日本奥地紀行:イザベラ・バードがみた明治初期の日本

昨日のNHK『龍馬伝』が寺田屋事件だったのですが、Twitter上で「もし寺田屋にドニー・イェンがいたら」という妄想で盛り上がってしまい、深夜に心拍数が上がった私です。敵をバッタバッタとなぎ倒す無敵のド兄さん、上半身ムダに脱いで薩摩藩邸まで失踪するド兄さん、もう龍馬よりもド兄さんが主役! カッコイイ〜!
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ぜひ『葉問』を日本で公開してください。(いつもより画像大きめにしてみました)

さて、『龍馬伝』といえば幕末ですが、私は最近イザベラ・バードを読んでいたので、明治初期の日本の情景が、まるで見てきたかのごとく目に浮かんでます。彼女の観察眼や異文化に対する好奇心や愛情、驚異的な情報収集力には、ただただ驚くばかり。

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日本奥地紀行』イザベラ・バード著、高梨 健吉訳、平凡社

明治11年に東京から日光、新潟、そして北海道へ、通訳の日本人男性・伊藤をただひとり連れて旅したイギリス人女性イザベラ・バードの旅行記。維新直後の日本の、特に都市部から離れた土地やアイヌの暮らしを知る貴重な記録となっています。

通訳がいるとはいえ47歳の外国人女性のひとり旅。身体も決してめちゃくちゃ丈夫というわけでもない。しかも当時の外国人は日本の北部についてあまり情報をもっていなかったというのに、未踏の地に向けて出発するイザベラ・バードのガッツはすごい。

民族学的に興味深い点については、それぞれ本書で堪能してもらうとして、以下、些細だけど面白かったことを箇条書き。


駄馬:駄馬の気性がひどい。イザベラも通訳の伊藤も何度も落馬したり、かみつかれそうになっている。そんな馬での旅行、大変。

虫:いたるところに虫が。なかでも蚊と蚤がハンパない。ちょっとでも床に毛布をおくと蚤にたかられる。農村の人たちは大人も子どもも皆、虫にたかられている。虫問題が一番キツイ。

見物人:外国人女性が珍しいため、村中の人がイザベラ見物にやってくる。旅館で寝ようと思っても、障子に無数の穴が開けられて、黒い目が覗き込んでたり、ハッと目をさましたら障子がとりはらわれて、大人や子どもがじーっとイザベラを見ていたり、という不気味なことも。

格差:奥地には不衛生で健康を害している人がたくさんいる。また、ほとんど裸に近い格好だったり、家の中は汚く悪臭がして、食事も祖末だったりと、横浜や東京といった都市部と奥地の格差は大きい。

礼儀正しさ:しかし、"野蛮人と少しも変わらないようにみえる"という貧しい奥地の人々は一様に親切で礼儀正しい。イザベラは法外な料金を取られたことはなく、群れをなす見物人に囲まれても失礼なことをされたことがない、というのは印象的。村の描写をみても、大人も子どもも現代人より礼儀正しいと思う。

アイヌ:奥地の日本人の暮らしにくらべて、アイヌ人の生活は原始的かもしれないが高度な気がする。というか、まるで別の国。古代ローマのガリア人に通じるものを感じる。イザベラの「(アイヌ人が)日本文明との接触によって、益するところはなく、ただ多くの損を得るばかりであったことは明らかである」と1文に、ひとつの文化の消失を予感した。

通訳の伊藤:初対面で「これほど愚鈍に見える日本人を見たことがない」と言われた通訳の伊藤。完全に信用できる男じゃないし、不愉快な態度を取ることも多く、アイヌ人に対しては差別的だが、頭がよくて気が利くし、勉強熱心だ。意外と神経質な面もある。一体どんな人だったんだ…と思ってたら、国会図書館の「近代日本人の肖像」に肖像写真がありました。コチラ


明治初期の日本を見てみたいと思っていた私にとって、イザベラの残してくれた本書のおかげで、当時にタイムスリップした気分を味わえたことは嬉しいかぎり。ありがとう。
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Commented by ゆずきり at 2010-09-10 07:36 x
以前、私もこれ読みました。というか、アイヌのことが全然記憶にないので読みさしだったかも。
それでもやはり、「礼儀正しさ」は印象に残りましたね。かつて、「日本人は礼儀正しい」みたいなことをいわれていたのは本当だったなあと。
だけど、今の感覚でいう「礼儀正しさ」とはなにかどこか違うんですよね。
通訳の伊藤も、話が通じるところもあるけど、理解しがたいというかちょっとずれるところもあり、そういうところがリアルで、時代劇映画なんて、しょせん、現代人がやってるんだなあとあたりまえのことを思い出したりしました。
もういちど読んでみたくなりました。
Commented by rivarisaia at 2010-09-13 22:16
アイヌの部分は奥地の日本とまるで雰囲気が違うんですよね。こういう文化を日本人が消しちゃったんだよなあとちょっと複雑な気分に。

「礼儀正しさ」も確かにいまの礼儀正しさとは違いますね。そして昔のほうが貧しかったかもしれないけど、大人も子どもも人々の態度というか精神がちゃんとしていたような気も…。

時代劇で家屋がうつるたびに、本当なら蚤がたくさんいるんだよ、などと考えるようになりました。あと、最近の時代劇だと人々の姿がこざっぱりしてて(顔に泥がついていて破れた着物だったとしても)、体格もいいので、ますます現代人がやってる感が高まってますよね。仕方ないけど。
by rivarisaia | 2010-09-06 14:24 | | Trackback | Comments(2)

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