「ほっ」と。キャンペーン

今年の「これを読まずして年は越せないで賞」も無事決定いたしました!
冬休みや新年の読書の参考にしてくださいねー。


I. 児童書/YA部門:『Raven King』Maggie Stiefvater
*Raven Cycleシリーズ4部作全体として評価

YAのファンタジーは似たりよったりの作品が多いなか、独特な物語と世界観を味わうことができる、非常に読み応えがあるシリーズなので、大人の読者にももちろんおすすめ。エリート男子校に通う4人の少年+ヒロインの少女という組み合わせが、日本だと『花より男子』を連想する人もいそうですが、似てるのは4人+1人っていうところだけです。

1作目から順番に次のようなタイトルになっています。
『The Raven Boys』 (The Raven Cycle, #1)
『The Dream Thieves』 (The Raven Cycle, #2)
『Blue Lily, Lily Blue』 (The Raven Cycle, #3)
『The Raven King』 (The Raven Cycle, #4)


II. ノンフィクション部門:『Becoming Nichole』Amy Ellis Nutt

こちらは私、感想書いていました。

III.フィクション(大衆小説)部門:『Before the Fall』Noah Hawley

著者は、アメリカのドラマ『BONES』や『ファーゴ』の脚本を書いているノア・ハウリー。乗員乗客11人のうち、たった2名が生還するというプライベートジェット機の墜落事故をめぐる話で、ミステリとしても読めるけれど、人間の弱さや醜さ、人生の選択肢などについて考えてしまうような小説です。

IV. フィクション(文芸小説)部門:『The Nix』Nathan Hill

私の感想は以下。これは今年、最大級にオススメ。

そして、今年の栄えある大賞は

『The Nix』

そして次点が『Becoming Nichole』に決まりました!

ツイッター会議や候補作の詳細については渡辺さんの「洋書ファンクラブ」や Togetterまとめ をじっくりお読みください。

では、来年も楽しい読書ができますように!


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by rivarisaia | 2016-12-30 22:30 | | Comments(0)

The Sun is also a Star

1作目の小説『EVERYTHING, EVERYTHING』がベストセラーになって、来年公開予定で映画化が決定している Nicola Yoonですが、2作目もこれまた評判がよくて、これまた映画化するみたい。社会的にもタイムリーに移民問題を扱っているのですが、ちょっと切ないラブストーリー。

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The Sun is also a Star』Nicola Yoon著、Corgi Childrens

Natasha:ジャマイカ生まれのナターシャ。家族でアメリカに移住してきて、もう10年もニューヨークに暮らしているけれど、一家は不法滞在であることが当局に発覚して、国外退去を命じられた。

Daniel:韓国系アメリカ人のダニエル。韓国からアメリカに移住してきた両親はヘアケア・ショップを営んでいる。詩を書くのが大好きなダニエルだが、両親はダニエルをイエール大学に入れて将来は医者になってほしいと考えている。

その日は、ナターシャのアメリカ最後の日。

なんとかアメリカに残ることはできないかと藁にもすがる思いで奔走するナターシャは、街中で偶然ダニエルと出会って……。

夢は決して叶わないし、宿命や運命なんて全く信じないというナターシャと、詩人であるがゆえにロマンチストなダニエルという、まるで正反対なふたりのたった1日のラブストーリー。でも決して閉じた世界ではなく、どこか広がりを感じさせるのは、ふたりの1日のちょっとした瞬間に交錯した人たちのエピソードが挿入されているからかも。ふと交わした一言や、たまたま遭遇した出来事によって、人生は大きく変わることもある。

世代の違いから生じる価値観の差、人種による偏見など、移民が抱える現実的な問題についても触れられていて、世の中うまくいくことばかりではないとしみじみと感じるけれども、いつもどこかに希望は転がってる。人生って何があるかわからないよね!という終わり方もとても良いです。

ナターシャの章、ダニエルの章…と交互に語り手が変わる構成で、ひとつの章が短い上に英語も読みやすいし、なによりふたりがどうなってしまうのかスリリングなので、英語で何か読んでみようかな、という人にもおすすめ。

追記(12/28/2016):『Everything, Everything』(難病の女の子が主役のラブストーリー)も読みましたが、断然こちらの『The Sun is also a Star』のほうをおすすめします。逆に『Everything〜』はいまひとつだった人も、こっちは大丈夫だと思いますよー。


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by rivarisaia | 2016-12-27 22:55 | | Comments(0)

The Nix

評判が良くて気になってた本ですが、すごく面白かった! これは必ず邦訳出るはず。

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The Nix』Nathan Hill著、Picador

作家…といっても全然本書けてない Samuel(サム)は田舎の大学で教師をしている冴えない男で、オンラインゲームにはまっている。

ある日、サムが子供の頃に家族を捨てて失踪していた母親の Faye が事件を起こし、インターネットやニュースメディアの注目の的となる。高校時代の初恋の人と結婚したごく普通の田舎の女性だったはずの母親は、メディアによれば、60年代には過激なヒッピーで売春婦だったというのだ。

職場では厄介な教え子とのトラブルを抱え、おまけに出版エージェントから多額の前払い金の返却を求められて後がないサムは、”時の人”となった母親の本の執筆をエージェントに確約して挽回しようとするが……。

若かりし日の母親の秘密を探る物語は、サムの父親のHenry、オンラインゲーム仲間のPwnage、サムの子ども時代の友人Bishop、Bishopの双子の妹でヴァイオリンを弾くBethanyなど、さまざまな人々の物語と絡みあいながら、サム自身の過去と現在、そしてノルウェーからアメリカに渡った祖父の過去へとつながっていきます。

章ごとに中心人物と時代が変わり、ウォール街デモが行われている現代のアメリカ、50~60年代の中西部、80年代のサバービア、1968年のシカゴ民主党大会、そして第二次世界大戦前後のノルウェー、と読者はあっちに飛んだり、こっちに飛んだりしながら、笑ったり、やるせない気持ちになったりしつつ物語を追いかけていくうちに、最初は断片的だったエピソードが最後にはぴっちりとはまって壮大な絵巻物が完成しているし、クセのある登場人物全員がとても愛すべき人々になっている(イラつくキャラもなぜか許せる)。

タイトルの「Nix」は、最初は60年代あたりのスポーツか何かのグループの名称?と勝手に思ってたんですけど(だって、野球チームとかにありそう)、ノルウェーはじめスカンジナビアの民話に登場する水の精霊で、人を魅了して水中に引き込んでしまう。ヴァイオリンを弾いて人を惹きつけるとも言われているようですが(だからベサニーが弾くのはバイオリンなのかな)、本書では「最も愛しているものに、最も深く傷つけられる」というメタファーにもなってます。

『The Nix』はメリル・ストリープ主演でドラマ化の話も出ていて、本の内容からして映画向きではないので、ミニシリーズだったらいいかも。配役をあれこれ想像して、しばらく楽しめそうです。ふふふ。


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by rivarisaia | 2016-12-26 19:27 | | Comments(0)

Merry Christmas!

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Merry Christmas! Buon Natale!

いろいろ溜まりに溜まってて、ローグ・ワンの感想も年内に書けるかな。
メリークリスマス!



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by rivarisaia | 2016-12-25 23:37 | 日々のよもやま | Comments(2)

遅ればせながら、今年もやります「これを読まずして年は越せないで賞」の候補作リストが出ました!

詳しくは渡辺さんのサイトをご覧ください!
今年もまたもや感想を書けてない本がいっぱいあるのですが、ツイッター公開審査までに全部は無理そうだけど数冊くらいは書けるかな。

公開審査は12月29日19:00〜を予定しています。ハッシュタグは #これ読ま、横やり大歓迎です。では、今年もお楽しみに!

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by rivarisaia | 2016-12-23 01:23 | | Comments(0)

大変に私の好みの映像を観ました。眼福。ポスター画像をやや大きく載せちゃおう。

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五日物語—3つの王国と3人の女—(Tale of Tales)』監督:マッテオ・ガローネ

映画のもとになっているのは、17世紀初めにジャンバティスタ・バジーレがナポリ方言で執筆した民話集『ペンタメローネ』です。

『ペンタメローネ』は、笑わないお姫様と眠り王子という大枠となる物語がありまして、その中で、ある人の魔法をとくために10人の女が1日に一話ずつ、五日間にわたって物語を語ることなった、という構成になっています。大枠の話1つ+全部で50の物語。

デカメロンや千夜一夜物語と似た構成ですが、物語が入れ子状になっているのがとても面白い。ペローやグリムの物語のもとになったのではないかと思われる話がいくつか入ってます。

本作は『ペンタメローネ』をそのまま映画化したのではなく、第1日目のノミの話、魔法の牝鹿の話、皮をはがれる老婆の話の3本をベースに、かなりアレンジを加えた内容になっています。羊くらいの大きさにまで育ったノミ、まさかの実写! 気持ち悪くてかわいい。

昔話はグロテスクでシュールな話がほとんどで、文章ならさらっと読めたとしても、そのまま映像にすると強烈な描写がたくさんあるわけですが、今回はそういう部分もガッツリ映像になっていて、私としては

最高(感涙)!!

という気持ちでいっぱいでした。もちろん、イテテテテとか、酷いあんまりだ....という描写もいっぱいあるのですが、まったく容赦ないところがよい。衣装も美しいし、画面の色彩も全体的に南イタリアっぽいトーンだし、プーリアやアブルッツォ、シチリアあたりのお城で撮影しているので、建築見るのも楽しい。

「綱渡り」をするシーンが何度か出てくるのが象徴的で、結局のところ人生とは、細いロープの上を危なっかしく渡っていくようなもの、ということなのかもしれません。

もう一度『ペンタメローネ』を読み返したくなったけど、邦訳版は絶版なのでこの機会に復刊してくれたらいいのになという気持ちです。私、イタリア語版しか持ってなくて、邦訳ほしいなー。



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by rivarisaia | 2016-12-14 21:54 | 映画/洋画 | Comments(2)

この世界の片隅に

こうの史代のマンガ『この世界の片隅に』のアニメ化。原作、私は大好きなのですが、映画も波の兎や空襲のシーンはじめアニメーションならではの表現があって、とてもよかった。それから街並みや家の中の様子がとてもリアル。ディテールに気を配っているので、画面にたくさんの情報が詰まっていました。もう1度観たい。

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この世界の片隅に』監督:片渕須直

広島市に暮らす、絵が得意でちょっとおっとりとした少女すずは、1944年(昭和19年)、軍港として栄えた呉にお嫁にやってくる。

すずさんの戦時下のくらしは、ほのぼのとしているように感じる人もいるかもしれないけれども、じわりじわりと戦争が生活を侵食していって、いつの間にか非日常が日常になっている。戦時下でも、人は日々暮らしていかなくてはならないので、辛いことにも、本当ならしなくてもよかった苦労にも、適応できるようになるのだと思う。空襲警報だって毎日毎日鳴っていれば、すっかり慣れてしまうのだ。

3月と5月の大空襲を経験している私の祖母も、戦時中の話を聞くと「そうねえ、まあ大変といえば大変だったかもしれないけどねえ」という調子で、仕方のないこととして世の中に適応しながら、すずさんのように日々の暮らしを支えていったのだろうけれども、戦争がなければもっと別の暮らしがあったんじゃないか、しなくてもよい苦労がいっぱいあったのではないかと考えてしまってやっぱりつらい。そしてあんまり自覚のないまま戦争を「日常」として受け入れてしまうのもつらい。その代償のように、すずさんは大切なものを失ってしまう。

それでもすずさんは、この世界の片隅に自分の居場所を見つけることができるし、すずさんが広島市内で出会う孤児は、戦争が終わって新しい未来への「希望」なんだと思う。

いくつか削除されている箇所があって議論を呼んだりもしているけど、これは映画を観た人が原作も読んでみようと思うきっかけになったらいいんじゃないかなあ。この作品に限らず、映画をきっかけに原作が売れてくれたら嬉しい。

予告


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by rivarisaia | 2016-12-09 23:26 | 映画/日本 | Comments(0)

White Trash

先月はこんな本も読んだのだった。タイトルがズバリ「ホワイト・トラッシュ」(直訳すると白人のクズという意味)という歴史書。

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White Trash: The 400-Year Untold History of Class in America』Nancy Isenberg著、Viking

英国がジェームズタウンに最初の植民地を作った時代から現代にいたるまで、社会的階級の観点からみたアメリカの詳細な歴史。著者はルイジアナ州立大学のアメリカ史の教授。

ネイティブアメリカンや黒人の歴史に関する本はいろいろ出てるし、マイノリティが抱える社会的な問題についても語られることは多かったけど、アメリカの白人貧困層に関しては、白人はマジョリティだし人種問題のほうを優先していて、じっくり考えてみたことはなかった。

英国と違って階級制度はないと思われがちなアメリカにも、それはしっかり存在しており、雑な言い方をすれば、新大陸という「不毛な土地」にイギリスが最下層に位置する不要な人間をどんどん送り込んだ植民地時代に端を発する。そこに、奴隷制度などから生じた人種問題、優生学、キリスト教的思想が絡まり白人優越主義が生まれるけど、しかし南部の貧乏白人はある面においては長らくアフリカ系の奴隷以下の状況だったりもした。

歴史を振り返ると社会の下層に位置する人々はどこの国も似たような状況で、アメリカの白人貧困層が特別ではないんだけども、改めて19世紀から20世紀初頭の、sandhiller や clay-eater と呼ばれていた彼らの状況もやはりひどくて、1913年に撮影された、一般的な白人青年と貧困層の青年の写真を比べると身長や体格や顔つきからして衝撃的に違う。女性や子供の立場も悲惨きわまりない。ちゃんとした家庭の人間は子供をたくさん産むべきだけど、「価値のない階層」に属する南部の白人は優生学的視点から避妊手術をするべきともされた。そんな時代があった。

近年になっても、「田舎の学のない貧しい白人階級」としてある種のステレオタイプに押し込められ、メディアなどでも揶揄されることが多く、経済的な点においても自分たちが陥っている現状から抜け出すことはなかなか難しい。

こうした流れをふまえると、白人貧困層の怒りや無力感もわからないでもない。だけれども、マジョリティである白人だって貧困層はマイノリティよりひどい立場にあるのだとか、マイノリティのほうが優遇されているではないか、など、どちらが悲惨かという不幸自慢のような方向にいくのは間違ってる。

著者は結びで、これまで米国社会は「私たちとは違う」として白人の貧困層を見て見ぬふりをしてきたけれど、「彼らは私たちなのである」と書く。教科書に名前が残るのはエリート層だけど、いつの世も名もなき農民や労働者層が国を支えてきた主体であって、ときどき政治は社会の大半を占めるそうした層のことを置いてけぼりにしてしまう。これもアメリカに限ったことではないですね。


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by rivarisaia | 2016-12-08 21:53 | | Comments(0)

Hillbilly Elegy

ちょうどこの本を読んでた時期は、アメリカ大統領選があのような結果になるとは想像してなかった頃で、そもそも本書を読もうと思ったのも「著者の祖父母がアパラチア出身」という理由でした。何度か書いていますが、私はアパラチアを舞台にした小説に興味があるので、アパラチアという言葉に目を引かれるのである。

本書は小説ではなくて、メモワールです。

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Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis』J. D. Vance著、Harper

オハイオの貧困家庭で生まれ育ったけれども、その環境から脱出してロースクールに通い、今ではカリフォルニアで働いている J. D. ヴァンスが自分の生い立ちを記した本です。ヴァンスの育った家庭環境は、アメリカ白人貧困層あるあるエピソードに満ちている。

さて、本書の内容については、渡辺由佳里さんのブログに詳しいのでそちらをお読みください。

必ずしもトランプに票を入れた大半が白人の最貧困層という単純な図式でもなかったにせよ、いずれにしても今回のアメリカ大統領選は「白人貧困層」が注目されるきっかけとなったし、日本のメディアでも「ヒルビリー」という言葉を目にしたりもしました。

田舎者を指す蔑称のひとつである「ヒルビリー」を、白人貧困層の代名詞のように扱う日本のメディアもありますが、厳密にはちょっと違う。白人の労働者層や貧困層を指す蔑称には、レッドネック、ホワイトトラッシュ、といろいろあるのですが、ヒルビリーはその昔、アイルランドから移民として米国にやってきてアパラチア地域に定住したスコットアイリッシュの人を指します(したがって、例えばテキサスの田舎の白人はヒルビリーとは呼ばない)。

本書について「アメリカの話でしょ」と他人事としてとらえるのは簡単なのですが、読んでいて、これは日本にもとても通じる話なのでは…?と思う箇所が多々ありました。マジョリティの立場にある貧困層が抱える問題というのは、国は違っていても共通点があるんじゃないかな。だから日本の読者にもおすすめ。

考えさせられる点がいろいろあるのですが、そのひとつが対等な目線での教育やカウンセリングの重要性です。

「マウンテンデュー・マウス」のテレビ番組について著者が触れている箇所があるんですよ。これはABCのダイアン・ソイヤーがアパラチアの子どもたちの惨状について取り上げたドキュメンタリー(2009年)で、マウンテンデュー・マウスというのは、マウンテンデューやコーラを与えすぎて歯がぼろぼろに溶けちゃた乳幼児の口を指す。赤ん坊のミルクよりもマウンテンデューのほうが安いから、哺乳瓶に入れてあげちゃったりするんだよね。そしてミルク代は別のものに消える。

ソイヤーのドキュメンタリー(「Children of the Mountains」)は私も見て暗澹となりましたが、J. D. ヴァンスいわく、ヒルビリーの人たちもこの番組を見てる。で、大きなお世話だよっていう気分になっちゃってる。

本書では、ヒルビリーの人たちに「ミシェル・オバマが嫌われるのは、子供にまっとうな食事をさせてないと言うから。彼女の主張は正論だから」というくだりがあり、マウンテンデューを哺乳瓶で与えちゃう自分たちがダメな親だってことは、他人から言われなくても重々承知なんだよね。でもまっとうな暮らしをしているよその人たちから指摘されると、まるで非難されているような気持ちになって、すっかり嫌になってしまうというのは、私にもよくわかる。正論は、時として上から目線で言われているように受け取られることがあるというのは、アウトリーチの際にとても注意したいところ。

もうひとつ考え込んでしまったのは、アメリカにおける軍隊のこと。

日本で安保法案が話題になった頃に見かけるようになった「経済的徴兵制」という造語があって、私はこの単語は、貧困の解決にも結びつかなければ、兵役が抱える問題の指摘にもならず、ただのレッテル貼りの詭弁でしかないので大っ嫌いなので使用しませんが、貧困家庭の出身者が軍隊に志願するというのはアメリカでは実際あります。志願の理由はさまざまです。

私の知人の場合は、大学の学費が途中で払えなくなった、高等教育を受けたい、将来役立つ技術が身につけられる、除隊後に安定した生活が送れる、といった現実的な理由に加えて、「国に貢献できる」という大義名分(これも重要ポイント)を誇りに軍隊に入った人がほとんど。

J. D. ヴァンスも高校卒業後、海兵隊に入隊していて、その経験が人生を変えたと語っています。それは精神面(それこそ努力すること、全力で取り組むことを学んだりとか)だけでなく、普通の生活に必要な基礎知識(銀行口座を開いて、お給料はそこに入れる、といった基本的なこと)もすべて軍隊で教わっている。それは、そうしたことを教えてくれる人が周りにひとりもいなかったからです。

私は軍隊自体を完全に肯定はしないのですが、知人たちを見ると、入隊したおかげで教育を受けられたり、手に職をつけられたり、除隊後も安定した収入を得られたりしているので、ちょっと複雑な心境になります。J. D. ヴァンスも入隊が人生の大きな転機になっている。

もちろん、イラクで戦死することもなく、帰還後にPTSDを発症して家庭が崩壊することもなかった彼らはあくまでラッキーな例であって、まるで使い捨ての駒のような人生を送る人たちもごまんと存在するし、アブグレイブの事件に関与した女性兵士のひとりはアパラチア地域のトレイラーパーク育ちだったと記憶しています。 でもね、軍隊の代わりに底辺の彼ら・彼女らをサポートする機関って他にあるのかなと考えると、やっぱり私は「経済的徴兵制」なんて軽い言葉で批判することはできないですよ。


久々のアパラチアネタでものすごく長くなっちゃったので、本日はこの辺で終わり。

追記:
こんな記事も見つけたから参考までに。


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by rivarisaia | 2016-12-05 21:10 | | Comments(4)