イル・ディーヴォ
2009年 05月 09日
神(Divo)ともベルゼブ(悪魔)とも呼ばれたイタリア政界のドン。大統領にはなれなかったが、7期にわたり首相をつとめ、政界はもちろん、カトリック教会からマフィアまで幅広く影響力を及ぼし、アンブロシアーノ銀行のスキャンダル(ロベルト・カルヴィやヨハネ・パウロ1世の暗殺)やジャーナリストのペコレッリ暗殺にも関与したとされ、裁判にかけられるも証拠不十分で逆転無罪を勝ち取った男。終身上院議員で現在もご存命。
それがジュリオ・アンドレオッティ。
悪い人は長生きしますね。そんな人が主人公の映画です。観たくなるでしょ。
『イル・ディーヴォ(Il Divo)』監督:パオロ・ソレンティーノ
私はもう1回観たいんですが、日本での公開はテーマが難しいかなあ。どうなんだろう。無理ならせめてDVD出してほしい。
映像(画面構成)や音楽の使いかたがスタイリッシュで、すばらしくセンスのいい映画なんですが、裏を返すと、アンドレオッティの半生を平凡なドキュメンタリー風に時系列で描いてないということです。どんどん出てくる登場人物は、名前と職業以外の細かい説明はいちいちされない。さらに台詞のひとつひとつがとてもイイ。すなわち情報量がハンパなく多い。多少の予備知識あるいは少なくとも興味がないとキツイかも。
そんな私も深く理解したとはとても言えず、そしてまた、当時のイタリアを実体験した人とも感じ方が違うんだろうなあという気がする。それにしてもこの映画は後からじわじわきますね...。
特に、ラ・レプッブリカ紙の創立者エウジェニオ・スカルファリとアンドレオッティが差しで話をするシーンと、「Questo Dio lo sa, e lo so anch'io(それを神は知っている。私も知っている)」で終わる独白シーンはじっくり観たい。政治はシンプルにいかないし、きれいごとだけではやっていけないのだった。
さて。
アンドレオッティが目の前にたたずむ白い猫を、パンパン!と手を叩いてどかすシーンがあるんですけれども、あれは何だろうと思いまして、イタリア人に「あの猫はさ、"Gatta ci cova!(猫が潜む=何か隠し事/裏がある)" とか "avere sette vite come un gatto(猫のように7つの命がる=常に難局を切り抜ける)"ってことを指してたりする?」と聞いてみたところ、「それは見当違いに深読みしてる」と言われました。ははは。
要は、アンドレオッティが誰か知らない猫ですら、彼の行く手を阻むことは認められない、猫(=イタリア人)は、アンドレオッティ(=権力)には否応なく道を譲るため、彼の進む道には常に障害物はない、ということであろうとのこと。なるほど。
アンドレオッティは政治家としては悪人かもしれませんが、頭は非常に切れると同時にとても孤独な人なのだろうと、やや同情すらしました。
それにしてもですよ、劇中に「アンドレオッティの秘密の図書室」なるものが登場するんですけどね、あれは本当に存在するらしいですよ。過去の出来事について記した書類がぎっしり収まった個人書庫があるのだ。アノ真相もコノ真相もたぶん記されている。真実を知りたい人、事実が発覚したらヤバイ人、いっぱいいるんじゃないかなー。
あの書庫からして、おそらくアンドレオッティは帳面派の気配。やばい、親近感が湧いてきた。そしてこの映画は映像のコラージュっぽい…。したがって、今年の私のベスト10には入るかも。
●オマケ
映画の冒頭部分だけチラ見するならコチラでどうぞ。出だしの台詞もぞぞぞーとする怖さがあるんですけど、またもや深読みしすぎかなあ。ちなみに主演のトニー・セルヴィッロは『ゴモラ』でゴミ会社の社長役だった人。別人のようだ。
それがジュリオ・アンドレオッティ。
悪い人は長生きしますね。そんな人が主人公の映画です。観たくなるでしょ。
『イル・ディーヴォ(Il Divo)』監督:パオロ・ソレンティーノ
私はもう1回観たいんですが、日本での公開はテーマが難しいかなあ。どうなんだろう。無理ならせめてDVD出してほしい。
映像(画面構成)や音楽の使いかたがスタイリッシュで、すばらしくセンスのいい映画なんですが、裏を返すと、アンドレオッティの半生を平凡なドキュメンタリー風に時系列で描いてないということです。どんどん出てくる登場人物は、名前と職業以外の細かい説明はいちいちされない。さらに台詞のひとつひとつがとてもイイ。すなわち情報量がハンパなく多い。多少の予備知識あるいは少なくとも興味がないとキツイかも。
そんな私も深く理解したとはとても言えず、そしてまた、当時のイタリアを実体験した人とも感じ方が違うんだろうなあという気がする。それにしてもこの映画は後からじわじわきますね...。
特に、ラ・レプッブリカ紙の創立者エウジェニオ・スカルファリとアンドレオッティが差しで話をするシーンと、「Questo Dio lo sa, e lo so anch'io(それを神は知っている。私も知っている)」で終わる独白シーンはじっくり観たい。政治はシンプルにいかないし、きれいごとだけではやっていけないのだった。
さて。
アンドレオッティが目の前にたたずむ白い猫を、パンパン!と手を叩いてどかすシーンがあるんですけれども、あれは何だろうと思いまして、イタリア人に「あの猫はさ、"Gatta ci cova!(猫が潜む=何か隠し事/裏がある)" とか "avere sette vite come un gatto(猫のように7つの命がる=常に難局を切り抜ける)"ってことを指してたりする?」と聞いてみたところ、「それは見当違いに深読みしてる」と言われました。ははは。
要は、アンドレオッティが誰か知らない猫ですら、彼の行く手を阻むことは認められない、猫(=イタリア人)は、アンドレオッティ(=権力)には否応なく道を譲るため、彼の進む道には常に障害物はない、ということであろうとのこと。なるほど。
アンドレオッティは政治家としては悪人かもしれませんが、頭は非常に切れると同時にとても孤独な人なのだろうと、やや同情すらしました。
それにしてもですよ、劇中に「アンドレオッティの秘密の図書室」なるものが登場するんですけどね、あれは本当に存在するらしいですよ。過去の出来事について記した書類がぎっしり収まった個人書庫があるのだ。アノ真相もコノ真相もたぶん記されている。真実を知りたい人、事実が発覚したらヤバイ人、いっぱいいるんじゃないかなー。
あの書庫からして、おそらくアンドレオッティは帳面派の気配。やばい、親近感が湧いてきた。そしてこの映画は映像のコラージュっぽい…。したがって、今年の私のベスト10には入るかも。
●オマケ
映画の冒頭部分だけチラ見するならコチラでどうぞ。出だしの台詞もぞぞぞーとする怖さがあるんですけど、またもや深読みしすぎかなあ。ちなみに主演のトニー・セルヴィッロは『ゴモラ』でゴミ会社の社長役だった人。別人のようだ。
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まるま
at 2009-05-09 13:38
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猫のシーン、007シリーズを思い出していました。なるほど、そういう意味があったのですね。教えてくださってありがとうございます! わたしもこの映画、もう一度観たいです。それにしても、体の硬そうなアンドレオッティさんが『ゴモラ』の軽快な社長さんでもあったとは、驚きです。俳優さんてスゴイ。
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rivarisaia at 2009-05-09 15:08
猫のシーン、なんで深読みしたのかわかりにくいので諺に補足しました。
「あえて犬でも鳥でもなく猫なのは、そういうこともあるかもね....(←私への気遣いか?)いやでも、もっと単純に、俺の目の前からどけどけ!ってことだと思うよー」と複数名が言ってました。
トニー・セルヴィッロすごいですよねー。けっこう好きな俳優です。『ゴモラ』ではあれだけ軽快なのにねえ。アンドレオッティは始終硬直してましたもんね。実際ご本人も始終硬直した人な感じですけど。
「あえて犬でも鳥でもなく猫なのは、そういうこともあるかもね....(←私への気遣いか?)いやでも、もっと単純に、俺の目の前からどけどけ!ってことだと思うよー」と複数名が言ってました。
トニー・セルヴィッロすごいですよねー。けっこう好きな俳優です。『ゴモラ』ではあれだけ軽快なのにねえ。アンドレオッティは始終硬直してましたもんね。実際ご本人も始終硬直した人な感じですけど。
by rivarisaia
| 2009-05-09 04:38
| 映画/洋画
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