マルティン・ベックシリーズ

以前、Twitterで、スウェーデンというと、子どもの頃はやかまし村であり、ピッピであり、ロッタちゃんであるという、ほのぼのと明るくかわいい印象を持っていたが、大人になってみると、クルト・ヴァランダー警部にマルティン・ベック警部に、最近ではミレニアム、ぼくのエリ、という何だかドス黒い印象になっている、と書きました。いいわ~。どんよりと暗くて。

なかでも私は、マイ・シューヴァルとペール・ヴァールー夫妻が生み出した警察小説、マルティン・ベックのシリーズが好きです。

そんなに派手な展開が起こるわけじゃないけど、ベック警視を中心とした殺人課の刑事たちが、ひとつの事件を何ヵ月もかけて粘り強く捜査していくところがいい。ふとしたことから事件が解決するんですよ。地味な話かもしれないけど、渋い中年刑事から、野心満々の若者刑事まで、キャラクターが個性的で楽しい。使いものにならない上司という定番キャラも欠かせませんよ。

主役はマルティン・ベックなのですが、このシリーズで私が好きなのは次のふたり。

その1:フレドリック・メランデルさん

ストックホルム警察殺人課警部。愛妻家で、つねにパイプをふかしている。超人的な記憶力の持ち主で、歩くデータベースと呼ばれる男。わからないことは彼に聞くと、すべて答えが返ってくる。毎晩かならず十時間の睡眠を取り、あと何故かいつもトイレにいる。

その2:グンヴァルト・ラーソンさん

第3作『バルコニーの男』で初登場の巨漢の刑事。「殺しのハンター」とも呼ばれている。他人に厳しいので皆(エイナール・ルン刑事をのぞく)から嫌われているうえ、上司のウケも悪い。荒っぽい性格だが、実は貴族の家の出身。上流社会になじめず、海軍に入った後、船乗りだった。身だしなみには常に気をつかっているが、お気に入りの服や靴を身につけてる時に限って、捜査のせいでダメにしてしまって嘆いている気が…。署長にもずけずけとものを言うところに、私としては非常に親近感が!

番外:マルメ警察のモーンソン警部

ときどき登場してベックに協力したりする。「捜しものがあるんなら何でも見つけてごらんに入れるよ」と言って、本当に何でも見つけてくれる探し物名人。


特にグンヴァルト・ラーソンは、最初に登場したときはふてぶてしい男だとしか思ってなかったのに、回を重ねるごとに魅力が増していき、もはや「ベックよりもラーソンの話を!」というくらい好きになった。ラーソンいいよ~。もし私がだれかと一緒に組むなら絶対にラーソンを選ぶね。

マルティン・ベック・シリーズは全部で次の10作品。日本語版は角川文庫から出ています。

『ロゼアンナ』*本書に登場するグンヴァルド・ラーソンは同姓同名の別人です
『蒸発した男』
『バルコニーの男』
『笑う警官』
『消えた消防車』
『サボイ・ホテルの殺人』
『唾棄すべき男』
『密室』
『警官殺し』
『テロリスト』

1巻でひとつの事件が完結しますが、スウェーデン社会の変遷が背景に表れているうえに、回を追うごとにベックの私生活に変化が起きたり、過去の事件で登場した若手刑事や下っ端の警官が再登場という展開もあったりしますので、1作目から順に読むのがおすすめ。

シリーズ中の傑作といわれているのは4作目の『笑う警官』で、私も同感ですが、ラーソン・ファンは5作目以降も目が離せませんよ!
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Commented by fontanka at 2010-10-02 23:21 x
スウェーデン→いたずらっこエーミールも忘れないで
スウェーデン王家が、ナポレオンの婚約者のデジレと、妻ジョゼフィーヌの子孫と知って、深く感銘をうけている最近です。

マルティン・ベックですか・・・
昔たぶん翻訳全部よんだはずなんですが、印象的だったエピソードが「消えた消防車」で、絶対どっかにあるはずって探し物のうまい刑事→ものがみつからないとき、あの刑事(だれ?)を思い出せと、さがします。
→モーンソンさんだったことが今わかりました。

社会派は苦手なんで・・・ですが。
知人が福祉関係の仕事で北欧に視察→冬が長いから、精神的に不安定になって自殺する人が多いといっていましたが・・・

パトリシア・ハイスミスの「変身の恐怖」(だと思う)北欧出身の登場人物が、モロッコだったかに旅行に来て、あっちだと自分を表現できない、ここだと自由だとというセリフがありました。

とりとめなくてすみませんです

Commented by rivarisaia at 2010-10-04 02:35
リンドグレーンは、まさにスウェーデンのイメージづくりに多大な貢献をしておりますね。

『消えた消防車』で消防車を探してくれるのもモーソンさん。
物が出てこないときに彼を呼びたいですよ。

主役のベック自体は巻を追うごとに黄昏れていくので、寂しい気分になるんですが(あ、でも恋人ができたりするから黄昏れてはないのか)、逆にラーソンの活躍が目覚ましい。しかしこのシリーズって社会派なだけに、後半は警察の上層部のダメな感じとスウェーデンの灰色に曇った街並という印象が相まって、どんよりした読後感が続きますよねえ。そこがいいんだけど。

やっぱり日照時間が短いっていうのは、人を落ち込ませるんですよ。おまけに寒いし。比較するとモロッコは、太陽の照りつける国という真逆な印象があります。
by rivarisaia | 2010-10-01 21:58 | | Trackback | Comments(2)

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