「ほっ」と。キャンペーン

日本のインターネットサイトに期待してないのに、いつまでもしつこくて申し訳ないんですけど、ニュースソースの二次使用の記事で首をひねることがあるんですよね。

たとえば読売の1月29日のこの記事。リンク切れになる可能性を考えて引用します。

見出し:ファラオのミイラ2体破壊、エジプトデモ暴徒化

カイロの商業地区では28日夜から29日未明にかけて、暴徒化したデモ隊が商店を次々と襲撃、携帯電話や家電製品の販売店、衣料品店などのガラスが破られ、商品が略奪された。

ロイター通信によると、デモ隊の一部が28日夜、カイロ中心部にあるエジプト考古学博物館に侵入し(以下略)


ロイターのどの記事が元なのか、ロイタージャパンか英語版はわかんないけど、1月29日の該当する英語版の記事はこれかな?
見出し:Looters destroy mummies in Egyptian Museum: official


アルジャジーラの中継やBBCやガーディアンを見てた人はわかると思うんだけど、かなり現場は混乱していて、略奪が行われているが、どさくさ紛れの略奪者かもしれないし、政府の指示なのか不明だけど私服警官が行っている可能性もある、という情報が飛び交い、同時にデモを行っている市民も軍隊とともに博物館を守ろうとしているというニュースも流れていたんですよね。

それを受けてか、英語メディアでは、「protester=抗議をしている人」と「looter=略奪者」という言葉を使い分けています。デモにまぎれて「looters」が出ています、とは言ってたけど「暴徒化したデモ隊」っていうのはどこから来たんだ?

同時にデモの参加者が自警団を組織してることも言ってたよね。そのあたりの報道は入れ込まないのかな。2日前の日本の記事は海外の報道からひっぱってきてるのもあるけど、どういう意識で記事として書きかえてるのかな。謎。

今日、アルジャジーラはエジプト政府から活動禁止命令が出されました。その時のアルジャジーラのDan Nolan氏の一連のツイート(その1その2その3その4)をみると、8人の私服の治安警察がきて激しい議論があり、これまで電話も盗聴されていたと。

どうするのかと思いきや、がんばって現在も中継続けてる。すごい!

さらに Democracy Now! のシニアプロデューサー Sharif Kouddous氏もカイロ入りしたよ。彼のツイッターはコチラ
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by rivarisaia | 2011-01-31 01:02 | 日々のよもやま | Comments(0)

さて、昨日のつづきです。

エジプトとは時差があるけど、ニュースなんだから時差は関係ないうえに、時差の問題がなくても、海外のニュースに関して常に日本の反応は薄いか遅い。たとえば、去年フィリピンで起きた、香港人観光客が死亡したバスジャック事件のときも日本の報道はお粗末だったし、フランスやイギリス、イタリアで起きた学校デモもきちんとした報道がされてない。

ゴールデンタイムにそればっかり報道しろと言ってるわけではないんです。情報を探しているのに、見当たらないことが問題なんです。今回のエジプトは5日が経過しましたが(最初のデモは25日)、インターネット上での日本のニュースサイトは5日も経ってるのに、使えない。

いっぽうで。

Twitter でもつぶやきましたが、Al Jazeera がぶっ通しでエジプト各地からライブストリーミングを配信し、クリエイティブ・コモンズで動画を公開していたり、guardian や BBC の速報ページがよくできていたりすることに感心してます。

時間が経つとリンク切れしそうですが、たとえば guardian のブログ速報はコチラ、BBC の金曜のブログ速報はコチラです。1日ごとにライブページが構築されてます。

どちらも見やすくわかりやすいユーザーインターフェース。動画やTwitterとうまく連動して、エジプトの状況や各国政府の反応などを簡潔かつ迅速に伝えてます。すばやくこうしたページを開設し、的確に運営する体制がある、というのがうらやましい。現地入りしてるジャーナリストで、社名も表に出して Twitter でどんどん発信してるのも海外の人ばっかり。

こうしたシステムをつくることは難しくないけど、システムをつくることと、その目的を理解して使いこなせる「中の人」が存在するかどうかは別問題です。日本はシステムを手にすることはできても、使いこなせる体制が報道機関内にないのでは?

ところで今回の中東での一連の動きで、facebook などの SNS やインターネットの果たした役割が指摘されています。ただし、ネットは新たな手段のひとつであって、手段というのはいかようにも活用できるので注意が必要です。使いこなせないことだってあるし、逆に民衆がうまく使えるなら、政府もうまく利用できるわけだ。

インターネット、特に Twitter は間違った情報が、悪意のある人や早とちりな人によってあっという間に拡散しやすいツールでもあります。便利な道具も最終的には使う人次第なんだよね。ただし、きちんとした情報が多く存在すれば、間違った情報は追いやられていくものです。

私が複数のニュースソースを見比べるのも、何が起きているのか実際のところは、時間が経たないと見えてこないこともあるので、ある程度の距離をおいて傍観しつつ判断するしかなく、それには比較対象が多いほうがいいからです。

が、日本の報道はすでに述べたようにリアルタイムでは使いものにならない。ピントがズレてるか、二次報道ばかり。外国語で情報を得ようという力や意欲がありゃいいけど、そうじゃない人はどうすんだ。日本の報道機関に見切りをつけて、みずから翻訳して発信してる人もどんどん現れてるけどね…。


●おまけ

1. ネットの役割が取りざたされているなか、"Egyptian protesters are not just Facebook revolutionaries" というガーディアンの記事もありました。

2. 今回の件で、もっとも戦々恐々としているのはおそらく中国。Twitter 経由で拾った情報によると、中国では「エジプト」という言葉で検索できない規制がかかってるみたいだけど、さっそく抜け道が考案されたうえ、アルジャジーラの中継も見ることが可能だったりするそうな。しかしこのタイミングでカイロ国際ブックフェアの開催日程が1月29日から2月8日までとなっており、さらに Guest of Honor が中国とサイトにあって、あららー。

3. 記憶にある限り、めったやたらと日本の報道に力が入ってたのは9/11の時くらい。なんだろね、この落差。しかしやたら煽る姿勢だったり、偏ってる報道が多かったんだよな。あのときに日本ダメかも、と実感しました。
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by rivarisaia | 2011-01-30 15:11 | 日々のよもやま | Comments(0)

チュニジアの政変を受けて、1月25日にエジプト各地で大規模な反政府デモが行われました。そして次は1月28日金曜の礼拝後にさらに大きな抗議活動が行われるだろうという話をTwitter上で目にしていました。

そして昨日、そういやエジプトはどうなったかな、とニュースサイトやらTwitterやらをチェックしはじめたら、どんどん事態が大きくなっていて、明け方まであちこち追っかけながらクギづけになってしまいました。エジプト情勢は現在も進行形です。

ところで、こういう事態が起きたときにつくづく実感するのが、以前も書いたけど、日本の報道は反応が遅いうえに詳しい状況が伝わってこず、使えない、ということ。

今の中東の動きは西欧の動きとも直結するし、ひいては日本にも影響するので重要だと思うんですけどね。

ということで、日本の報道にはもはやあまり期待してないので、海外ニュースはもっぱらインターネットでチェックしています。英語ならCNNBBCguardianThe New York Times あたり、Anderson Cooper のポッドキャスト、イタリア語なら La RepubblicaCorriere della Sera あたり、それに各社の Twitter アカウント、そして時に応じて他のニュースサイト。今回なら Al Jazeera とか。

これらのニュースサイトとくらべると、日本の報道の伝える姿勢のダメな部分がさらに実感されて、なんだかなあという気分。

まさに今、アルジャジーラのライブストリーミングがすごいことになってきているので、この件、続きはまた明日。

英語のライブストリーミングは以下のURLです。
http://english.aljazeera.net/watch_now/
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by rivarisaia | 2011-01-29 23:56 | 日々のよもやま | Comments(0)

突然ですが、私は数学が苦手だ。数学というよりも、算数からして苦手。1の位が繰り上がる計算は、7+5みたいなひとけた同士の足し算でも咄嗟にできないし、12−9のように隣の位から借りてくる引き算もじっくり考えないとわからない。

何故か因数分解はけっこう好きだったけど、幾何学や微分積分となると完全にお手上げで、高校時代の数学の授業は教科書の下でかくれて読書する時間と化していた。だってわかんないんだもん。

そもそも「1/3×3=1」なのに、「1÷3×3」も3を消せば1になるが、頭から順繰りに計算してしまうと「0.999999…」なことからして理解できない。足りない分はどこに消えたのか。

そんな私がどうしたことか、ユークリッド幾何学の本を買ったのである。

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Six Books of Euclid』Werner Oechslin著、Petra Lamers-Schutze編集、Taschen

よくわからないが1847年に英国で発行されたという謎の数学者Oliver Byrne氏によるユークリッド幾何学の本の復刻版。布張りの黒々としたデカくて重い箱に入っている。この豪勢なつくり。でも出版社がタッシェンであり、Amazonの割り引きを活用すると、お値段は大体3800円くらいとお得である。さすが、タッシェンですね!

箱をあけると、ハードカバーの復刻版と、ソフトカバーの薄い解説本が入ってます。
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解説本は英語/ドイツ語/フランス語の三か国語。ちょっと読んでみたけど、ええと、うん、もっと頭が冴えてるときに読むことにしますね…。

肝心の復刻版の中ページですが、この本を著した Byrne氏は、できるだけ文章を少なく、そしてたくさんの図版を使って、しかもカラフルな色使いで学生に向けて幾何学を紹介した。それはちょっと楽しそう。私にもわかるかもしれないじゃないですか。
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これはよさそうですね。何が書いてあるのかよくわからないけど、少なくとも私の学生時代に使ってた教科書よりはわかりやすそうだ。

もっとページをめくってみます。
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同じ色が同じ角度ってことなんだよね。なんかよくわからないけど、これなら勉強する意欲が湧くかもしれませんよ。

こちらの本の中ページは、ブリティッシュコロンビア大学数学科のサイトのこのページでも見られますよ。幾何学の勉強にお役立てくださいね!
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by rivarisaia | 2011-01-26 23:58 | | Comments(0)

映画としてはよく出来てるけど、どうも見終わった後にすっきりしません。自分でも理由がよくわかんない。おもしろかったけど「So what?」とも感じました。ふむむ。

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ソーシャル・ネットワーク(The Social Network)
監督:デヴィッド・フィンチャー

このすっきりしない気分はどうして!?とぼんやり検索かけてて、自分の気持ちに近いと感じたのは、ガーディアンのアンドリュー・クラーク氏の批評。特に最後。

But does a 26-year-old businessman really deserve to have his name dragged through the mud in a murky mixture of fact and imagination for the general entertainment of the movie-viewing public?


そうなんだよな、存命中の人物でも検証済みの過去完了の話だったり、もうちょっとフィクション的な要素のある演出だったらまた違ったかもしれなけど、妙にリアルなドキュドラマのせいなのか、主人公も周囲の脇役もバリバリ現役で若いのに気の毒…。

あとは、facebook を取り巻く現象が、私にとってはけっこうどーでもいいというか、興味対象外の事象というのもあるかも。

映画自体は、非常にアメリカ的な映画でした。特にアメリカの大学生活を知っている人は「うわああ〜」となる箇所があるはず。あとアメリカの大学のフラタニティやソロリティをわかってないといまひとつ実感できない部分もあるとみた。

フラタニティとソロリティについては詳しくは割愛しますが、イギリスの話から階級制度が切り離せないように、アメリカの大学生活を描くにあたって絶対に切り離せない要素であることを実感しました。ただ私はそれらに対して個人的な経験からかなり差別的であるので、それだけで双子とその友人、主人公の親友エドゥアルドに対して「けっ!」と小馬鹿にしたフィルターをかけてしまったことも白状しておきます。双子のひとりは当初「ジェントルマンは訴えるなんてことしません」と言っていて、一瞬好感度アップしたんですけどね…。

エンディングもアメリカ的だったというか、構成としてあれしかない終わり方ではありましたが、実際には意地でもフラれた女に友だち申請なんてしないと思うけどね。向こうから申請されてもほくそ笑んでこっちからお断りだよね、ふつう。

以下は余談ですが、本作でもっとも不満だったのは、ソニーの映画だからなのか、Macの扱いが酷かった点です。

あんなにMac率が低いわけないじゃん。さらに2度ほど大写しになったMacが、1台はリンゴマークの葉っぱで見切れていて、2台目のiBookはありえないほどデカイシールでリンゴマーク全体を隠していた。あとは途中でぶっこわされるラップトップがAppleじゃないことを祈るのみですが、アルミ製に見えたので不安です。
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by rivarisaia | 2011-01-24 18:12 | 映画/洋画 | Comments(0)

アンストッパブル

元旦からずるずると風邪を引いてて、さあ治ったやったー!と思ったら雑事に追われてバタバタしてしまい、ついに先週のある時点で発狂しかけて映画館へと暴走した私が観たのは暴走列車の映画。初映画館が暴走列車。今年は1年間暴走しそうな予感。
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アンストッパブル(Unstoppable)』監督:トニー・スコット

デンゼル+トニー・スコットは、前回の地下鉄映画が個人的には今ひとつで(悪くはないかもしれないけど、オリジナルのラストがとても粋で大好きなものですからついくらべてしまいまして)、しかしまた電車物かよ! いや今回は燃料で動く列車であって電車じゃないんだけど、どっちかが train freak なのか?などと妄想したほどです。

それにしても、今回のこの映画はおもしろかったです。観賞後にあまり深刻に考えたりせず、単純にスカーッとパーッとしたかった気分の私にピッタリ。正直、けっこうハラハラしました。止められるのか、その走るミサイルとやらを!と。

ストーリーは王道です。それも私の好きなパターンです。つまり、

小さなミスが大きな事件につながる(今回はヤル気のないボンクラなデブのせいです)
 ↓
司令室にいるデキる人間が指示飛ばす
 ↓
上層部は現場をまるでわかっちゃないバカばっか
 ↓
結局、司令室にいるデキる人間と現場のデキる人間が何とかする
 ↓
無事解決

という流れですが、無駄がない。

今回の現場で活躍する人たちは、熟練機関士(デンゼル・ワシントン)と新米車掌がメイン、そして脇役で、かなり早い時点で事態を察知する溶接工のおっちゃん(私はこの人が気に入った)です。

最初のうちは、ベテランであるデンゼルのアドバイスに対して新米車掌は「うぜぇ」という態度を取り、確認ミスをやらかすのですが、そのせいでかなりきわどいことが起きたりもします。

いるよね、自分の確認ミスなのに「やり直したらいいじゃないすか」って簡単に言う奴! お前が言うな、みたいな奴ねー。そんな新米車掌にイラッとしますが、彼はデンゼルというすばらしい先輩のおかげで後半ちゃんと持ち直すので大丈夫です。

現場の言うことはちゃんと聞いとけ、あとベテランは大事にしろよな!だてに年季入ってるわけじゃないんだぜ!と、新米社員のみならず、人件費削減でベテランやら現場をお荷物扱いしがちな企業のトップに立つ方々にもよーく伝えておきたいところです。

現場の立場の人は溜飲下がる結末でもありますので、スカッとしたい方はぜひどうぞ!
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by rivarisaia | 2011-01-22 22:22 | 映画/洋画 | Comments(2)

すごい本を買いました。世の中には変な人がいっぱいいる。そしてこの英国人も変。郵便局へ挑戦を挑み続けた男。おそらく彼は帳面派でもあったことだろう。

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The Englishman who Posted Himself and Other Curious Objects
John Tingey著、Princeton Architectural Press

題名は「自分自身とそのほかの変なモノを郵送した英国人」。私はこの「自分自身を郵送」っていうのが何を言ってるのかよくわかりませんでした。本書を読むまでは。

イギリスの中産階級の会計士、Willie Reginald Bray氏 (1879-1939) は、1898年に『Post Office Guide』つまりイギリスの郵政省が発行している「郵便の手引き」を入手する。そして、彼はいろんなものを、いろんな方法で、郵送できると知り、郵便局の極限を試すかのごとく、「これでも郵送できるのかい?」という実験を開始するのであった。

世の中にはメイル・アートというものが存在するが、彼の場合はなんというか、アートというより実験に近い。ものすごい数のあらゆる種類の郵便実験。

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変わった物体を送るのはもちろんのこと、変な宛名書きをする(刺繍や絵文字で宛名を書く)、奇怪な住所宛に送る(○○駅××鉄道△号の機関士宛とか※上の写真)、自分が行ったことのない場所からそこに行かずして自分宛に葉書を送る方法を複数編み出す、などなど、郵便局員にとってはハタ迷惑だったのではないか?と心配になるような実験を繰り返しているのである。

挙げ句、彼はペットの犬を自宅に郵送し、ついには自分自身も自宅宛に郵送するということをやってのけた。それも三回も。

このページに出ている写真が、「公式に郵便として受け付けられ、郵便局員に自宅へと配達されたBray氏」のようすである。

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中央に自転車を支えて立ってるのがBray氏。奥の玄関先には受領書もらってるような雰囲気の郵便局員の姿が。

ええっと、会計士って変な人多いんですかね。『キック・アス』のビッグ・ダディも会計士だったしさ。

また彼は稀代のサイン・コレクターでもあり、「サインして送り返してね」と有名人や政治家、王室などに遠慮なくハガキを送りつけてサインを集めまくった人物でもある(サインはいたしません、という断りの返事も蒐集された)。

彼のライフワークであった膨大な郵便実験プロジェクトとサイン・コレクションは、彼の死後、バラバラにオークションで売られてしまったが、使用済み切手コレクターである本書の著者が、偶然入手したいくつかの使用済みハガキをきっかけに、彼の存在に気づいて腰を抜かした、という次第なのだった。

Bray氏の数々の郵便プロジェクトとサイン・コレクションは著者のサイトでも見ることができるので、興味のある人はどうぞ。
リンク先:www.wrbray.org.uk

もしあなたがイギリスの使用済みハガキを入手して、そこにBray氏の名前を発見したなら、ぜひともご一報を!

追記:基本、ビジュアル書に近い構成なので、文章は少なく、図版が多いのですが、いかんせん図版はハガキ。写真を眺めるというよりも、キャプションと説明文もあわせて読むと楽しいですよ。
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by rivarisaia | 2011-01-20 23:04 | | Comments(2)

最近は帳面派を扱う本が、特に海外ではいっぱい発行されていて、内容の善し悪しもピンキリなのですが、これはなかなか切り口がおもしろいです。

ずばり、リストの本。
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Lists: To-dos, Illustrated Inventories, Collected Thoughts, and Other Artists' Enumerations from the Collections of the Smithsonian Museum
Liza Kirwin著、Princeton Architectural Press

サブタイトル長いですね。スミソニアン博物館のコレクションから、主に芸術家の方々69人のTo Doリストや、イラストの一覧表、覚え書き、目録などを集めて1冊の本にしました、というものです。

ページ構成はこのように見開きで、
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左ページにリスト制作者の紹介とリストの内容の説明、右ページにリストの画像が掲載されています。これはアレクサンダー・カルダーの展覧会用のメモ書きのページ。

こんなふうに文字がびっしりというリストもある。
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これはコラージュで有名なレイ・ジョンソンの「シルエット・ポートレイト」の人名録。ジョセフ・コーネルのリストもありましたが、コーネルらしく、タイプライターで打ったものでした。

筆記体のリストやメモは、何が書いてあるのか読めなかったりもするのですが、巻末にリストの写しと翻訳がきちんとついてます。

漠然とリストの画像をみてるだけだと、まあこう言ってはなんですが、ただのメモ書きにしか見えないものがほとんどなんですけどね、書かれている内容をじっくり読むと、これがすっごくおもしろいんですよ。

69人の中には、ピカソのような有名人もいますが、誰これ?という人もいて、そんな知らなかった人をリストから知る、というのもなかなか興味深い。それにしても、こういうメモ書きも意外と残ってたりするものなんですね。捨てちゃうよね、ふつう。
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by rivarisaia | 2011-01-19 02:42 | | Comments(0)

去年みた映画で、いたたまれない気持ちになって感想が書けなかったものがあると先日書いたわけですが、本日はその2本目。これはまた別の意味で、うわああという映画。
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プレシャス(Precious: Based on the Novel Push by Sapphire)
監督:リー・ダニエルズ

何年も前に原作は読んでいて、とてもいい本なんだけど、真っ先に思ったのは「うわ、これ日本語訳大変そう」ということでした。邦訳した人グッジョブ!

そして映画版です。

プレシャスの人生は悲惨ですが、レイン先生と出会ったことで、彼女の将来には少しだけ光が差した。もちろん道のりは遠く、乗り越えなくてはならない試練もたくさんあるだろうけど、少なくとも彼女にはまだチャンスがある。がんばれ、プレシャス、と応援する気持ちになる。

問題は彼女の母親だ。

いやもうね、モニークはそりゃオスカー取りますよね。最後のマライア・キャリー演じるソーシャル・ワーカーとモニーク演じるプレシャスの母親の会話で戦慄が走りましたよ。それまでの、プレシャスの人生についてつらつらと考えてたことは、すべて吹っ飛んだ。この映画については、もうモニークしか思い出せないんですよ。

あのまったく噛み合ってない会話。はぁ?お前何言い出すの?ひとの話聞いてるの?すべての元凶はお前じゃないか、という、もうね…。あのラストシーンには、複雑に絡み合ったあらゆる問題が詰まっている。

プレシャスは人生を変えられるかもしれないけど、母親はおそらく一生あのままですよ。このままでは死ぬまで変わらない。そういう意味では、ものすごく不幸だし絶望的であり、どうしてあなたの人生、こんなことになってしまったの…ダメだ、この人…とそこには底なしの真っ暗闇しか見えない。

そして、ああいうタイプの人は間違いなく現実に存在する。

それを考えると児童虐待問題への取り組みは大変なんてもんじゃないですよ。虐待された子どもの救済も大変だけど、虐待する親の救済も果てしなく難しい。

ああいう人を切り捨てるのは簡単だけど、虐待を予防するには、プレシャスの母親のような人にも救いの手を差しのべなくてはならず、それはおそろしく難しい。現場では、のれんに腕押し、馬の耳に念仏、ということが果てしなく繰り返されているんだろうなあ。ああ…。
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by rivarisaia | 2011-01-17 22:51 | 映画/洋画 | Comments(0)

去年みた映画の中で、どうにもいたたまれない気持ちになってしまって感想が書けなかったというのが2本あり、しかしこれがとてもいい映画なのだった。逆にいえば、それだけ説得力のある力強い映画だからこそ、そうした状況に陥ったともいえる。

まずひとつめはこちら。
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息もできない(Breathless)』監督:ヤン・イクチュン

じつは私が通っていた公立の中学は、当時クラスの3分の1が超がつくほど不良の人たちであり、校内暴力や陰湿ないじめこそなかったものの、校外での暴力沙汰やシャレにならない悪戯(というかはっきり言って犯罪)で新聞沙汰になったこともあった。中学生とはいえ、ヤクザ予備軍みたいな人たちだったので、私のような一般人には害が及ばなかったとはいえ、けっこう恐かった。彼らにまつわる、当時起きたさまざまな出来事を話したりするとかなりの人にドン引きされるが、さすがに詳しくはここには書けない。

で、その3分の1の恐い人たちのごく一部は、途中でひっそりと姿を消してしまうこともあり、要は本人が鑑別所行き、あるいは一家で夜逃げといった理由なのだが、親しくないから事情はよくわからないけど、どうやら察するに家庭環境に複雑な問題を抱えていた生徒も少なくはなかったのだ。

もともと住む世界が違うので、そうした同級生のことはもう十年以上も思い出すことはなかった。しかし、この映画に映し出されていたのは、彼らの姿であり、彼らの姉妹の境遇だった。中学の頃の私には見えなかった、彼・彼女たちの抱える辛さが大人になったいまはわかるので、みてる途中からやりきれない気持ちでいっぱいになっちゃったのである。

途中から、頼むから全員幸せになってほしいと願いながらみるはめになったが、あきらかに不幸のフラグが立っている人物がおり、案の定という展開に納得しつつも重苦しい気分に…。

ところで、主人公である借金取り立て屋のサンフンに表情や行動がそっくりだった男子生徒が何人かいた。

卒業してから何年も経って、そのうちの1人とレンタルビデオ屋でばったり会った。久しぶりじゃん、お前何やってんだよ、俺はいま真面目に仕事してんだぜ、みたいな会話をしたと思う。で、おもしろい映画なにか教えてくれよ、と言われて、何かを勧めたことは覚えているが、それが何の映画だったのかは、まったく思い出せない。
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by rivarisaia | 2011-01-16 16:30 | 映画/香港・アジア | Comments(0)