修道女フィデルマの叡智

先月あたりからアイルランド関連の小説をちらほら読んでいるので、これも試してみました。なかなかおもしろかったです。

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修道女フィデルマの叡智』ピーター・トレメイン著、甲斐萬里江訳、創元推理文庫

7世紀アイルランド五王国のひとつモアン王国の先王の娘にして、高位の資格を有する法廷弁護士でもある修道女フィデルマが主人公。原書の「Sister Fidelma」シリーズはすでに18冊ほど出ているようなのですが、日本では長編2冊とこの短編集が刊行されています。

本作には5つの短編が収録されていて、修道女でありながら法廷弁護士でもあるというフィデルマがさまざまな事件を解決していくんですが、推理うんぬんよりも、私は当時の社会のようすに心ひかれました。

アイルランドの法律ブレホン法をはじめ、当時の風俗や城内のようす、ケルト派カトリックとローマ・カトリックの違いなど、いろいろと興味深いポイントが多くて楽しい。ちなみにカトリックの考え方については、ケルト派のほうがナットクいくんだよなー。

フィデルマは社会的なポジションがそうさせるのか、それとも日本語での口調のせいなのかわかりませんが、ちょっと偉そうなうえに感情がいまひとつハッキリ見えず、若くして老成した人という印象を受けましたが、短編だからかもしれないですね。長編だとひと味違った彼女が見られるのかも。

しかし、邦訳は第1作から訳されているのではなく、第5作→第3作という順で2作品が刊行中。第1作からいきなり老成した人だったのか、だんだんと成長してきた人なのかはナゾだ…。だからといって、原書で読むのは私には難しいかも。単語になじみがなさそうなんだものー。

ところで、ごくたまにラテン語でひとことつぶやいた台詞なぞが出てくるのですが、カナで書かれた発音表記が若干違うのではないかという点が気になりました。私が習ってたラテン語の先生が発音に厳しい人だったせいか、古典ラテン語ではそう読まないはず、という箇所が目について仕方ない。とはいえ、私は7世紀のラテン語はどうなのか知らないので、なんともいえないけど。ただ、ドミムス・テクムはドミヌス・テークムですよー。

ま、よくあることですよね。まったく別の翻訳小説でカナ表記されてたイタリア語が超英語読みのあり得ない発音になってて苦笑したことがあるけど、それよりは全然いい。
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Commented by 四季 at 2009-09-23 16:19 x
春巻さん、こんにちは。
ブログへのコメント、ありがとうございました!

ほんと、7世紀のアイルランドが見えてくるようで
それだけでもすごく楽しめるシリーズですよね。
ピーター・トレメインは、実は高名なケルト学者だそうなんですよ。
道理で土台がしっかりしてるはずですよね。

でね、どうやら11月に新刊が出るようです。
「蛇、もっとも禍し」で、上下巻ですって。
調べてみると、どうもシリーズ4作目らしく…(多分、ですが)
これで、少なくとも3→4→5と続けて読むことができそうです。
それでも、1と2はどうしたんだろうって思ってしまいますが~。

ドミヌステークム、グノーのアヴェマリアの歌詞にも
出てくる言葉ですね。^^
Commented by rivarisaia at 2009-09-23 22:03
>四季さん、こんにちは!

長編はどれから読んだらいいのかーと迷っていたので、四季さんのブログが大変参考になりました。ありがとうございます!

ピーター・トレメイン、ただ者じゃないケルト博識っぷりですが、学者なんですね、納得。フィデルマ以外の著作も読んでみようかしら。

そして11月の新刊情報もありがとうございます。が、1と2は一体いつ〜? そのうち出るのでしょうか。初々しくて高慢じゃないフィデルマが読めるのか、ちょっと期待します。

ラテン語の部分だけローマ字にしちゃえばいいのになー。せめてドミヌステークムくらいはちゃんと校正しようよ、とちょっと思いました。。。
by rivarisaia | 2009-09-22 00:47 | | Trackback | Comments(2)

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