「ほっ」と。キャンペーン

All the Birds in the Sky

表紙がとても気になって読むことにした本。ちょっとシュールで変わった話で、万人受けはしなさそうだけど、私は好き。

b0087556_21114521.png

All the Birds in the Sky』Charlie Jane Anders著、Tor Books

パトリシアは、6才のとき、傷ついた小鳥を助けようとして動物と話せることに気づき、自分にはどうやら魔女の素質があるらしいと知る。

ローレンスは、サイエンス・ギークの天才少年で、家に閉じこもってコンピュータの前で過ごしてばかりいるので、両親から心配されている。

友だちのいないふたりは、あることをきっかけに仲良くなるが、ローレンスがパトリシアの能力を目のあたりにした日から、ふたりの関係はぎくしゃくしはじめる。ローレンスは彼女を避けるようになり、友情にはヒビが入ったまま、ふたりは別々の道を進むことになった。ローレンスはサイエンススクールに進学し、パトリシアは知られざる魔法学校へ。

そして月日は流れ、大人になったふたりはサンフランシスコで偶然再会する。

その頃、あちこちで気候変動による大規模な災害が増加していた。ローレンスは、地球を救うための科学的な解決策を探るべくシンクタンクで働いており、パトリシアは魔女のコミュニティの一員としてひっそりと人助けをしていた。

しかしやがて世界は滅亡へと進みはじめる……

とまあ、こんな調子の話で、こうやってざっと書くと、さして変でもない、よくある話のような気がするけど、このストーリーの枠組みのあちらこちらにヘンテコ要素が挟まれているので、全体的になんとも奇妙な雰囲気を醸し出しているのだった。

たとえば。

小鳥を救うためにパトリシアが向かった、「鳥の議会」が開かれる森の奥の「The Tree」。そこで提示される「Endless Question」。ローレンスが作った「2秒間タイムマシン」。ふたりの命を狙う「名も無き暗殺団」の男。意志を持ち始めるAI。寂れたモールにある秘密の古本屋、魔法の代償……

物語の前半と後半ではトーンもがらりと変わる。ファンタジーっぽい児童書のような、どちらかというとほのぼのしたところの多かった前半とはうって変わって、後半はロマンスもあるけれど、SF、ディストピア、バイオレンスの色合いがより濃くなる。この展開にとまどう人もいそうだし、盛りだくさんなヘンテコ要素にどんな必然性が?と首かしげてしまう人もいそう。この本に向いてる人は、この点を楽しめる人。

パトリシアは自然(ネイチャー)、ローレンスは科学(サイエンス)を象徴していて、自然と科学は対立することも多いけど、互いに協調しないと地球/人類は救えない、というのが全体のテーマ。後半はかなり酷いことがたくさん起こるけれども、希望を感じさせる終わりかた。このあと、世界はどうなったのかなー。

[PR]
by rivarisaia | 2017-02-16 21:16 | | Comments(0)

ザ・コンサルタント

この映画、大好き!! 先週末に観たんですけどね、折に触れて日々あれこれ思い出して反芻している。みんなも観て!!!

日本のポスターがものすっごくB級感を漂わせてるので、えー面白いのーって気持ちになるのはわかるんですけども。

b0087556_18010150.png

あらすじは、コピーの通り「職業、会計コンサルタント。本業、腕利きの殺し屋」の話です。これ以上は詳しいことは言いたくないので、何も知らないまま、観に行ってほしい。最初よくわからなくても、最後で話はぜんぶつながりますし、いちいち細かい部分で気が利いてるうえに、伏線もばっちり回収。最後のほう畳み掛けるように「うわーそうきたか!」となって、「やられた〜!」っていう終わり方をするので、最高。

会計コンサルタントとしても、殺し屋としても大変優秀な男クリスチャン・ウルフを演じるのはベン・アフレックです。体格がどっしりしてることもあって殺し屋としても安定感バッチリなんですけど、何よりも、もさっとして無表情で不器用そうなところがとてもよかった。ハマリ役だと思う。

クリスチャン・ウルフは、とある企業の財務調査の依頼を受けるのですが、その企業の経理部の女性にアナ・ケンドリック。ベン・アフレックにくらべてちっこい彼女も適役で、おまけに主人公とヒロイン的な女性との間で変にベタベタした余計なロマンスシーンがなくて、絶妙な距離感を保ってた点もポイント高い。

続編できたらいいのにな。

一応、予告編を貼っておきますね。




[PR]
by rivarisaia | 2017-02-10 18:49 | 映画/洋画 | Comments(2)

沈黙 —サイレンス—

遠藤周作の『沈黙』をスコセッシが映画化すると耳にしてから長らく楽しみにしてたけど、待った甲斐があったとはこのこと。『ディパーテッド』よりも断然こちらのほうが素晴らしいと思ったけど、カトリックの信仰というテーマ的にアカデミー賞は難しいかなという気もするので、ノミネート数少ないのはなんか納得。

2時間40分ですが、長さは感じませんでした。上映時間と拷問描写にひるまず、できれば観たほうがいいですよー。現代の日本でもじゅうぶんあるある、と思い当たるあれやこれやに愕然とするけど……。

b0087556_16100838.png
沈黙 —サイレンス—(Silence)』監督:マーティン・スコセッシ

キリシタン禁制の日本に潜入したポルトガル司祭が、残忍な拷問にかけられ殉教していく日本の信徒らの姿を目にして、「これほど酷いことが起きているのに、神はなぜ、沈黙しているのか?」と苦悩し、ついに……という物語で、「神は決して沈黙しているわけではない」というのが大きなテーマです。

常日頃「日本人は宗教に寛容」という言葉を見聞きするたびに、ちゃんちゃらおかしいと笑っちゃうのですが、経験からいっても寛容なんてことはあまりなくて、はっきりいえば往々にして節操ないし、配慮に欠けてることが多い。

それをそのまま体現したかのような存在が、本作の奉行(イッセー尾形)と通辞(浅野忠信)です。

「ひとこと転ぶといえばよいのだ」「ほんの形だけ踏めばよい。形などどうでもよいことではないか」と、時にへらへらと笑顔で迫ってくる奉行と通辞の姿は、寛大なようでいて実際には非常に酷なことをやっているわけですが、過酷な拷問を目にした私たち観客も、「形だけだから、頼むから踏んでください!」とつい思わされてしまう。

農民を拷問にかけたり、あの手この手で司祭に棄教を迫ったりする場面も心が痛いのですが、グサッと刺さったのは、「日本は沼だから、根は腐って、花も咲かない」というセリフ。これ信仰の話なんですけど、よく考えてみると信仰だけじゃなくない? デザインに対する考え方とか、基本的人権とか、教育の重要性とか、いろんなことに対していまだに沼すぎるのでは……? 大丈夫?(震え声)

オープニングとエンディングで虫の声がするのですけれども、オープニングでは静寂を感じて、エンディングではああ神はそこにいるんだなと感じました。これは人によって捉え方が違うんだろうな。

さて、主演のアンドリュー・ガーフィールドは、最初に配役を聞いたときには若すぎるのではないかと不安でしたが、揺れ動く若い司祭としてピッタリだったし、そのほかのキャストも全員がはまっていました(特に、塚本監督)。異国の監督が台湾で撮影しても、こんな圧倒的な時代劇が撮れるのね。

原作の力と映像の力があわさって、鮮明に迫ってくる作品ですが、あくまでフィクションなので、史実やカトリックの教義と混同しないほうがよいかも。これから原作を読む人は、最後のめっちゃ読みにくい「切支丹屋敷役人日記」もがんばって読んでね!(あの部分とても重要なのに読まれない……と遠藤周作が嘆いてるインタビューどっかでみた)

『潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆』(大橋幸泰著、講談社選書メチエ)を読むと、フィクションで描かれてるイメージとはまた違った実像が見えて、大変興味深いのでおすすめです。

しかし他人が大切にしていることに対して、自分のものさしで遠慮なく踏み込んでしまうことは、意図せずとも誰もがやりがちではあるし、私もやりかねないのでじゅうぶん気をつけないといけないなー。



[PR]
by rivarisaia | 2017-02-01 16:24 | 映画/日本 | Comments(5)