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HOMELAND シーズン1

先日は広げた大風呂敷をたたむ感じの北欧ドラマの話でしたが、いっぽうでアメリカのドラマはやっぱりどーしても風呂敷を広げてしまうのね。

ということでこれ。

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HOMELAND シーズン1

シーズン3も制作すると聞いて、シーズン2をみるかどうか腰が引けてるドラマ。たぶん見るような気がするけど、どうせまた続くのか…と考えると憂鬱である。何シーズンもだらだら続いたらイヤだなー(そういうのありがち)。

行方不明になっていた海兵隊のブロディ軍曹(ダミアン・ルイス)が8年ぶりに救出され、英雄として帰国する。

いっぽうで「アメリカ人捕虜がアルカイダに転向した」という情報を入手していたCIA捜査官のキャリー(クレア・デインズ)は、ブロディこそがその人物だと確信し、彼の正体を暴こうとするのだが…


ブロディはテロリストなのか、それともキャリーの勘違いなのか、さあどっち!?というシーズン1は、途中までとてもおもしろいです。ただ、だんだんとアメリカのドラマらしいご都合主義が鼻についてきて、道理にあわない展開やら、そんなのアリかよという新事実の登場やらに後半ややうんざりしたことも告白します。恋愛要素もいらなかったなあ。何故いつもそうやってあれこれと男女をくっつけようとするのか、アメリカよ。

とはいえ、主演ふたりの熱演のおかげもあって、脱落せずに最後までみることができました。とくに最後のほうのクレア・デインズのおかしくなっちゃった演技は只事ではなかったです。ありゃあすごかった…。ドラマのマイナス要素などはすべて吹き飛ばすいきおいだったよ。

そりゃあそうと。

軽く内容にふれますが、中盤で、どうせテロリストが家族愛に目覚めて改心すんだろ…そんなベタな展開だったら引くよね、などと言っていた我が家ですが、けっこうそれに近い流れが待っていてですね、

おい!

と全力でツッコんだことは記しておきたい。

どうなんでしょうか。テロを阻止することに全力を傾けてるCIA捜査官が、テロリスト疑惑のある男性とそんな簡単に恋におちたりしますかね。ドラマ制作上の事情があったのかもしれないけど(シーズン2までつくるか不明だったとかそういう類いの)、いくらなんでも早すぎやしませんか…。さらにこうテロリスト側の面々のツメが甘くて、その程度の心構えならお前らもうテロなんてやめちまえよとも思いましたよ。まったくもー。

どうしようかなシーズン2。でもクレア・デインズがどうなるのかを確かめるためにもやはりみておこうかな。
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by rivarisaia | 2013-06-28 22:03 | 海外ドラマ | Comments(0)

THE BRIDGE/ブリッジ

ミステリ小説やサスペンスドラマで、最初は小さな事件だったのに、次々といろいろな新事実が明るみに出てどんどん大風呂敷広げちゃって、これ…収拾つくのか…と不安になることがたまにありますが、このドラマはその逆だった。最初に広がってた大風呂敷が、あらいつのまにかハンカチサイズに?みたいな感じ。

The Killing」のシーズン2はみごとに途中で挫折した私が、これはがんばって最後までみました。


THE BRIDGE/ブリッジ』デンマーク・スウェーデン合作のドラマ 全10話

デンマークとスウェーデンをつなぐオーレスン橋。橋の中央、ちょうど国境にあたる場所におかれた死体。その上半身と下半身は別人のものだった。


という猟奇的事件を発端に、社会に対して問題を提起して犯行をしつつも世論を操ろうとする謎の犯人が登場。デンマーク警察のおっさん刑事と、スウェーデン警察の有能でちょっと変わった女性刑事がコンビを組んで犯人を追いつめる、という話です。

女性刑事サーガ・ノレーンのキャラが面白いので、それが最後まで挫折しなかった理由のひとつ。サーガはとにかく場の空気がまるで読めないし、バカ正直で、嘘もつけない人物である(なので最終回はちょっとサーガちゃんがんばった!)。
かなり変な人に見えるけど憎めない、というかむしろ愉快で私は大好きですよ。

おっさん刑事はそんなサーガちゃんのことを理解しつつ、フォローもしつつ、ふたりで事件に取り組むんですけども。

なんかね、事件の展開がね、社会の不正に憤っているのだよ!という犯人の動機がね、真相が明らかになるにつけ、

なんだよ、結局そんなことなの? 私怨かよ!みたいなね…。まあ、いいんですけどね…。むーん。

というわけで、話自体は別にどうってことないのでアメリカでリメイクするというのを聞いて、なんで?って感じがしました。サーガちゃんのキャラがポイントだったドラマなのに。あとはデンマークとスウェーデンの曇ったグレーの空気感。それを取ったらいまひとつな気が…。そのへんうまくアレンジするのかな。

そうそう、私が最後まで挫折しなかった理由のもうひとつは、くだらないんですけど、オープニングの映像と曲がけっこう好きだったからでした(そんな理由かよ…って感じですが、曲に合っててきれいなんだよ橋の映像が)。
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by rivarisaia | 2013-06-26 22:42 | 海外ドラマ | Comments(0)

映画を観たのはずいぶん前なんだけど、ソール・バスのオープニングタイトル(1本の手がにゅうっと出てきて、びりびりと紙を破るとクレジットが出てくる)が印象に残ってる。最近、原作の小説を読んだのでした。

バニー・レークは行方不明(Bunny Lake Is Missing)
監督:オットー・プレミンジャー

アメリカ人のアンは娘のバニーとロンドンに越してきたばかり。引っ越しの片付けも早々に、アンは娘を預けた保育園に迎えに行くが、バニーの姿がない。そしてそんな子どもはいないと言われてしまう。

アンはロンドンで駐在記者をしている兄に助けを求め、警察に捜索を依頼するが、警察は最初からバニーはいなかったのではないかと疑いはじめ…


失踪した人の存在が疑われる話といえば、ヒッチコックの『バルカン超特急』や、あと最近の『フライトプラン』がありますが、この2作に関しては、観客である私も「いや本当にいたんだってば!」と主人公サイドに立つことができる。しかし本作ではバニーが登場しないため、子どもがいたというのは主人公の妄想ではないのか…という気になってきて落ち着かないのだった。

さて、バニーは主人公の空想なのでしょうか。それとも本当にバニーは存在したのでしょうか。存在したとしたら何処に消えたのでしょうか。公開当時はびっくりだろうなというサイコな展開が待ってます。お庭でのおっかけっこからブランコこぐシーンは正直「長いよ…」と思ったけど。

で、本作の原作はハヤカワのポケミスから出ているのですが(タイトルは同じ、イヴリン・パイパー著)、これまたびっくり。なぜなら。

犯人がちがーう。展開も登場人物も細かい設定もぜんぜんちがーう!


小説は舞台がニューヨーク。主人公のブランチが保育園から消えた娘のバニーを探すという設定だけは同じです。子どもが消えたという状況からして仕方ないとはいえ、小説版のヒロインのほうがエキセントリック度が高く、狂気を感じて私ドン引きしました…。そんな小説版は、ミステリ好きの人ならにやりと笑える文章で締めくくられています。謎はちゃんと解決されるんだけど、え、そこで終わる!というラストになってます。うふふ。
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by rivarisaia | 2013-06-24 22:59 | 映画/洋画 | Comments(2)

オルエットの方へ

連日の不安定な天気(というか低気圧というか台風)のせいで偏頭痛気味であるがゆえに何もする気が起きないわたくしです。夏前の大片付けしたいのにー。

おかげでずっとだるいんですが、きょうの空気の色はなんだか "オルエット" のようであった。こういう日は "オルエット" をBGV(バックグラウンドビデオ)にして、片付けや頭使わない作業をしたらよいのではないか。

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オルエットの方へ(Du côté d'Orouët)』監督:ジャック・ロジエ

数年前に東京でロジエ特集をやったのは冬だった気がしますが、ええと夏のバカンス映画です。夏の、というか、本作は夏の終わり。

あらすじは特になくて、3人のOLが夏の終わりにバカンスにいく。ただそれだけです。途中で、会社の上司である男性ジルベールが偶然をよそおって現れて女性陣から邪険にされつつも仲間に加わったり、ヨットを持っているイケメン風男性が登場して、みなの間に若干のさざ波が立ったりもしますが、なんだかんだで休みが終わると再びパリでの日常が始まり、それぞれ来年のバカンスに想いをはせるのでした。

3人娘のおしゃべりとかきゃっきゃした笑い声とか波の音とかを延々聞いてるような映画で、ストーリーに関係ないだらだらしたおしゃべりが何故か楽しいといえばロメールもそうですけど、ロジエのオルエットはロメールよりもおしゃべり度が高い(ロメールのほうがストーリーがある)。でも退屈かといえばそうではないのが不思議なところ。それどころか、バカンスってこういう感じだよねーわかるわーとなんだか納得しちゃうし、最初はすっごくジャマに感じたジルベールにもちょっと同情して、意外といいやつだよな、と思っちゃったりするのでした。

何故か本作の印象は薄曇りのグレーっぽい空気の色なので、空気がそういう色をしているときはきょうはオルエットの色の日と思うようになったのですが、オルエットの色の日は、この映画をだらだら流しながら、だらだら作業するのが正しい気がします。
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by rivarisaia | 2013-06-20 20:19 | 映画/洋画 | Comments(0)

赤線地帯

久々に観た溝口の映画で、世知辛い気分になったことであるよ。

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赤線地帯』監督:溝口健二

国会で売春防止法案が審議されている1956年前後。吉原にある「夢の里」で働く5人の娼婦たちの物語。


「夢の里」の主人が娼婦たちを前に「本当にお前たちのことを考えているのは俺たちだ。国に代わって社会事業をやってるんだ」と言うのですが(それも2度も)、なんだろこの既視感。今でもこういうこと言う人いるよねー!

ちょいと前の「お前は何を言っているんだ…」という従軍慰安婦の案件とか、そしてちょくちょく見かける生活保護関連のニュースとか、最近の世相と1956年公開の本作のあれやこれやが重なっちゃって、昔観たときよりも、無性にやりきれない気持ちになってしまい、初見時にびっくりしたあの前衛的音楽(註1)はそれほど気になりませんでした。音楽に関しては、むしろこれでよかった気もしてきたぞ。しんみりした音楽だったり、感情に作用する音楽だったりしたら、映画全体が湿っぽくなりすぎちゃったかもしれないし。

註1:本作は黛敏郎の「ヒョ~ロヒョロヒョロヒョロ」「ヒュウウウウウ~」という怪奇映画の効果音っぽいテルミンのようなあまりに前衛な音楽が、ときおり批判されておりますね。
確かに知らないとけっこうびっくりします...。


息子に捨てられて発狂する三益愛子も切ないのですが、最後のしづ子のアップで辛さMAX。やっぱりミッキー(京マチ子)ややすみ(若尾文子)のように他人は一切あてにせず、すっぱり割り切って冷酷に生きていくようでないとやっていけないよね。このすぐ後に赤線が廃止されることになるわけですが、若いしづ子はやすみのようにしたたかに生きていけるのだろうか。
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by rivarisaia | 2013-06-18 22:38 | 映画/日本 | Comments(0)

Every Day

いまだに自分の中の定量を超えた状態のため、思春期モノには1ミリも心動かず、能面のようになっちゃう私ですが、本作は16才くらいのティーンの話で、しかも基本は恋愛がテーマときたもんですよ。なら何故読んだのか! あ、たまに言っている「定量を超える」とは何ぞや、というのはまたこんど説明します。

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Every Day』David Levithan著、Knopf Books for Young Readers

さて、なぜ定量超えてんのに、わたしはこの本を読むにいたったか。
その答え。

主人公が身体をもたない意識体であり、性別問わず同じ年頃の他人に24時間ごとに乗り移っていく、という摩訶不思議な設定だったから。


かようなわけで主人公Aは、生まれたとき(自我を意識したとき)から自分の身体がない。日々、人から人へとジャンプしていく人生で、まあそういうものだと受け入れています。きょうはジョン、明日はメアリーという調子で毎日違う人の1日を過ごす。ちなみに乗り移った他人の記憶にはアクセスできる。次の日に誰に乗り移るのかはわからないし、同じ人に再び乗り移ることもできない。たいていの人は主人公に乗り移られたことに気づかない。

そんな実体のない主人公が、ある女の子を好きになってしまったので、さあどうすりゃいいの!?

という話です。まあ…どうしようもないですけどね。だって、意識レベルでは同一人物だっていわれても、相手にしてみれば見た目が毎日違う人になっちゃうし。おまけに性別も人種も違う。

細かいところやその展開はどうなの…と首をかしげる部分も多々あるものの、なんだか突拍子もないところが面白い。意識体で生きていくのつらいね…。恋愛云々よりも主人公の未来が心配です。

そんな本作はGoodreadsのレビューなどは評価がわれていて、星1個の人の激しいツッコミも、あとで読むとなかなかおもしろかったです。「主人公にはまるで同情できない。勝手なことされる取り憑かれた人の立場はどうなる!?」という意見もわかる。確かに迷惑だ。

肝心の恋愛問題の落とし前もそれでいいのか?という感じでしたが、青春はいろいろあっていいんじゃないですかね(→このあたり私、相当他人事です)

ただちょっと「うわ!気色悪い!」となったのは、主人公が好きな女の子の体に乗り移った1日ですよ。その設定はさすがに引くわね。こればかりは気持ち悪い。
おえー。
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by rivarisaia | 2013-06-12 23:14 | | Comments(0)

シーズン2まではすでに英語版のDVDが出ていて、シーズン1の日本語版DVDはこの夏に出る予定みたいです。ひとあしお先にシーズン1だけ観ちゃった。シーズン2はまだ観てないけど、 iTuneのトレイラーとサンプル動画はくりかえしみてしまっている私…。

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ゲーム・オブ・スローンズ シーズン1(Game of Thrones Season 1)

原作はどこまで読んだのかあやふやなうえに内容もウロ覚えだったので、登場人物が脳内で混乱するのではと心配しましたが、こうやって映像でみると意外と内容を思い出すものです。メインの人々はよしとして、最初のうちはこれ誰だっけ?となっても、そのうちわかるようになるので気にせずとも平気。

このシリーズは主に3つの舞台で話が展開します。

その1:七つの王国がある大陸を舞台に、全王国を統べる玉座をめぐる覇権争い

正義感の強い正直者がバカをみる。陰謀と策略と裏切りに満ち満ちた権力争いが勃発し、この後のシーズン2でいよいよ内戦へとなだれこみます。アイアン・スローン(鉄の玉座)に座るのは誰か!? シーズン1終了時点で玉座に座っている若造はムカツく野郎なので、さっさと彼を引きずりおろしていただきたいものです。

中世のヨーロッパのような雰囲気なんですけど、これから先、キリスト教もどきの宗教が出てきたり、ケルトっぽい宗教が出てきたり、魔術みたいなものがどんどん出てくると思う。

私は七王国の面々の中では、世渡り上手な小人、小鬼ことティリオン(ピーター・ディンクレイジ)が大好きです。ティリオンをもっと映せ!

その2:七王国の大陸から海を挟んだ大陸を舞台に、亡命中の前王朝の子孫(+遊牧民)による玉座奪還の試み

ちなみに前王朝の人たちはドラゴン使いだったのだが、ドラゴンはすでに滅亡したと考えられています。が、しかし…。

オリエンタルな雰囲気がファンタジーにありがちなステレオタイプではあるんですが、七王国のドロドロよりこっちの地方のほうが暮らしやすそうなんだよな。

亡命中の子孫は王子と王女の兄妹ですが、腹黒い兄の策略で言葉も通じない「野蛮人」に嫁がされた可憐な王女が、「誇り高き遊牧の民の女王」として、たくましく成長していきます。がんばれー! 私、応援してるよ!

その3:七王国の大陸の北方にある巨大な氷の壁と異形との戦い

最北の地にある壁には守人が常駐してその向こうの脅威から王国を守っているのだが、その未知の脅威である「White Walkers(The Others)」こと「異形」が出現して大変なことになりそうです。

ごめん…原作では壁のパートはあんまり好きじゃなかったんですけど、映像でみるとおもしろい。「異形」の軍団が早くみたい!

じつはシーズン1の前半は個人的にはそれほどノレなかったんですけど、中盤から目が離せなくなってきて、そういや原作も1巻はそんな好きじゃなかったような記憶が。シーズン1よりもシーズン2、そしてシーズン2よりもシーズン3のほうがおもしろいはずなので、どうしよう続きも観なくてはならない…。シーズン4までは確実につくるって言ってるし。っていうか、原作の続きはちゃんと出るのか。ドラマのほうが追いついちゃうんじゃないの?
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by rivarisaia | 2013-06-10 17:54 | 海外ドラマ | Comments(4)

コリーニ事件

2冊の短編集『犯罪』と『罪悪』がしみじみと静かによかったシーラッハの長編小説。この「しみじみと静かによい」というところがポイントです。すっごいよ~!と興奮気味に大絶賛するのではなく、静かにじわじわくる良さ。前2作もおすすめですが、今回の長編もしみじみとよくて、最後静かにうるっときたね…。

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コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ著、酒寄進一訳、東京創元社

ベルリンで67才のイタリア人コリーニが、大金持ちの実業家の老人を殺害。コリーニの弁護を引き受けた新米弁護士ライネンだが、コリーニが動機を話さないうえに、殺された老人がかつての親友の祖父であることを知り苦悩するが…


殺害の動機は読んでいくうちになんとなく察することができちゃうけど、動機の謎に驚くことが重要な話ではなく、やっぱりそうなのかと思ってもなお心に刺さる。そこには辛い辛い過去があるのですが、法廷で明らかになる「法の抜け穴」については、そんなことになってるのかと驚いた。もっと驚いたのは、この小説がきっかけになって政治が動いたという現実です(あとがき必読)。

みんなにしみじみと読んでもらうべく、あんまり多くは語らないことにするので、ぜひどうぞ。

そしてシーラッハの本でとてもいいなと感じるのは酒寄さんの翻訳の文体と、本の理解を深める訳者あとがき。シーラッハはよい翻訳者に出会ったな~。
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by rivarisaia | 2013-06-07 21:38 | | Comments(2)

グランド・マスター

おそらく宣伝の仕方や予告のつくりを間違えてしまったという、不幸な映画がたまにあります(過去にも『マスター・アンド・コマンダー』とかね…)。想像した映画と違う!となると評価が下がりがちだし、観てほしい人に届かない。

本作の宣伝だと、さまざまな流派の武術家がガチンコ対決をして一番強い人を決定する話+恋愛という印象を受けますが、まったくもってそういう話ではないので、むしろ、どうせカンフーアクションだろ…と敬遠している人の中にこそ選ばれし観客がいるのでは、と心配。

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グランド・マスター(一代宗師)』監督:ウォン・カーウァイ/王家衛

まず、これはウォン・カーウァイの映画です。『欲望の翼』とか『天使の涙』とか『ブエノスアイレス』とか『花様年華』とか『楽園の瑕』のウォン・カーウァイ。

そういう意味で、「すっごいよ~!もう大興奮!」とテンション高く飛び跳ねちゃう作品ではなく、しみじみと心の内側で静かに炎が燃える作品です。で、あとからじわじわくるものを反芻するのよ〜。

で、あらすじ。

詠春拳の宗師である葉問/イップマン(トニー・レオン/梁朝偉)や、八卦掌の奥義を受け継ぐ宮若梅/ゴン・ルオメイ(チャン・ツィイー/章子怡)など、激動する時代の流れに翻弄された武術家たちの人生を描く。


通常であれば激しく動的なアクションシーンが、静的でとても美しい。身体の動きの美に興味のある人(舞踊が好きな人やデッサンやってる人)はとにかく観るといいですよ。やばい…クロッキーしたくなる…という映画も久々です。

表の主役が葉問なら、裏の主役は若梅で、チャン・ツィイーが嫌いな私が「ツーイーたんがこんなにすばらしいなんて!」と誉め称えたいくらいの良さ。奥義を受け継いでるのにさ、女ってだけで早く結婚しろだの、結婚したら宮家の人間ではなくなるだの、うるさく言われて、あげく結婚しないと技を継承させる子孫ができないというね…泣ける…。しかし、彼女はまわりに流されることなく自分の人生を生きたような気がする。

で、そんな若梅と人生が交差する人物として、八極拳の宗師、一線天/カミソリ(チャン・チェン/張震)が登場します。彼も激動の時代に人生いろいろあったらしいことがサラッと描かれるのですが、張震のムダ使いと言いたくなるくらい本筋に絡まないので、初見時には一緒に観た友人と

「張震は何のために出てきたのか。もはや要らないキャラだったのでは」

などと、餃子食べながら話したんですけども、後になってから彼の存在が私の中でぶくぶくふくらんできまして、いまは香港で一線天が開いたという「白薔薇理髪店」のことで頭がいっぱいです。だって集合写真がこんなの。
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あんなちょっとしか登場シーンないのに、なんなの張震のこの存在感。もう白薔薇理髪店だけで1本映画撮ってほしい…。

それにしても本当に美しい映画でした。誰が強くて偉いとか、見た目(型)がどうとか、そういう上辺ではなくて、武術の根底に流れる精神を描いている作品といえばいいのかもしれません。30年代の娼館も出てきて、衣装も綺麗。美術が好きな人も観るべきだな。
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by rivarisaia | 2013-06-05 21:14 | 映画/香港・アジア | Comments(2)

先日のお庭の生物兵器に挑んだ一件のせいで、気分がたいそうどんよりしたので、ひとつパアッ!とする映画を。どんよりしたときにみるDVDはいくつか候補があるんだけど(『オーム・シャンティ・オーム』もそう)、今回はこれ。

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ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式(Death at a Funeral)
監督:フランク・オズ

アメリカ版リメイクは観てないですが、オリジナルのイギリス版は大好き。

困り顔ベスト俳優のマシュー・マクファディン主演(マシューくんの映画のなかで困り顔度が高くてよろしい)、嫁役がマシューくんのリアル嫁キーリー・ホウズ、そしてマシューくんの弟役が『モーリス』の…というか今は『SHERLOCK』のレストレード警部のルパート・グレイブス、さらに父親の愛人役に『ゲーム・オブ・スローンズ』のティリオンのピーター・ディンクレイジ、と私的に豪華キャスト。

父親のお葬式の日の出来事を描くドタバタコメディ。のっけから葬儀会社のミスで棺桶には別人が入ってるし、精神安定剤と間違えてハイになる薬を飲んじゃった参列者がいるし、父の愛人を名乗る小男が現れてお金をゆすってくるし…という話。あ! えんがちょな汚い場面もあるので食事中に観るのはおすすめしません。

父親がゲイだったという設定は最近の映画でもあるけど、本作は父がゲイだったことよりも(この点はわりとあっさり納得される)、その相手が神経を逆なでするような小男で、この期におよんで恐喝してくるのかよ!というところで皆がちょう困惑する。さらに、ラリってる参列者のおかげで、ちっとも葬儀が前に進まない。

葬式のスピーチを困り顔で一生懸命考えるマシューくんなのだが、参列者の方々は、作家として成功している弟のほうがスピーチするとばかり思っていて、困り顔がいっそう困り顔になり、プライドもズタズタなのである。

そんな葬式の日に巻き起こるカオスが最高潮に達したところで、懸案のスピーチ場面で万事丸くおさまるところが、なかなかしんみりしてよいのだった。っていうか、最終的に小男にはお金払ったんだろうか…。それともスピーチに感動して小男はそのまま帰ったのかな…。謎だ。

そして本作ですが、DVDのオマケについてる7分強のNG集がかなり愉快です。NG自体は大したことないのに何故か笑いが止まらなくなる人々のようすが可笑しすぎて、何度みても絶対に私もつられて笑っちゃうので、気分が落ちてるときに最適です。笑いのカンフルといえよう。いやあ、誰かが心から笑ってる姿は人を幸せにするよね。うふふふふ。
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by rivarisaia | 2013-06-03 23:42 | 映画/洋画 | Comments(4)