を依頼するが…


トーさんの映画には「香港やマカオを舞台にした現代版西部劇」という香りが漂う作品があって、香港やマカオという最高にノワールな場所に、正義、約束、そして仁義がぐるぐると熱帯台風のように渦巻いてるというのが、もうたまらないですね! 自分でも何言ってるのかよくわからないけど、ふつふつと静かに沸騰する熱き血潮ですよ。はっはっは。

本作のキャッチコピーでバレバレですけど、本作のキモはコステロことジョニー・アリディがある秘密を抱えていること(別に極秘レベルの秘密ではないけど)。そういうことなら、なにも自分たちの命を犠牲にしてまで他人のために復讐しなくたっていいんじゃないのか?と思うところですが、そこには仁義がありますからね。男は一度交わした約束は命にかえてでも守るのだった。最近は仁義のカケラもない人たちが多いですからねえ、そういう輩はとくと本作を見て出直してくるがいいさ。

今回のみどころは、野原での四角いゴミキューブがごろごろと迫ってくる銃撃戦。見晴し台ではワハハハハ!と高らかに笑うサイモン・ヤム(任達華)、舞うゴミ吹雪。嗚呼…。

途中、「コステロさん、そんなところにいつまでも座っていたら、溺れ死んじゃうよー!」というナゾな演出もありましたが、トーさん映画特有の侠気と友情を堪能できて、大変よかったです。相変わらず、料理の場面はどれも美味しそうだし。海辺の子どもの家のおかずは何だったんだろう。のどかな日々と美味しい食事でコステロに心の平穏が訪れるといいのですが。フランスの娘とはいつか再会できるのだろうか。
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by rivarisaia | 2010-05-23 15:14 | 映画/香港・アジア | Comments(0)

天使と悪魔

もはやどうでもいい映画なんですけど、そしてもっとおすすめしたい映画の感想を先に書けよ、とも思うけど、久々に、途中で観るのを止めようかと思ったほどの苦行映画だったので、記録しておきたい。ほとぼりも冷めてるし、けっこう内容に触れます。そして本作を好きな人、ごめん。
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天使と悪魔(Angels & Demons)』監督:ロン・ハワード

ダン・ブラウンの原作を読んだときは、後に映画化された『ダ・ヴィンチ・コード』よりも本作のほうがおもしろく読めたんですよ。映画化を狙っているのでは?と勘ぐってしまうほどのハリウッド映画的展開には苦笑したけど。

しかし、そんなハリウッド映画的展開の小説が実際に映画になってみたら、端折っているせいなのか、たいそう目まぐるしいわりには、おそろしく退屈であった…。

さらにトム・ハンクスが徹底的にミスキャストだと、わたくし確信しました。トム・ハンクス自体は嫌いじゃないけど、ラングドンには向いてない。奴がいちいち蘊蓄を披露するたびにイライラするんですよ。あれだけ蘊蓄を語るくせに、イタリア語もラテン語もあまり得意ではないご様子な点も見受けられ、いくらなんでも、それはナイだろ!とイラが絶好調に。原作のようにラングドン教授のヘリから脱出シーンがあったら興ざめするところだったので、あの場面をいさぎよくはぶいた点はよいと思う。

これがもしハリソン・フォードだったら、ここまでイライラしないのではないかという気もします。蘊蓄を語ろうが、専門分野に関する言語が苦手だろうが、ガリレオの文書になぜか英語が書いてある!などと都合のよい展開になろうが、ハリソンだったらたぶん笑って許せる。ヘリから飛び降りたシーンがあったとしても、ハリソンなら問題ないはずだ。

そんなわけで、途中からハリソン・フォードだと思うことにして観ることにしました。が。何と言いますか、犯行の計画自体が壮大な割にはあまりに無理矢理で何がしたかったのかよくわからない話になっていて、もうどうでもいい気分に。

唯一、楽しかったのは、枢機卿がぞろぞろといっぱい出てくるところ。 わーい緋色の枢機卿が大勢!
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最後に、トム・ハンクスに神経逆なでされてた私は、貴重な文書をそんな奴に貸すなよ、ヴァチカン!と突っ込みましたが、あれは、ヴァチカンが一枚上手で、密かに制作したファクシミリ版を貸したのだと考えることにしました。頼むからそう思わせてください。
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by rivarisaia | 2010-05-19 18:55 | 映画/洋画 | Comments(8)

ファンボーイズ

残念ながら期間限定の劇場公開には行けなかったんですよね。しかし、泣けた。スター・ウォーズファンによるスター・ウォーズファンのための映画。
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ファンボーイズ(Fanboys)』監督:カイル・ニューマン

1998年、末期ガンで余命数カ月である友人に公開前の『エピソード1』を見せるべく、ルーカス・フィルムの本拠地・スカイウォーカーランチを目指すSWファンの珍道中。


とてもバカバカしく(ホメてます)、とても愛に満ちあふれており、全世界のSWファンが共有したであろう『エピソード1』公開前のあの気持ちがよみがえりました。

思えば、「どうやら1〜3を本当につくる気あるらしい」というウワサの段階から、「製作決定!きゃっはー!」とウワサが現実になって公開されるまで、ほんっとに長かった。その長い長い期間、「SWってノベライズもあるけどさあ、ぶっちゃけ映画3本しかないじゃん。飽きないわけ? こっちはTVシリーズだけでも豊富にそろってるからね」とスタトレ・ファンに突っ込まれるたびに、歯ぎしりしながら何度も何度も繰り返しep4〜5を観て、未知なる1〜3の物語を妄想して過ごしてきたわけですよ。観るまで絶対に死ねない、と思った人も多かったはず。

それが、公開までたぶん生きていられないとなったら、そりゃもう何としてでもスカイウォーカーランチに忍び込むしかない。それが『エピソード1』のためだとしても。

私にとってSWに関するもっとも至福のときは、いまはなき新宿スカラ座の『エピソード1』先々行上映で、まさに場内が暗くなった瞬間。あのときの場内の一体感ときたらなかった。この瞬間のためにここまで待ったんだと涙した。つまり『エピソード1』については、その出来不出来や、ジャージャーがむかつくといったことは関係ない。待ちこがれてた16年もふくめて『エピソード1』。そういう意味で、『ファンボーイズ』の彼らにとっても『エピソード1』は心に残る作品になったに違いありません。

本作はもちろんSWファンにとってグッとくるネタ満載でしたが、実はトレッキーにとっても(トレッカーと言わないとダメなんですか?)笑えるネタ満載なので、スタートレック・ファンも楽しめると思うよー。
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by rivarisaia | 2010-05-17 18:42 | 映画/洋画 | Comments(2)

またもや毎年恒例「ジロ・デ・イタリア見ながらイタリア1周旅行気分になる月間」に突入してます。今年はなーんとオランダからスタートなので、オランダの風車や運河などもゆったりと眺めつつ…なはずが、

オランダでは恐ろしいほどに落車の嵐が吹き荒れた!

故に、のんびり風車を見てる余裕はなかった。ほとんど平坦なのに、なぜ…。そこには、風だけでなく、突然現れる中央分離帯という罠が。

そして、一昨日からレースはイタリアピエモンテ州に入りまして、これから南下してまた北上し、ゴールはロミオとジュリエットの町、ヴェローナです。

そして今日、いや昨日の第5ステージは記念すべき歴史的なレースになりました。

去年のツール・ド・フランスでも活躍した新城幸也(あらしろゆきや)選手が、今年のジロに出てるんですけどね、スタート直後から抜け出して、147kmを逃げ続け、最後は惜しくも、でも逃げ切っての3位でゴールだよ!

147kmを逃げ続けるってすごいですよ。そして最後、後方から迫り来る大集団に先頭の逃げの3人が吞み込まれてしまうのか、ああ!という、まさに残り1km切った段階でアタックするというあきらめない勇気に、おそらく見てた人はいっせいに歓声をあげたに違いない。イタリアでも。

大集団が後から迫ってくるとこういう状態。
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この時点で先頭を走っているのが新城選手。

ステージ優勝を果たしたのは、新城選手と一緒に逃げてたピノーですが、新城が最後にアタックしてなかったら、みんな後方集団に飲み込まれてたと思う。最後まで先頭を引っ張って優勝できなかったのは、悔しい。けど、ここまで引っ張り続けたことも、3位でゴールというのも快挙だよ。すごいよ!

当然ながらTV画面には新城選手が走っている様が映りっぱなしで、世界最高の自転車レースこと、グランツールのジロで日本人の活躍が見られる日が来ようとは…と感慨深い気持ちでおりました。

ふふふ。そして当然ながら現地のGazzettaにも「GIAPPONESE IN FUGA(日本人が逃げ切り)」の見出しが。コチラです。動画も見られますのでどうぞ。

まだ21ステージあるうちの第5ステージなのに、いろいろありすぎて自分の気力がつづくかどうかも不安だ…。
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by rivarisaia | 2010-05-14 02:41 | 日々のよもやま | Comments(6)

短編集『修道女フィデルマの叡智』がおもしろかったので、長編はどうだろうかと手を出してみたところ、一度読み出したら止まらない。滅法おもしろいので、邦訳でてる分をまとめてドーンと紹介。

邦訳はシリーズ順に刊行されていないので、ここではシリーズ順にならべてみます。
原書の1作目と2作目はまだ邦訳が出ていません。

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第3作目『幼き子らよ、我がもとへ
次期国王である兄に呼ばれ、モアン王国内の修道院で起きた殺人事件の調査を依頼されるフィデルマ。殺されたのは隣国の高名な人物であるため、事件は二国間の戦争に発展しかねない状況にあった…


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第4作目『蛇、もっとも禍し
女子修道院の井戸で頭部のない女性の死体が見つかった。事件の調査に派遣されるフィデルマ。船で修道院に向かう一行は、途中、無人の帆船に遭遇するという奇怪な事態にも遭遇する…


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第5作目『蜘蛛の巣
アラグリンの谷で、その地を支配する族長と彼の姉が殺された。族長の妻の要請でフィデルマが現地に赴く。容疑者はすでにとらえられていたが、フィデルマは疑問を抱き…

以上、すべてピーター・トレメイン著、
甲斐萬里江訳、創元推理文庫


ミステリーの謎解き要素もとてもおもしろいのですが、キリスト教が広まっても、まだまだ古代ケルト文化が色濃く残っている7世紀アイルランドが舞台というのが、本当に読んでいて楽しいシリーズ。

作者のピーター・トレメイン氏がケルト学者なので、きちんとした知識に裏打ちされた設定がここまでおもしろく読ませるのだと思う。あとは翻訳者の甲斐萬里江さんのていねいでわかりやすくためになる訳注。特殊な用語もたくさん出てきますが、慣れます。なので、いちいち訳注にいかないで、全部読み終わってから訳注をまとめ読みしても楽しいという、二度おいしい本。

尼僧であると同時に、アンルー(上位弁護士・裁判官)の資格をもった法廷弁護士で、さらに次期王の妹君、ついでに美人で護身術も達者、という向かうところ敵なしのフィデルマは、相変わらず偉そうな面もありますが、それにもすっかり慣れました。フィデルマでも寝過ごしちゃったり、二度寝したいと思ったり、後悔したりするんだな、と妙に親近感さえ湧いた。

また、フィデルマよりも高圧的で傲慢で、おまけにフィデルマと違い思慮が浅い人物も多く登場するので、「フィデルマ、そこでガツンと言ってやれ!」という気分にもなろうというものです。

そして毎回思うのですが、当時のアイルランド教会(ケルト教会)とローマ教会の違いが非常に興味深い。フィデルマが活躍しているように、実際に当時のケルト教会は男女の地位に差がないし、障害者などへの差別に対しても罰則があるし、考え方がローマ教会よりも柔軟で先進的なんだよなー。ローマ教会ったらほんとに…(以下自粛)。

修道院が舞台になることも多いのですが、修道院と切っても切れない関係にある「図書館」も出てくるし、当然、重要な小道具として写本や木簡に書かれた昔の本が登場する。なんて楽しいんだ! ちなみに、当時のアイルランドでは、

ヴェラムの書籍は、本棚に並べるのではなく、一冊あるいは数冊ずつ革製の専用鞄におさめて壁の木釘に吊り下げる、という収蔵法を、よくとっていた。(訳注より)


そうです。一瞬中世のガードルブックの大きいバージョンみたいなものを想像したけど、ガードルブックは、専用鞄じゃなくて表紙が伸びてるのでちょっと違いますね(Wikipediaにも説明があります)。本がたくさん吊り下がってる図書館、見てみたい。

英語版だとすでに20冊近く出ているので、邦訳も続きが早く出ないかなーと待ち遠しい!

●フィデルマシリーズ
短編集『修道女フィデルマの叡智
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by rivarisaia | 2010-05-11 18:56 | | Comments(0)

本日もニコラ警視シリーズ。本作では美味しそうな料理の描写がパワーアップ、いつものように簡単なつくり方まで台詞で言ってくれる箇所もあり、本当に読んでいてお腹がすくシリーズだ。
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ロワイヤル通りの悪魔憑き』ジャン=フランソワ・パロ著、吉田恒雄訳
ランダムハウス講談社

なんと第2巻からいきなり9年後の1770年。王太子とマリー・アントワネット成婚宿が花火大会の大惨事から幕を開けます。大惨事が起きた原因究明と、無数の死体の中で発見された不自然な扼殺死体の謎を解くのがニコラのお仕事。

超常現象が起きるという設定が、ちょっとええー?と思ったけど、悪魔祓いの場面はおどろおどろしいし、仕立て屋や薬局の描写にわくわくする本作。

また、今回はサンソンの隠れた一面をニコラが知る、という箇所が出てきます。私もニコラとともに「へええ」と驚いたのですが、『死刑執行人サンソン』にも同様の話が収録されておりました。

本書に登場する仕立て屋の親父は、サンソンは流行の最先端にいる人だと語るわけですが、サンソンが取り入れた蚤色の変わった裁断の服装がド=リトリエール侯爵の目にとまり、「サンソン風」として流行したんだって。へええ。

国王の寵妃としてポンパドゥール夫人に代わりデュ=バリー夫人が登場。最後に意味深な一言が発せられるけど、今後ニコラが夫人と関わる場面が出てくるのかしら。花火大会の大惨事からはじまるせいか、パリの街になんとなく不穏な気配が漂いつつある、という感じです。革命は19年後ですが。

そして気になるのは、本書のあとがき。「続篇をいつか紹介できればと思っている」とあるのですが、続篇の刊行が決まってないってことなのかな。続き出してほしいなー。

ニコラ警視シリーズ
●第1巻『ブラン・マントー通りの謎
●第2巻『鉛を飲まされた男
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by rivarisaia | 2010-05-10 14:33 | | Comments(2)

鉛を飲まされた男

ニコラ警視シリーズって、私は1冊目の『ブラン・マントー通りの謎』しか紹介してなかったのね。原書はいまのところ8巻まで出ているようですが、邦訳は3巻まで出てます。

まず第2巻。
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鉛を飲まされた男』ジャン=フランソワ・パロ著、吉田恒雄訳
ランダムハウス講談社

TVドラマ版の第1話〜2話になっていた話が本書です。

ニコラが故郷からパリにやってきたのは1759年末頃。15ヵ月の修行の後、特別任務を手がけることになったのが1761年2月の話でした(第1巻)。本書はその少し後、1761年10月末に起きた、伯爵子息の謎の変死事件です。

しかし私にとって、このシリーズの魅力は事件とその謎解きの部分よりも、18世紀パリの雰囲気のほうが大きい。

高貴な方々は、皆さん単刀直入にズバズバ話したりしない上に、もってまわった言い方を好むので、真意がよくわかんなかったりすることもあるんですが、そこが逆におもしろい。ニコラも1巻での事件を解決した手腕が見込まれて、国王や警視総監からも信頼を得ており、本作ではポンパドゥール伯爵夫人の屋敷に呼ばれたり、ヴェルサイユに呼ばれたりと大忙しですよ。いやあ、ヴェルサイユは広すぎて迷子になりそうな場所だこと。

そして相変わらず、なんといっても料理が美味しそう! 料理人カトリーヌのつくるごはんも食べてみたいし、肉屋街にあるモレルの料理屋にも行ってみたい。モレルさんの特別メニュー、豚レバーの団子のクレープ包み焼きは「皿まで嘗めちゃうくらいおいしい」そうですよ。モレルさんのところでは残念ながら葡萄酒は出せないので、林檎酒でどうぞ。

そして本書を読んだ後は、朝ご飯にココアと焼きたてのパンが食べたくなるのでした。


●ニコラ警視シリーズ
第1巻『ブラン・マントー通りの謎
第3巻『ロワイヤル通りの悪魔憑き
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by rivarisaia | 2010-05-09 16:47 | | Comments(0)