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Astray: エマ・ドナヒューの短編集

ちょうど『ルーム』公開つながりで、エマ・ドナヒューの短編集を紹介。これ、感想書いたつもりでいたけど、気のせいだったみたい。読んだり観たりしたらすぐ書くようにしたい……(これ言うの何度目)。

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Astray』Emma Donoghue著、Little, Brown and Company刊

タイトルの「astray」は、「道に迷った」という意味で、本作は「Departures」「In Transit」「Arrivals and Aftermaths」の3つのパートに分かれており、移民、逃亡者、放浪者、弁護士や彫刻家などなど、様々なさまよえる人々が主人公の短編が14話収録されています。

どの短編も、現実に起きた出来事が元になっていて、ひとつひとつの物語の後に、実際の出来事について紹介するページがある。それは新聞に掲載された小さな記事だったり、どこかに保管されていた記録だったり、断片的な情報しか残っていないけれど、彼らは確実に存在していた。そんな人々の、もしかしたらこんなだったかもしれない物語。

短編集の常として、心に残る話とあまりピンとこなかった話が混在してはいるものの、特に印象深かったものを厳選すると、私の場合は以下の6話。

「Last Supper at Brown’s」
元になったのは1864年にテキサス州で起きた事件。主人を殺害して、その妻と逃亡した奴隷の話。

「Counting the days」
1849年、カナダ。ある移民の夫婦の話。夫が先に移住して、後から妻がやってくるんだけれども……。これはとても切ない。

「Snow-blind」
ゴールドラッシュの時代の、二人の男の友情と別れ。

「The Gift」
以前『Orphan Train(孤児列車)』という本を紹介したけれど、これはその孤児列車がらみの話で、養子縁組団体を介して交わされた、産みの母親と養父の手紙が元になっています。

『Vanities』
1839年ルイジアナ州のプランテーション。従姉妹の死の謎を探る少女の話。

『The Hunt』
アメリカ独立戦争さなかの少年兵の話。1776年末、ニュージャージーやスタテンアイランドにおいて、英国とドイツ軍によって組織的なレイプが行われていたというのを知らなかったので、本書でいちばん衝撃的だった。参考文献としてあげられていた『Rape and Sexual Power in Early America』(Sharon Block著)を読んでみたい。

そのほか、亡くなった時に女性だったことが判明したMurray Hallの話(「Daddy's Girl」*実際にはHallの娘が主人公)や、男装の女性 Mollie Sanger の話(「The Long Way Home」)も良かった。

著者は、実在の人々のその後を調査していたりもするので、事実紹介ページは後日談のようでもあった。フィクションとリアルが交差して、不思議な読後感を味わえる短編集でした。


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by rivarisaia | 2016-04-18 22:39 | | Trackback | Comments(0)

イタリア語テキスト:Boccaccio Cinque Novelle

今までやるやる詐欺だったけど、この春からはもっと真面目にイタリア語やるんだよ、という決意のもと、結構前に買って放置していたイタリア語のテキストを引っ張り出しました。

じゃじゃーん!
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『Boccaccio Cinque Novelle』(Bonacci editore)

「Classici Italiani per stranieri(外国人のためのイタリアの古典)」のシリーズより、ボッカッチョの『デカメロン』から5つの話が収録されてます。友だちに「デカメロンか....エロいの?」って聞かれたんですけど、ざっと見た感じでは特にエロくない以下の5話ですよ。

4日目第9話(心臓を料理して妻に出す話)
5日目第8話(ナスタージョ・デリ・オネスティの話)
7日目第4話(トファーノの井戸の話)
6日目第10話(修道士チポッラの話)
8日目第3話(カランドリーノの魔法の石の話)
最初に収録されている、「妻の愛人の心臓を料理して妻に食べさせる」というグロい話が記憶に残っていて、あ、それ原文で読んでみたいと思ったのでした。そりゃいいとして、このテキストの中ページどうなっているかというと、こんな感じ。
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上の灰色の枠の中におおまかなあらすじが書いてあって、原文と現代イタリア語訳が見開き対訳になって掲載されていて、左右の灰色の枠に訳注があるという親切設計です。

果たしてこれ、私に読み解けるのかしら....。よくわからないけど、最初の話くらいがんばってみるね。



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by rivarisaia | 2016-04-08 10:38 | ラテン語・イタリア語 | Trackback | Comments(0)

The Thing About Jellyfish

去年のNational Book Awardファイナリスト、NY Timesベストセラー、Publishers Weekly Best Bookなどでちらほら見かけていて、気になっていた児童書。親友を亡くした女の子が後悔の念に苛まれながらも、なんとか立ち直っていく過程を描いた物語。

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The Thing About Jellyfish』Ali Benjamin著、Little, Brown Books for Young Readers

12歳のスージーには親友フラニーがいて、でもそのフラニーは休暇中に事故で死んでしまった。それ以来、スージーは口をきかなくなってしまう。
泳ぎが得意だったフラニーが溺れるなんてありえない。スージーのママは「そういうこともあるのよ」と言うけれど、納得のいかないスージーは親友が溺れてしまった理由を探そうとする。
もしかしたらフラニーは、猛毒のクラゲに刺されてしまったのでは?
自分の内側にこもり、とりつかれたようにクラゲについて調べ始めるスージーだが、彼女にはもうひとつ誰にも言えないことがあった……

ちょうど小学生から中学生になったばかりの微妙な微妙なお年頃の話で、スージーのお兄ちゃんとその彼氏も「一番きっつい時期だよなー」というようなことを言ってるんですが、まったくもって同感である。

今は学校では友だちが全然いなくて、周囲から浮いてる存在であるスージーが、唯一の親友だったフラニーの死、というかむしろそれに付随するクラゲの生態に全エネルギーを注ぐ勢いで執着する理由は、次第に明らかになるんだけれども、大人になってみれば「子どもの頃にはよくあるよね〜」というような事柄だったりする。でも、それは子ども本人にとっては、すごく心が傷つく一大事なのだ。

ただ、スージーが親友に対して「あること」をしでかした件については、かなりびっくりしました。スージー、いくら変わってる子だからって、それってどうなの……。

ちょっと切なくて、ほろっとしながらも、でも最後は明るい未来が感じられて、おまけにクラゲについてのトリビアも得られるという1冊です。オーストラリアに生息する「イルカンジ(Irukandji)クラゲ」怖い! どう怖いのかは、スージーに教えてもらってください。



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by rivarisaia | 2016-03-31 23:03 | | Trackback | Comments(0)

セプテンバー・ラプソディとV・I・ウォーショースキーのシリーズ一覧

ずっと愛読してきたのに、だんだん面白くなくなって読むのをやめてしまうシリーズ小説が数あるなかで、V・I・ウォーショースキーのシリーズだけは今も面白く読んでいて、よく考えてみるとヴィクとは私が高校時代からのおつきあいである。現時点で長編の邦訳は16冊出ています。16冊目がこちら。
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セプテンバー・ラプソディ』サラ・パレツキー著、山本やよい訳、ハヤカワ・ミステリ文庫

もはや私もヴィクとともに成長してきました。ここまでくると、フィクションの人物なのに、親戚のお姉さんみたいな存在になってくる。小説の中と現実の時間の進み具合が一致してない本もありますが、ヴィクの場合は小説も現実も同じように時が経っているので、かつてはタイプライターで報告書を打っていたヴィクが、PCを導入し、今ではiPadを駆使しているのも感慨深い。

パレツキーが第1作から一貫して描いてきたのは、巨大な権力を前になす術もない人々、そんな彼らのためにひとり捨て身で戦うヴィクの姿ですが、回を重ねるごとに敵が強大になってきている気が。時代を反映しているせいなのか、9.11以降、特にそんな感じがします。もう年で体力落ちたとかいいながらも、あいからわずヴィクはタフで不死身なんですが、そんなヴィクの活躍っぷりを読むと元気が出るので、時には弱音を吐きつつ、そして無茶っぷりをロティやコントレーラス爺さんから怒られつつも、いつまでも頑張ってほしいなー。

最初に読んだ時は、ヴィクの翻訳口調が可笑しくて、友だちと口真似して笑ったりもしたけど、だんだんなれてきた。そんな今では英語でも読むようになりました。

また、V・I・ウォーショースキーのシリーズで個人的に難なのは、邦訳も原書もともにタイトルがまったく覚えられないことです!

もはや覚えようという気もないんですが、順番がわからなくなるので、自分用メモも兼ねて1作目からのタイトル一覧を書いておきますよ。

長編
サマータイム・ブルース(Indemnity Only)
レイクサイド・ストーリー(Deadlock)
センチメンタル・シカゴ(Killing Orders)
レディ・ハートブレイク(Bitter Medicine)
ダウンタウン・シスター(Blood Shot)
バーニング・シーズン(Burn Marks)
ガーディアン・エンジェル(Guardian Angel)
バーステイ・ブルー(Tunnel Vision)
ハード・タイム(Hard Time)
ビター・メモリー(Total Recall)
ブラック・リスト(Blacklist)
ウィンディ・ストリート(Fire Sale)
ミッドナイト・ララバイ(Hardball)
ウィンター・ビート(Body Work)
ナイト・ストーム(Breakdown)
セプテンバー・ラプソディ(Critical Mass)

短編
ヴィク・ストーリーズ(Windy City Blues)
アンサンブル

長編の最新刊は『Brush Back』。邦訳いつ出るかなー。

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by rivarisaia | 2016-03-09 23:59 | | Trackback | Comments(6)

The Marvels

『The Invention of Hugo Cabret(邦訳:ユゴーの不思議な発明)』や『Wonderstruck』のブライアン・セルズニックの新刊。

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The Marvels』Brian Selznick著、Scholastic Press

1766年、難破船でひとり生き残った少年ビリー・マーヴェル。前半400ページほどは、ロンドンの劇場で活躍することになる、ビリーと五世代にわたる彼の子孫の物語が、絵だけで展開します。

そして時は1990年に移り、学校を飛び出してロンドンに住む叔父のもとへやってきた少年ジョセフの物語が、今度は文章で綴られます。

さて、ビリーの一族の物語と、ジョセフの物語はどのようにつながっていくのか、徐々に謎が明らかになっていきます。

イラストだけの最初の400ページが本当にすばらしくて、正直に言うと、テキストパートに突入したとたんに、気持ちが置いてけぼりにされたのも事実です。テキストパートに不満を抱く人々の気持ちもわかる。私も90年代の主人公ジョセフにイライラしたし、途中で明かされた事実には「えー! そりゃないよ!」と文句も言いたくなりました。

だが、しかし。

最後、再びイラストのみで展開する現代のパートがあるのですが、そこを読んだ(見た)ときに、なんだかじんわりしてしまったんですよね。そこには、叶えることのできなかった夢があったから。

児童書として考えてみると、ブライアン・セルズニックはさりげなく難しいテーマをもってきたなーと感じました。最後まで読んだら、もう一回最初のページから読み返してみるといいかも。最初かったるく感じたテキストパートも2度目に読んだ時は印象が変わった。

著者のあとがきにもありますが、ロンドンの叔父さんの家は、実在の「Dennis Severs House」がモデルです。ここ、行きたい!

著者本人が作成した本のトレイラーもいい感じなので貼っておきますね。





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by rivarisaia | 2016-01-26 20:14 | | Trackback | Comments(2)

Everything I Never Told You

想像していた内容とはだいぶ違ったんだけれども、しみじみとよい本でした。

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Everything I Never Told You』Celeste Ng著、Penguin Press

Lydia is dead. But they don’t know this yet.
リディアは死んでいる。でも彼らはまだそのことを知らない。

という文章で始まるこの小説は、1977年、オハイオの小さな町にくらす中国系アメリカ人の一家の話です。

アメリカ生まれの中国人である父ジェイムズ、白人の母マリリン、優秀な兄ネイサン、両親の一番のお気に入りであるリディア、そして目立たない末っ子のハンナ。リー一家は、そこそこ幸せな5人家族のはずでした。

ある朝、リディアが忽然と姿を消し、やがて近くの湖で死体となって発見されます。

冒頭の1文から私は、果たしてリディアを殺した犯人は誰なのか、それとも殺人ではなく事故なのか、はたまた自殺なのか、という謎を解く、ミステリーのような物語なのかなと推測していました。

ところが全然違った。

物語は過去に戻り、リディアが死んでしまった日にいたるまで、家族のそれぞれがどんな人生を歩んできて、どんなことがあったのかを探っていく。大学教授の父ジェイムズはマイノリティであることにフラストレーションを抱えている。出産のために学業を断念し、主婦になった母マリリンは、自分の夢をリディアに託す。両親の夢と希望を一身に背負うリディアの影で、存在感を消されてしまっている兄と妹。

家族ひとりひとりがこれまで抱えてきた問題(そして70年代という時代における、人種差別や女性の社会進出といった事柄が大きく影響している)が、じわじわとあぶりだされていき、最終的にはリディアの死に結びついていく。リディアはどうして死んでしまったのか、それを考えると、とても切なくて泣ける。

ミステリーを期待すると肩透かしをくらうだろうし、読んでいる最中はどんどん重苦しい気分になっていくし、登場人物にイライラしたりもするんですけども、読み終わってみれば、この一家のことがしばらくは忘れられない。幸せになってほしいなあ。



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by rivarisaia | 2016-01-20 23:43 | | Trackback | Comments(2)

2015年これを読まずして年は越せないで賞 受賞作!

いつもは年末にお知らせしているのですが、今回は遅ればせながら、2015年の「これを読まずして年は越せないで賞」のお知らせです!

年末に行われたツイッター会議とか候補作の詳細については以下をどうぞ!


ざっくりと紹介しておきまーす。

I. 児童書部門:『Blackthorn Key』Kevin Sands

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17世紀のイングランドを舞台に、薬剤師の見習い少年が暗号を解読しながら連続殺人事件の謎と錬金術の秘密を解明するというページターナーな1冊。今年の秋に続編が出るそうです!

I-2. YA部門受賞『Six of Crows』Leigh Bardugo(YA)
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例えていうなら、ゲーム・オブ・スローンズの世界でオーシャンズ11の物語が展開するような話で、三部作の第1作目。

・そのほかの候補作
『Nightbird』Alice Hoffman
怪物が棲む森のそばの小さな町に暮らす女の子が主人公。彼女の家族は大昔に魔女に呪いをかけられていて……とおどろおどろしい設定のようだけど、ほんわかした可愛らしいファンタジー。

『Nimona』Noelle Stevenson(YA)
破天荒な主人公Nimonaが活躍する一風変わったアメコミで、全米図書賞最終候補作。

『What We Saw』Aaron Hartzler(YA)
真実を探ろうとする勇気ある第三者を主役にすえた、レイプをテーマにした作品。

(最終候補からは外れた作品)
『A Darker Shades of Magic』V.E. Schwab(YA)
『Most Dangerous』Steve Sheinkin(YA)

II. ノンフィクション部門:『Missoula』Jon Krakauer
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アメフトチームのメンバーがレイプ事件を起こしたのをきっかけに、数々の暴行事件が明るみにでたという事実を追い、性犯罪に対する私たちの認識を改めさせる必読の1冊。

・そのほかの候補作
『So You’ve Been Publicly Shamed』Jon Ronson
最近のインターネットでありがちな、炎上、すなわち、集団による個人攻撃と、加害者や被害者の心理について探るルポルタージュ

『Modern Romance』Aziz Ansari
コメディアンのアジズ・アンサリが社会学者とタッグを組んだ、恋愛に関するユーモラスで真面目な社会学の本

(最終候補からは外れた作品)
『Rising Strong』Brené Brown
『Being Mortal』Atul Gawande
『Pioneer Girl: The Annotated Autobiography』Laura Ingalls Wilder
『Becoming Nicole』Amy Ellis Nutt(*これはしっかり話し合いたい本なので、来年に持ち越し)

III.フィクション(大衆小説)部門:『Inside the O’Briens』Lisa Genova
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『アリスのままで』の著者が書いた、ハンチントン病を抱えた家族の物語

・そのほかの候補作
『The Lake House』Kate Morton
おなじみのケイト・モートン最新作。

『Circling the Sun』Paula McLain
イギリス生まれでケニア育ちの女性パイロット、ベリル・マーカムの自由奔放で興味深い人生を描いた伝記小説

(最終候補からは外れた作品)
『Last Song Before Night』Ilana C. Myer
『Seveneves』Neal Stephenson

IV. フィクション(文芸小説)部門:『A Brief History of Seven Killings』Marlon James
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今年のブッカー賞受賞作。ボブ・マーリー暗殺未遂事件を軸に、ジャマイカの歴史を独特のリズムのある文体で語る長編叙事小説

・そのほかの候補作
『A God in Ruins』Kate Atkinson
ケイト・アトキンソンの『Life After Life』の姉妹編にあたる、語られなかったもうひとつの物語。

『Fates and Furies』Lauren Groff
ある夫婦の結婚生活を、夫と妻のそれぞれの視点から描いた

『The Buried Giants』Kazuo Ishiguro
邦訳は『忘れられた巨人』

(最終候補からは外れた作品)
『A Little Life』Hanya Yanagihara

そして2015年の大賞は、紆余曲折のすえにどんでん返しがありまして、

児童書部門:『Blackthorn Key』に決定しました!

児童書ということもあり、多くの人に読みやすい本でもあるので、英語で何か読んでみたいな、という人にもおすすめですよー。



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by rivarisaia | 2016-01-05 23:36 | | Trackback(1) | Comments(0)

Pioneer Girl: The Annotated Autobiography:大草原の小さな家の誕生秘話

ローラ・インガルス・ワイルダーの「大草原の小さな家」シリーズとリンドグレーンの「やかまし村」シリーズは、子どもの頃の私のバイブルでした。何度読んでも飽きないし、嫌になった時や退屈した時の逃避先であり、ごっこ遊びの際のネタ元でもありました。

その「大草原の小さな家」が、どうやって世に生まれて、どこまでが実話なのか、それを詳しく詳しく研究したすっごい本がこちらです。

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Pioneer Girl: The Annotated Autobiography
Laura Ingalls Wilder著、Pamela Smith Hill編集、
South Dakota Historical Society Press

シリーズの元になったのは、ローラが書いた「パイオニア・ガール」という原稿でした。

本書はその「パイオニア・ガール」を丸ごと掲載し、ひとつひとつの出来事が実際にあったことなのか、脚色されたフィクションなのかを検証し、はたまた登場人物が実在の人物なのか、架空の人物なのかも調査し、さらには歴史的事実なども細かく教えてくれるし、写真も豊富という、まさに「大草原の小さな家」研究の集大成、といった1冊です。

よくぞここまで調べた、すごい!の一言。なにせ、本もデカいし厚いし、重い! こんなに大きな本だとは思わなかったよね……。

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寝っ転がって読んだりできない大きさ。そして注釈の情報量たるや、なかなか全部読み込めない。

とりあえずですね、「大草原の小さな家」の誕生秘話を語るイントロダクションだけでもぜひ読んでください。これまでもローズの伝記等でざっくり触れられてはいますが、本書のイントロダクションはかなり詳細に踏み込んでいます。

はじめはノートに手書きだったローラの原稿を、ローラの娘で作家だったローズが、文章を校正してタイプ原稿を作成し、エージェントに持ち込んだわけです。1930年の春のことでした。

ところが、これが全然売れなかった。

もともと「パイオニア・ガール」は大人向けに書かれたもので、雑誌の連載として売り込もうともしたんだけれども、それもうまくいかず、そこでローズは少年少女向けバージョンを作成し、それを Knopf社の担当者に見せます。すると、Knopf から、8~10才の子ども向けに書き直せば出版できるとの返事が!

ところが出版契約を結ぶ直前、折しもの不況で Knopf の児童書部門の廃止されることになってしまいます。しかし Knopf の担当者が、Harper社の児童書の担当者に原稿を渡してくれたことで、無事 Harper & Brothersから出版が決まったのでした。初版は1932年4月6日に出版されました。

整理すると「パイオニア・ガール」の原稿には5つのバージョンがあります。

(1) 手書きの生原稿
(2) Brandt & Brandt ver.(ローズがタイプしてエージェントに渡したもの)
(3) Brandt & Brandt 校正バージョン
(4) Juvenile バージョン(ローズが作成した青少年版。これを元に現「大草原」シリーズが書かれた)
(5) George T. Byeバージョン(Brandt & Brandt の修正版)

驚いたのはローズの仕事っぷりです。ローズは小説も書いていたけれど、マーケットに合わせて事実を大胆に脚色した「ノンフィクション」も書いてた。ただそのノンフィクションでは、実在の人物の名前や職業だけでなく、性格まで変えちゃったり、ということを平気でやってた。

いいのか、それは……よくないだろ、という感じですが、当然ながらヘンリー・フォードやチャップリンは事実と違うことを書かれて激怒。本が出版できなくなったりもしたみたい。

でも逆に「大草原〜」は、そんなローズの大胆な編集手腕があったから日の目を見たのかもしれません。ローズの腕前はノンフィクションには向いてなかったけど、事実をもとにした読ませるフィクションには向いていた。

出版が決まってから、ローラ自身も、自分の家族の話を元にしたあくまでも「子ども向けのフィクション」という姿勢で書いているので、適切じゃない事柄はさっくり消したりしてますし、複数の人物を合体して一人のキャラクターを生み出したりもしてます(例:ネリー)。

オリジナルの「パイオニア・ガール」自体は、確かに出版がなかなか決まらなかったのもう頷ける内容で、はっきりいうと面白くないのです。でも、このオリジナル原稿が、内容も文章も推敲されて今も世の中に存在する「大草原〜」シリーズになったことが感慨深いし、何より本書が大変に興味深いのは、繰り返しになりますが、オリジナル原稿に対するおびただしい注釈です。

ローラの一家だけでなく、彼らを取り巻くさまざまな人々の人生も追っかけており、庶民の視点でアメリカ西部開拓史を知るのに最適な1冊にもなっている。というか、アメリカの西部開拓史がこんなに身近に感じられる本もなかなかないので、興味のある人はぜひどうぞ。

<おまけ>
日曜日に読むことが許されていた、父さんの本「動物の世界の神秘」は、今ではデジタルで中ページが見られます! デジタルの世界すごいね!

『THE POLAR AND TROPICAL WORLDS』という本で、コチラどうぞ。

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by rivarisaia | 2015-12-26 18:28 | | Trackback | Comments(2)

東京大学の学術遺産 君拾帖

本日は、世界に誇る偉大なる帳面派の日本代表に間違いなく選ばれるであろう人物の本です。

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東京大学の学術遺産 君拾帖』モリナガ・ヨウ著、メディアファクトリー
※クンは、本来は手へんに君

幕末から明治に活躍した偉人・田中芳男。1838年、信州飯田に生まれ、幕末には博物学者・伊藤圭介に師事してパリ万博に参加したり、日本で初めての博覧会を企画したり、上野に博物館や動物園を作ったり、雑誌や本を発行したり、学校作ったり、挙句男爵の称号ももらって、議員なども歴任したという、なんだかすごくえらい人。

そんな田中は100冊近いスクラップブックを遺しており、それが東京大学に保存されている史料「君拾帖(くんしゅうじょう)」です。

日本の博物学の父と呼ばれる田中芳男ですが、帳面に様々な紙モノを貼り付けるという素晴らしい、素晴らしい嗜好の持ち主でした。私は帳面派の師匠と呼びたい。

幕末から大正5年のじつにおよそ60年間にわたって作成された「貼り交ぜ帖」には、引札、領収書、チラシ、カード、名刺、お菓子や食品の包み紙、ラベル、絵葉書、献立表など、さまざまな紙をびっしり貼り付けられています。日本国内だけでなく、パリ万博に参加した時に蒐集した外国の紙モノもたくさん残されており、貴重な史料となっているわけです。

全ページみたいので、デジタル化されてたらいいのになーと思うのですが(その辺まだ調べてない。されているようなら教えてください)、一部をよりすぐってモリナガ・ヨウ氏が紹介しているのが本書です。

どれもこれも興味深いのですが、いくつか印象的だったものは、

  • 絵花火:火薬が紙に塗られた仕掛けつきの刷り物で、たとえば、大砲の絵の先に線香で火をつけると、砲弾が発射されたかのごとく火が動くというもの。
  • 幕末の領収書(印鑑が黒い):朱肉が一般的になるのは明治になってから。長谷川時雨も「印鑑が赤いのは今風で嫌だ」と嘆いているらしいよ!
  • 缶詰ラベル:エゾジカとかクジラはまだしも、亀肉や鶴肉もある。めでたい缶詰扱いだったのでしょうか。キノコの缶詰のラベルもいい感じです。
  • 日本初の液体目薬「精錡水(せいきすい)」:販売者の岸田吟香は、岸田劉生のお父さん。

それから、田中芳男は「モノに紙をあてて炭などでこすって形を写し取る」ということもたくさんやっていて、月餅や煎餅もこすって「拓」を取ってたらしいんですが、パリの石鹸の「拓」もありましたね……。スルメ拓を集めた『鯣(するめ)帖』も残ってるらしいよ……芳男……。

田中芳男の略歴についてはコチラをどうぞ。

東京大学の田中文庫博覧会関連資料目録のページでは、ページの下のほうに画像があります。

じつは今年伊勢に行った際、田中芳男コレクションがあるという神宮農業館に寄りたかったんですけど、改装中で閉まってたんですよね。残念! 今はもう開いてます。





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by rivarisaia | 2015-12-15 22:52 | | Trackback | Comments(0)

フランス百科全書絵引

ご無沙汰しておりました。わたくしのマシンが次々と不調を訴えてきて、いろいろと面倒をみたり(修理まではいかない)データを整理したりしてました。まだちょっと機嫌悪いみたいよ。

で、写真を整理していたら、懐かしい本が出てきたので紹介します。

『百科全書』とは、フランスの思想家ディドロとダランベールを中心とした知識人たちが20年以上かけて編集、作成した百科事典です。全巻の翻訳は出てないけど、図版を1冊にまとめた巨大な本が出ています。

それがこれだ! ドドーン!
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大きさがわかりやすいように、岩波文庫を上に置いてみました。

フランス百科全書絵引』ジャック・プルースト監修・解説、平凡社

いろいろな機械や道具の図版はもちろん、コレオグラフィーやカリグラフィー、文字、動物の絵、戦艦(帆船)の陣形とか、いろんな図版が出ていて、かなり楽しい。家にあってもいいのかもしれないけど、いかんせん大きすぎる……。絶版のようなので、興味のある人は図書館か古書店で探してみてください。

わたしは図書館で借りたんですけども、カウンターのお姉さんに「すごく重いですけど、これ持って帰れますか……?」と心配されました。そしてわたしが持っていたトートバッグには入らなかった。したがって、雨の日に借りるのは危険な本。

本書の目次は以下のようになっております。
第1部:天然資源の開発(農業、漁業)
第2部:文化(建築・劇場、美術技法、音楽・楽器、文字・書物)
第3部:諸科学
第4部:技術(木材技術、金属技術、繊維技術、皮革技術、陶磁・ガラス技術、主要化学技術)
第5部:社会(上流社会の風俗、軍事技術、日常生活の手仕事)
中ページは図版がメインです。
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こんなレイアウトでページの両端に図版のキャプションが入るかたち。このページは「軍事技術」の「艦隊の戦闘隊形」を紹介しています。参考までに部分的に拡大してみますと、こんな図になってる。

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この調子でじつにさまざまな図版が収録されていて、なんらかの資料にもよさそうだし、ひまなときに眺めるのにもよさそうです。ただし重いけど!!

また朝倉書店からも、12000円とお高い本なんですけども、ディドロ『百科全書 産業・技術図版集』という本が出てます。こちらは89ページに「ねじの製造」って項目があってね、
「ねじは16世紀に現れたが、20世紀までの千年紀に発明された最高の工具」
と書いてありました。VIVAねじ!

百科全書は原書のデジタル版がいろいろなところで公開されているのですが、たとえば大阪の図書館のデジタル画像はこちらで見られます。

さりげなくこうしてフランスネタなのは、今年もツール・ド・フランスが始まってるからでした! 早く梅雨終わらないかなー。


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by rivarisaia | 2015-07-08 20:24 | | Trackback | Comments(2)

見たもの読んだものについての電子雑記帳


by 春巻まやや
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