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補足:They Were Like Family to Me とブルーノ・シュルツ

8月にホロコーストをテーマにした短編集を紹介したんですけど、その中の「In the Land of Armadillos」という話に関する補足(In the Land of Armadillos」のネタバレにも通じるので注意)。


In the Land of Armadillos」は、SSの将校がユダヤ人の絵本作家に子供部屋の壁画を描かせる話です。人を殺すことをなんとも思わない冷血な将校が、人生に絶望している絵本作家と会話を交わすうちに、どういうわけだか絵本作家に生きる気力を取り戻させようとするという皮肉な展開が待ち受けています(そもそもナチスのせいで絶望的な世の中になっているというのに)。

で、この絵本作家なんですけど、ブルーノ・シュルツがモデルでした。

ブルーノ・シュルツはポーランドのユダヤ系作家&画家で、短編集『肉桂色の店』収録の「大鰐通り」はクエイ兄弟のアニメーション『ストリート・オブ・ クロコダイル』の原作で、また以前このブログでふれたジョナサン・サフラン・フォアのダイカット本『Tree of Codes』の元になった本でもあります。


シュルツは絵本は書いてないけど、自分の本の挿画を描いたりはしていた。先日、ブルーノ・シュルツに関する本を何冊か読んでいたら、2001年2月9日にシュルツの「壁画」数点が見つかったという記述がありました。

タルノフスキエゴ通り14番地にあるヴィラ・ランダウという家屋で、三重に塗られたペンキを剥がしたら壁画が出てきたのです。ランダウは、シュルツを庇護したとされるウィーン出身のゲシュタポで、ドイツ兵の幼い息子の部屋に絵を描くという使役をシュルツに与えていました。実際の壁画は、グリム童話がモチーフだったようで、制作時期は1942年の春か初夏。

残念なのは、壁画がそのまま保存されることはなく、はがされてエルサレムの博物館に送られちゃったということです。なんてこと! ドイツの映画監督ベンヤミン・ガイスラーが絵画が発見された際の記録映画を撮っているそうなので、機会があれば一度見てみたいな。

さて、以下、ブルーノ・シュルツの人生にざっくりと触れます。

1892年、ポーランドのドロホビチ(現ウクライナ領)に生まれたシュルツは、1910年〜20年代は画家として活動、1933年に短編集『肉桂色の店』(15編収録)、1937年に『砂時計の下のサナトリウム』(13編収録)を出版し、その他雑誌に4本の短編を発表しました。

シュルツがくらしていたポーランドのドロホビチ(現ウクライナ領)は、1941年にナチスに占領され、ゲットー地区が規定されて、シュルツ一家も移転をよぎなくされますが、シュルツ自身はゲシュタポ将校であるランダウのお抱え画家としての仕事を得て保護されていました。

1942年11月19日の黒い木曜日、「アーリア人証明書」を得てワルシャワへと向かおうとしていたシュルツは、旅行用のパンを受け取りに行く途中でゲシュタポが「野蛮作戦」とよぶユダヤ人殺戮に遭遇、路上で射殺されました。シュルツを殺した人物は、彼がランダウのお気に入りのユダヤ人であることを知っていたとみられ、ゲシュタポ同士の仲間割れのとばっちりで殺されたともいわれています。

[参考文献]
『ブルーノ・シュルツ 目から手へ』加藤 有子著、水声社
『シュルツ全小説』ブルーノ・シュルツ著、工藤幸雄訳、平凡社ライブラリー

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by rivarisaia | 2017-10-25 21:37 | | Trackback | Comments(0)

アゲハようちえん2017越冬組とおまけの存在

今年のアゲハは夏ミカンの鉢から回収したのが遅くて、5匹育てたうちの2匹がおなくなりになり、3匹ほどが越冬中です。夏ミカンの鉢に幼虫がいるのを確認してから数日ほど油断していると、姿が消えてるんだけど、鳥が食べてるのかな。目ざといな。

さて、庭の鉢植えから回収したガチャピンが蛹になったんですけどね、なんか様子がおかしい。以前、アオムシコバチに寄生された蛹について観察した結果を報告しました。

この時、寄生された蛹はでれーんと伸びている、と書いたんですけど、今回もしまりない。

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右が通常の越冬蛹です。左の下の節目が伸びてるのわかりますか。心なしか色も悪い。でもアオムシコバチのはずはないと思うの、だって蛹化したあと気をつけたもんなーと、この写真撮った次の瞬間。

蛹がパカっと割れてね、蛆みたいな白くてころころした虫が出てきたんですけど…………! ヒイイイイイ! けっこう気持ち悪い!!

気色悪いので、パックリ割れた蛹ごとビニール袋に入れて放置していたら、数日後、こちらの方々も蛹化していた。2匹いたみたい。寄生蜂か、寄生蝿かどっちだろう。よくわからないので、袋に入れたままにしておきます。どうやらこの2匹も越冬するみたいだよ。

というわけで、このおまけの寄生の蛹も写真を撮ってみたのでのせますが、気持ち悪さを軽減するために、植物とかあしらってインスタっぽい加工を施してみました。どうかしら。

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下のほうに写っている、黒い豆のような種のようなブツが寄生蜂だか蝿だかの蛹。何かが出てきたらまたご報告いたしますね。


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by rivarisaia | 2017-10-20 23:56 | 生きもの | Trackback | Comments(6)

4 3 2 1

ブッカー賞ショートリストに残ったオースターの広辞苑並みに厚い小説を読みました。ただし、じつは「not my cup of tea」で、私は選ばれし読者ではなかった。

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4 3 2 1』Paul Auster著、Henry Holt and Co

大西洋をこえて20世紀最初の日にエリス島に到着したユダヤ人のレズニコフ氏は、アメリカで新生活を始めるにあたり、ユダヤ名は捨ててこれからはアメリカ人っぽい名前を名のったほうがいいぞ、そうだな「ロックフェラー」にしろよ、という助言を受けるも、入国審査官に名前を尋ねられた際「Ikh Hob Fargessen!(忘れちゃった!)」とイディッシュで答えたがゆえに

イカボッド・ファーガソン

という名前になった。

イカボッド氏は結婚し、息子たちが生まれ、さらに孫が誕生し、この本はその孫のひとりであるアーチボルド・ファーガソンの人生についてのおはなし。それもこのアーチボルド・ファーガソンには四つのバージョンが存在する。

同じ両親から同じ日に生まれて、同じDNAをもってるけど、それぞれ全然違う人生をおくることになる4人のファーガソン。まるで別の人生を歩むとはいえ、4人というか4つのバージョンには、どこか似ている点もあるし、共通する脇役も登場する(脇役はファーガソンとの関係性が違っていたり、両親はじめ親族の人生もまたそれぞれ異なる)。

小説自体は、「1.1」「1.2」「1.3」「1.4」「2.1」「2.2」……「7.4」という構成になっていて、「1.1」「2.1」……がファーガソン ver. 1の人生、「1.2」「2.2」……がファーガソン ver. 2の人生(以下略)という具合。

それぞれの人生でいろいろなことが起こるため、読んでいる最中でけっこう混乱して「で、このファーガソン、どのファーガソンだっけ?」となるため、カギとなるポイントをメモして読んでいったんですけど、混乱するとはいえ、「1.1」「2.1」……というふうに読むのは再読のときにして、最初は本の構成順に読んだほうがいいです。

タイトルの意味や4人が存在した理由が最後のほうで明らかになるからです。

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ネタバレ防止でぼやかしてますが、メモを取らないとめっちゃ混乱する


で、このファーガソンの物語がどうかというと、最初の頃はよかったんだけど、だんだん飽きてきちゃって、ときどき面白いことや驚きがあるとはいえ、全体としてはどのファーガソンにも私はあまり興味が持てなかった(ごめんね、オースター)。もっとも期待できそうなファーガソンは早々に「あれっ?」ということになっちゃうし。

途中から「どうしてこんな重い本(内容ではなく、物理的に重量がある)を読んでいるのかー」「だから何なの」とうんざりしてしまって、だんだん惰性で読んだので、これ以上の感想は保留にします。

『4 3 2 1』がブッカー賞を取ったらかなり驚きだけど、去年の『The Sellout』も「え、なぜ……?」って感じだったから(『The Sellout』は最後の2、3ページ以外はサッパリ良さがわかりませんでした)、どれが受賞するか見当つかない。発表が楽しみ。


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by rivarisaia | 2017-10-12 18:39 | | Trackback | Comments(0)

エイリアン: コヴェナント

プロメテウス』の続編で『エイリアン』の前日譚。前作『プロメテウス』の謎が解決……したのか、よくわからないけど、新たな疑問が生まれた。とりあえず、創造主に反発した悪魔のエデンみたいな話だったなーと思いきや、仮タイトルが『Paradise Lost』だったときいて納得。

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エイリアン: コヴェナント(Alien: Covenant)』監督:リドリー・スコット

『プロメテウス』の一件から十数年後、ノアの箱船みたいな宇宙船コヴェナント号(入植者&胎芽を大量に運んでいる)がオリガエ6という惑星を目指して航行中、突発的な事故が発生、冷凍睡眠中だった乗組員が対処していると、謎の信号が受信され、解析してみたら英語の歌だった。そこで、セイレーンの歌声に呼び寄せられるがごとく、コヴェナント号は発信源の惑星に向かう。

ちょっとまって。なんで?

その惑星がオリガエ6より地球に似てる!ということで、いきなりの目的地変更。似てるっていうだけで、未知の惑星に行くの大丈夫なの?と心配になるんですけど、このコヴェナント号の乗組員の方々は、一時が万事こんな調子で、びっくりするくらいおっちょこちょいというか、脇が甘い。コヴェナント号で頼りになりそうなのは、アンドロイドのウォルター(マイケル・ファスベンダー)くらいなもんですよ。人間がすごくダメ。

ヘルメットかぶらなくていいの?と思うじゃない? ほらね!言わんこっちゃないよね!?

コントかな?というくらいずっこけな出来事が連続しておきたりするんですけど、『プロメテウス』に登場したアンドロイド、デヴィッドが登場したあたりで、なんだかこれエイリアンの話というより、マイケル・ファスベンダー型アンドロイドがメインの話かな?っていう様相になってきました。
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左の誕生秘話っていうより、右の人の独擅場


ファスベンダーとファスベンダーが語り合ったり、笛吹いたり、喧嘩したり、そんな話です。ええとエイリアンも出てきますけど。

ところで、ちょっと以下、ネタバレなのですが、とても疑問がありまして、

最後に微笑む例の人はデヴィッドなんですかね。ふつうに考えたらデヴィッドなんだろうけど、リブートして覚醒しちゃったウォルターだったらちょっと面白いなと思って。で、エンジニアの星ってあれしか存在しないんですかね。そしておおもとのエイリアンの星と、今回の話はどう関係してくるのー?

やっぱり謎が解けてないみたい! 次は『プロメテウス』と『コヴェナント』の間の話になるみたいですけど、そこでいろいろ解決するのかな。


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by rivarisaia | 2017-10-04 19:13 | 映画/洋画 | Trackback | Comments(0)

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