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The Marvels

『The Invention of Hugo Cabret(邦訳:ユゴーの不思議な発明)』や『Wonderstruck』のブライアン・セルズニックの新刊。

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The Marvels』Brian Selznick著、Scholastic Press

1766年、難破船でひとり生き残った少年ビリー・マーヴェル。前半400ページほどは、ロンドンの劇場で活躍することになる、ビリーと五世代にわたる彼の子孫の物語が、絵だけで展開します。

そして時は1990年に移り、学校を飛び出してロンドンに住む叔父のもとへやってきた少年ジョセフの物語が、今度は文章で綴られます。

さて、ビリーの一族の物語と、ジョセフの物語はどのようにつながっていくのか、徐々に謎が明らかになっていきます。

イラストだけの最初の400ページが本当にすばらしくて、正直に言うと、テキストパートに突入したとたんに、気持ちが置いてけぼりにされたのも事実です。テキストパートに不満を抱く人々の気持ちもわかる。私も90年代の主人公ジョセフにイライラしたし、途中で明かされた事実には「えー! そりゃないよ!」と文句も言いたくなりました。

だが、しかし。

最後、再びイラストのみで展開する現代のパートがあるのですが、そこを読んだ(見た)ときに、なんだかじんわりしてしまったんですよね。そこには、叶えることのできなかった夢があったから。

児童書として考えてみると、ブライアン・セルズニックはさりげなく難しいテーマをもってきたなーと感じました。最後まで読んだら、もう一回最初のページから読み返してみるといいかも。最初かったるく感じたテキストパートも2度目に読んだ時は印象が変わった。

著者のあとがきにもありますが、ロンドンの叔父さんの家は、実在の「Dennis Severs House」がモデルです。ここ、行きたい!

著者本人が作成した本のトレイラーもいい感じなので貼っておきますね。





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by rivarisaia | 2016-01-26 20:14 | | Comments(2)

Everything I Never Told You

想像していた内容とはだいぶ違ったんだけれども、しみじみとよい本でした。

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Everything I Never Told You』Celeste Ng著、Penguin Press

Lydia is dead. But they don’t know this yet.
リディアは死んでいる。でも彼らはまだそのことを知らない。

という文章で始まるこの小説は、1977年、オハイオの小さな町にくらす中国系アメリカ人の一家の話です。

アメリカ生まれの中国人である父ジェイムズ、白人の母マリリン、優秀な兄ネイサン、両親の一番のお気に入りであるリディア、そして目立たない末っ子のハンナ。リー一家は、そこそこ幸せな5人家族のはずでした。

ある朝、リディアが忽然と姿を消し、やがて近くの湖で死体となって発見されます。

冒頭の1文から私は、果たしてリディアを殺した犯人は誰なのか、それとも殺人ではなく事故なのか、はたまた自殺なのか、という謎を解く、ミステリーのような物語なのかなと推測していました。

ところが全然違った。

物語は過去に戻り、リディアが死んでしまった日にいたるまで、家族のそれぞれがどんな人生を歩んできて、どんなことがあったのかを探っていく。大学教授の父ジェイムズはマイノリティであることにフラストレーションを抱えている。出産のために学業を断念し、主婦になった母マリリンは、自分の夢をリディアに託す。両親の夢と希望を一身に背負うリディアの影で、存在感を消されてしまっている兄と妹。

家族ひとりひとりがこれまで抱えてきた問題(そして70年代という時代における、人種差別や女性の社会進出といった事柄が大きく影響している)が、じわじわとあぶりだされていき、最終的にはリディアの死に結びついていく。リディアはどうして死んでしまったのか、それを考えると、とても切なくて泣ける。

ミステリーを期待すると肩透かしをくらうだろうし、読んでいる最中はどんどん重苦しい気分になっていくし、登場人物にイライラしたりもするんですけども、読み終わってみれば、この一家のことがしばらくは忘れられない。幸せになってほしいなあ。



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by rivarisaia | 2016-01-20 23:43 | | Comments(2)

今年の初映画はハンガリー映画でした。
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リザとキツネと恋する死者たち
(LIZA, A RÓKATÜNDÉR / LIZA, THE FOX-FAIRY)
監督:ウッイ・メーサロシュ・カーロイ

昨年の大阪アジアン映画祭で『牝狐リザ』というタイトルで上映され、観に行った友だちがみんな、呪文のように「ダンス、ダンス、ハバグッタイム!」と唱えるようになった作品です。なにそれ、ちょう気になる。

その後、関東ではSKIPシティ国際Dシネマ映画祭でも上映されましたが、行けなくて大変残念な気持ちでいたところ、なーんと劇場公開の運びとなりました。公開される劇場も着々と増えてるみたい。やったね! ダンス、ダンス、ハバグッタイム!

1970年代のハンガリー。もうじき30歳になる独身女性リザは、元日本大使未亡人の看護人として住み込みで働いていた。
未亡人から日本語を習ったリザが心の支えにしていたのは、愛読書である日本の三文恋愛小説と、彼女だけに見える日本人歌手の幽霊、トミー谷。
さて、リザの30歳の誕生日。リザが出かけている間に、未亡人が突然死んでしまう。その後もリザの周りでは不審な死が相次ぎ、捜査のために刑事ゾルタンは下宿人を装ってリザと同居を開始するのだが……。

九尾の狐伝説を下敷きにしたシュールでキッチュなおとぎ話映画。人がいっぱいころりと死ぬのに、観終わった後にはなんだかほのぼのした気分になる、さんざん探した青い鳥はこんな身近にいたんだね!という物語です。

話も音楽もヘンテコリンですばらしい上に、衣装や小道具やインテリアもとってもかわいい。画面のあちこちに細かい見どころがいっぱい。壁紙映画で、シャンデリア映画でもありました。

じわじわきたのが、捜査対象であるリザのことを好きになってしまう刑事ゾルタンが、フィンランド歌謡をこよなく愛する男だったところ。「狐の呪い vs 刑事の愛」が「イカす昭和GS歌謡 vs イカすフィンランド歌謡」に見えてきた。さあ、最後に勝つのはどっちだ! 結果は映画でどうぞ!

予告編はこちら




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by rivarisaia | 2016-01-15 15:18 | 映画/洋画 | Comments(0)

いつもは年末にお知らせしているのですが、今回は遅ればせながら、2015年の「これを読まずして年は越せないで賞」のお知らせです!

年末に行われたツイッター会議とか候補作の詳細については以下をどうぞ!


ざっくりと紹介しておきまーす。

I. 児童書部門:『Blackthorn Key』Kevin Sands

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17世紀のイングランドを舞台に、薬剤師の見習い少年が暗号を解読しながら連続殺人事件の謎と錬金術の秘密を解明するというページターナーな1冊。今年の秋に続編が出るそうです!

I-2. YA部門受賞『Six of Crows』Leigh Bardugo(YA)
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例えていうなら、ゲーム・オブ・スローンズの世界でオーシャンズ11の物語が展開するような話で、三部作の第1作目。

・そのほかの候補作
『Nightbird』Alice Hoffman
怪物が棲む森のそばの小さな町に暮らす女の子が主人公。彼女の家族は大昔に魔女に呪いをかけられていて……とおどろおどろしい設定のようだけど、ほんわかした可愛らしいファンタジー。

『Nimona』Noelle Stevenson(YA)
破天荒な主人公Nimonaが活躍する一風変わったアメコミで、全米図書賞最終候補作。

『What We Saw』Aaron Hartzler(YA)
真実を探ろうとする勇気ある第三者を主役にすえた、レイプをテーマにした作品。

(最終候補からは外れた作品)
『A Darker Shades of Magic』V.E. Schwab(YA)
『Most Dangerous』Steve Sheinkin(YA)

II. ノンフィクション部門:『Missoula』Jon Krakauer
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アメフトチームのメンバーがレイプ事件を起こしたのをきっかけに、数々の暴行事件が明るみにでたという事実を追い、性犯罪に対する私たちの認識を改めさせる必読の1冊。

・そのほかの候補作
『So You’ve Been Publicly Shamed』Jon Ronson
最近のインターネットでありがちな、炎上、すなわち、集団による個人攻撃と、加害者や被害者の心理について探るルポルタージュ

『Modern Romance』Aziz Ansari
コメディアンのアジズ・アンサリが社会学者とタッグを組んだ、恋愛に関するユーモラスで真面目な社会学の本

(最終候補からは外れた作品)
『Rising Strong』Brené Brown
『Being Mortal』Atul Gawande
『Pioneer Girl: The Annotated Autobiography』Laura Ingalls Wilder
『Becoming Nicole』Amy Ellis Nutt(*これはしっかり話し合いたい本なので、来年に持ち越し)

III.フィクション(大衆小説)部門:『Inside the O’Briens』Lisa Genova
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『アリスのままで』の著者が書いた、ハンチントン病を抱えた家族の物語

・そのほかの候補作
『The Lake House』Kate Morton
おなじみのケイト・モートン最新作。

『Circling the Sun』Paula McLain
イギリス生まれでケニア育ちの女性パイロット、ベリル・マーカムの自由奔放で興味深い人生を描いた伝記小説

(最終候補からは外れた作品)
『Last Song Before Night』Ilana C. Myer
『Seveneves』Neal Stephenson

IV. フィクション(文芸小説)部門:『A Brief History of Seven Killings』Marlon James
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今年のブッカー賞受賞作。ボブ・マーリー暗殺未遂事件を軸に、ジャマイカの歴史を独特のリズムのある文体で語る長編叙事小説

・そのほかの候補作
『A God in Ruins』Kate Atkinson
ケイト・アトキンソンの『Life After Life』の姉妹編にあたる、語られなかったもうひとつの物語。

『Fates and Furies』Lauren Groff
ある夫婦の結婚生活を、夫と妻のそれぞれの視点から描いた

『The Buried Giants』Kazuo Ishiguro
邦訳は『忘れられた巨人』

(最終候補からは外れた作品)
『A Little Life』Hanya Yanagihara

そして2015年の大賞は、紆余曲折のすえにどんでん返しがありまして、

児童書部門:『Blackthorn Key』に決定しました!

児童書ということもあり、多くの人に読みやすい本でもあるので、英語で何か読んでみたいな、という人にもおすすめですよー。



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by rivarisaia | 2016-01-05 23:36 | | Comments(0)

あけましておめでとうございます!

去年につづき、今年も正月縁起菓子の辻占。
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去年のは最中の皮のようにパリパリしてたけど、今年のはもちもちしていて、どちらかといえば今年のほうが美味しい。
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中に小さく丸まった占いが入ってます。
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上が私の分。下の家人はあきらめなければ宝くじが当たったり、宝舟がまいこんだりするようで、景気がよさそうなのに対し、私の占いは「早くきめなさい」(何を!?)と言われたあとで、「うわさが高い」だの「仏様よりあなたがたより」だの、なんだこれは。今年も大変なよかーん。

では今年もどうぞ宜しくお願いします!





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by rivarisaia | 2016-01-02 16:39 | 食べ物 | Comments(2)